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変化

 ジェイコブは、外へと出るために階段を上っていく。

 家は、確かに地下にはあったのだが、それほど深い場所ではなく、扉を出たときにはもう陽の光が見えていた。

 そして、ジェイコブはすぐに外へと出た。


 それは、10年と1週間ぶりの外であった。

 しかし、ジェイコブからしてみれば1週間ぶりである。

 それでも、長い事陽の光を浴びていなかった目には、とても陽射しが眩しく感じて、ジェイコブは目を半開きにし、手で陽射しを遮る。


 しばらくして、ジェイコブは手を降ろし、しっかりと目を開けて周囲を見渡す。

 確かに――少しは街並みは変わったようにジェイコブは感じる。

 しかし、10年先の未来に来たかと言われれば、そんなことはない。

 ただ、遠くにバカでかいビルが見えるのが特に気になる程度である。


 そもそもジェイコブには、この場所がどこかもわからなかった。

 少し戻り、エミリーに聞けば簡単にわかるだろう。

 しかし、ジェイコブはそれをしようとは思わない。

 何故なら、エミリーも良く考えて、ジェイコブを外に出したのだろう。

 それに、エミリーも今は一人になりたいのだろうから、ジェイコブは大人しく外へと出たのだ。


 それに、今いる場所がわかったとしても、どこへと行けばいいかはわからない。

 少なくとも、エミリーを置いて、すぐにマイケルに会いに行こうなどとはジェイコブも考えなかった。


 だからジェイコブは歩き続けた。

 あてはない。

 ジェイコブも、急に色々な事を言われ、頭の整理をしたかったのだ。

 それをするのに、ただぼーっと歩き続けることは、とても都合が良かった。

 


     ♦



 しかし、かなり歩いたところで、ジェイコブは気付いてしまう。


「ここは……」


 間違いなく、自分の知っている土地であることに。

 無意識の内に知っている道を見つけ、歩いてきてしまったのであろう。

 その場所は、生前にジェイコブが住んでいたホワイトライトストリートの近くである。

 それはつまり、子供の頃ジェイコブ達が住んでいた小屋の近くでもあり、ジェイコブの母とオリビアの墓の近くのスラム街である。

 そのスラム街は、あまり変わっていないとも言えるが、一つだけ不審な点があった。


「人がいない……」


 スラム街というだけのことはあり、かつては路上に住むホームレスも多かったのである。

 もちろん廃墟に勝手に住んでいる者も多く、それらの人間を路上で見ることは多かったのだ。

 しかし、今は全く、そういった者を見かけることが出来なかった。

 

 ジェイコブは歩き続け、子供の頃に住んでいたはずの小屋を捜す。

 しかし、それは見つからなかった。

 それは単純な理由で、なかったからである。

 その場所は、何もない更地になっていたのだ。

 ジェイコブは間違えているかとも思い、何度も往復したのだ。しかし、それは間違いではなく。その場所にはなにもなかった。


 しばらくジェイコブはその場に立ち尽くしたが、嫌な予感がして、ホワイトライトストリートへと急いで向かう。

 10年も経てば、何かが変わる事も仕方がない。

 特にあの小屋などは誰も使っていなかったのだから。


 ホワイトライトストリートは小屋の近くにある。

 だからジェイコブは、すぐにそこへと着いたのだ。

 そして安堵する。

 ホワイトライトストリートは、変わらずその場にあったからである。

 ジェイコブは、ホワイトライトストリートまで更地になっているのではと、良くない事を考えていたのだ。

 しかし、それも結局、束の間の安堵であったと、ジェイコブはすぐに気が付くこととなる。


 それは、ホワイトライトストリートへと入ってすぐに気が付ける事であった。

 かつて店があったはずの建物、その全てがシャッターで閉まっており、人が全く見当たらないのである。


 ジェイコブは焦り、ホワイトライトストリート内を駆け巡る。

 そして、ついに一つだけ開いてある店を見つけ、その中に人を見つけることが出来た。

 そこは花屋。

 ジェイコブが一番懇意にしていた店であり、リリーがいるはずの場所である。

 しかしその場所には、ボロボロの服を着て、ガリガリにやせ細った女性がいるだけであった。

 ジェイコブが近づくと、ジェイクを見上げて、その女性は口を開く。


「あ~、ジェイクだ。ついにお迎えに来てくれたんだね」


 顔を上げたその女性はまるで子供の様な口調で喋った。

 声がガラガラであったのだが、ジェイコブはその声にどこか聞き覚えがあった。

 ジェイコブは困惑しながら、その名を呼ぶ。


「まさか……リリーなのか?」

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