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告白

 マイケルは笑顔である。

 しかし、そのマイケルの側に立つイーサン達は、暗い表情であった。

 そして、ジェイコブは今更気が付いたが、精製室内は争いの後はあり、血の跡も沢山あったが、死体は一つもないのだ。

 それを、ジェイコブは不思議に思ったが、それも含めてマイケルに尋ねればいいだけなので、マイケルの方へと歩き出す。


「おっと、ジェイコブ悪いんだが、そこで話を聞いてもらっていいか?」


 マイケルが自分に近づくジェイコブを止め、ジェイコブはそれを聞いて言われた通りに、それなりに距離がある場所で立ち止まる。


「マイク。何があったんだ?ダッドは?」


 マイケルの眉がピクリと動く。

 だが、マイケルは笑顔を崩さない。


「そんなことよりも、少し昔話をしようじゃないか、12年前の話だ」

「あ、ああ」


 急に意味の分からない事を話しだすマイケルに、ジェイコブは戸惑う。

 12年前というと、ジェイコブ達がミリアーノファミリーに入ったばかりの頃である。


「俺はあの時、ミリアーノの金融関係を任されてたよな?」


 戸惑うジェイコブを置いて、マイケルは勝手に語りだす。


「だから、金は稼ぎたい放題だったんだ」

「何を言ってるんだマイク?」 


 やはり、ジェイコブは戸惑う。

 その二つが結び付くという事は、まるでマイケルがミリアーノの金を使って金儲けをしていたような言い方であるから。


 しかし、やはりジェイコブを無視してマイケルは話を続ける。


「所詮この世は金さ。ガキの頃の俺達は金がないからひもじい思いをしていたし、アポルネファミリーは金をもらったからモンスターシードを作った」

「なんで、なんでそんなことを知っているんだマイク……」


 ジェイコブはひたすら困惑する事しかできない。


「そして、俺はその後マランノファミリーに二つの計画を持ち掛けた」


 そんなジェイコブを横目に、マイケルは楽しそうに語り続ける。


「マランノというかエイデンだな。アンダーボスでボスの息子なんてちょうどいいからな。俺はエイデンに、アポルネを攻撃して弱らせると同時に、マランノのボスを殺してエイデンをボスにする計画を持ち掛けたんだ。もちろん金も積んだ。喜んで乗って来たよ」


 少しずつジェイコブは、マイケルが言わんとすることを察し始めていた。

 しかし、それでも、どうするべきか考えがまとまらず、ジェイコブは立ち尽くすだけであった。


「と言っても、エイデンもいつかは俺を裏切るつもりだったんだろうな。だが、そのエイデンもこのありさまだ」


 そのタイミングで、ジョシュアが一言も喋らずに物陰から人の死体を引きずり、ジェイコブの方へと投げ捨てる。

 当然、その死体はエイデンのものである。


「裏切るんなら5年前に父親を殺すのと同時に俺を殺さないとな。まあ、それも対策してたんだけどな。インテリに見えて馬鹿な奴だよ」


 マイケルは吐き捨てるように言う。


「さて……ここまで話せば、もうわかるよな?ジェイク」


 ジェイコブに問いかけるような言葉だが、ジェイコブは黙ったままである。

 マイケルは二つと言ったのだ、そしてマイケルはまだ一つしか話していない。

 そして、その一つをジェイコブは認めたくないから黙っているのだ。


「だんまりか?それとも、見せないとわからないのか?」


 再びジョシュアが、同じように物陰から死体を引きずりだし、ジェイコブの前へと放り投げる。

 その投げられた死体を見た瞬間にジェイコブは頭に血が上り、銃を取り出し、マイケルへと向けたのだ。


「マイク!!!」


 その死体は誰かは言うまでもなく、ミリアーノファミリーのボス。ダッドの死体であった。


 怒りのままにマイケルに銃口を向けたジェイコブであったが、しかし同時にその手は震え、引き金を引くには至らなかった。


「言うまでもないが、俺が持ちかけた二つ目の計画は、ミリアーノのボスを殺して俺がボスになり、ミリアーノとマランノで仲良くニューシティを分け与えようって話だな。ついでにここにはお互いの組織の邪魔になりそうなやつらを集めて一網打尽ってわけさ……」


