墓前の決着
墓の前へと吹き飛ばされ、地面へとバウンドして転がったジェイコブの元へ、敵の魔人が迫りくる。
ジェイコブは立ち上がりながら、なんとかこの場から離れる方法を考えて視線を巡らす。
その時ジェイコブは、ある違和感に気が付く。
敵の魔人が――なんだか、小さくなっているのだ。
「兄貴!なんか相手縮んでやすぜ!」
それは気のせいではない。鈍いカレブでも気が付くほどである。
その症状にも、ジェイコブは見覚えがあった。
モンスターシードの効果が切れてきているのであろう。
と言っても、未だ人間離れした巨体な事に違いはないし、今まさにジェイコブを攻撃しようと拳を振り上げているのである。
「くそっ!」
ジェイコブの背後には、母とオリビアの墓がある。
だから、ジェイコブには避けるという選択肢はなかった。
ジェイコブは腕を交差して、敵の攻撃を受け止めようとしたのだ。
しかし、いくら待っても、来るはずである衝撃はジェイコブの元へ届かなかった。
敵の拳は、ジェイコブに当たる前に止まっていたからである。
その理由は、ジェイコブにもカレブにもわかない。
ただ、途中で止まっているだけなのである。
敵の魔人が、自ら拳を振り上げておきながら、ただ自分で止めた。
そうとしか言いようがなかった。
「兄貴!」
その隙に、カレブが転がったモンスターシードを拾い上げ、ジェイコブへと投げ渡した。
ジェイコブはそれを受け取ると、いつもエミリーがやっていように、迷わずに首へと刺して、自分の体へとモンスターシードを注入する。
その瞬間、電流が走ったような刺激が体中に走り、力が湧きあがる。更に頭が冴えわたり、未だかつてない興奮と快感をジェイコブは感じる。
「うおおおお!」
動かない魔人を相手に、ジェイコブは飛び上がり、力任せに突っ込んだ。
その跳躍は高く、まだ大きいと言える敵の顔面へと拳をめり込ませて、今度は逆に敵を吹き飛ばしたのだ。
しかし、もちろんジェイコブも、それだけで終わらせる気もない。
その勢いのままに、ジェイコブは敵の魔人を殴り続ける。
その一撃、一撃ごとに、敵の巨体はしぼんでいく。
いつの間にか、普通の人間と変わらなくなった辺りで、ジェイコブは手を止める。
「え……?」
そして、その魔人の正体を知り、ジェイコブは困惑した。
「へへ……いてぇよ……ジェイク……」
その巨大であった魔人の正体は、カラーズの仲間であったマシューであったのだから。
「な、なんで……」
先ほどまでの高揚が嘘のように、ジェイコブの心は一瞬で冷え切っていく。
「やっぱり、本物のジェイクだよな……デカかっただろ俺……」
そして、ジェイコブが何もしなくなっても、マシューの体はどんどんとしぼんでいく、それは元の肉体の大きさよりも小さくなっても止まらなかった。
「おい!おい!なんで言わなかった!」
マシューの体は尚も、しぼみ、乾いていく。
それをジェイコブはどうにかしようとしたくて、しかし、どうにもならずに、ただしぼんでいくマシューを見る事しかできない。
「ごめんよ……ありがとう……」
そして、マシューは目を閉じ、それきり何も喋らなくなってしまった。
体も、カラカラに乾いたミイラのようになってしまった。
マシューは死んだのだ。
「マシュー!おい!マシュー!なんでだよぉおおおおお!」
静なその場所に、ジェイコブの悲痛の叫びが響きわたった。