 ジェイコブとは対照的に、マイケルは冷静に語る。


「ミリアーノの鉄の掟を忘れたのか?裏切りは許されない!」

「先に裏切ったのはお前だろ!ジェイク!!!」


 先ほどまでの冷静さと打って変わり、マイケルは急に激昂し、大声を上げながら銃を抜いてジェイコブへと向ける。

 その変化にジェイコブは驚く。


「お前が!俺についてこないから!一緒にデカくなるって言ったのによぉ!!!」


 普段のマイケルからは想像もつかない程荒々しい口調で、マイケルはわめき散らかす。


「そん――」


 そんなことはない。そうジェイコブが口を挟もうとしたが、マイケルが遮る。


「何が家族だ!何がダッドだ!この野郎!」


 銃声が何度も響く。

 マイケルが発砲したのだ。

 ダッドの死体に向けて、怒りに身を任せて。

 

「やめろ!」


 ジェイコブは叫ぶのと同時に、

 そのあまりの行為に、ジャイコブも引き金を引く。

 しかし、銃弾は大きく外れて、マイケルにはかすりもせずに飛んでいった。


「どうしたジェイク?お前の腕なら、この距離で外すわけないだろう?」


 当然、ジェイコブはわざと外したのである。


「撃てるわけないじゃないか……」


 ジェイコブは絞り出したような声で呟き、銃を降ろす。


「やっぱりな……まだ間に合うんだ。今からでも遅くないんだジェイク。もう邪魔者はいないんだ。俺と一緒に行こう」


 マイケルは、ゆっくりとジェイコブへと歩み寄り、目の前まで来ると手を差し出す。

 しかし、ジェイコブはその手を取ることは出来なかった。


「邪魔者ってのは……デービッドさんもか?」


 何故なら、この問いかけの答えもわかっているから。


「ああ、そうだよ!あの野郎も邪魔で邪魔で仕方がなかった!俺とジェイクの間に割って入ってきやがって!だから殺してやったんだよ!俺の手でな!!!」

「マァアアイク!!」


 その言葉を聞いて、再びジェイコブは銃口をマイケルの頭へと押し付ける。

 だが、マイケルは全く持って動じない。


「どうした?銃を突きつけるだけか?引き金を引かないと俺を止められないぜ」


 それどころか、ジェイコブを煽り、笑う。

 そう煽られても、それでも、ジェイコブは引き金を引けないのだ。


「残念だよ。ジェイク」


 マイケルは静かに言うと、ジェイコブの左胸に向かって銃を構えると、躊躇することなく引き金を引いた。

 銃弾はジェイコブの心臓を撃ち抜き、ジェイコブは派手に胸から血を撒き散らす。

 そして、ジェイコブの体は床にぐったりと倒れ込んだ。

 間違いなく即死である。


 ジェイコブは死んだのだ。

 


     ♦



 イーサン達は無言であった。

 マイケルは仲間達には背を向けて笑い続けている。

 背を向けているので、その表情はわからない。


「終わったのね……」


 少しすると、イーサン達のさらに後ろからエミリーが姿を現した。

 

「あ、ああ……」


 マシューが覇気のない返事をする。

 そのマシュー達の横を、エミリーは黙って通りすぎ、エミリーはジェイコブの元へと辿り着く。


「じゃあ約束通り。ジェイコブの死体はもらっていくわ」


 エミリーはそう言うと、ジェイコブの死体を引きずっていく。

 体の大きいジェイコブは、エミリーが一人で運ぶのは大変である。


「お、おい!どこへ持って行くんだ!」


 そう言ったのはジョシュアである。

 

「……ジェイクのお母さんとリビアの元に連れて行くだけよ」


 エミリーは振り向くことなく言い放つ。


「手伝うよ!」


 やはりジョシュアが手を貸そうとしたが、エミリーはその手を振り払った。


「やめて!もう……あなた達に関わりたくないわ……」


 あまりにも強く拒絶されたため、ジョシュアは手を引っ込め、一度も振り返る事のないエミリーとジェイコブの死体が去っていくのを、茫然と眺める事しかできなかったのだ。


 そして、やはりずっとマイケルは笑い続けていたのだ。

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