墓前
デービッドの葬式は、何事もなくすぐさま行われ、驚くほどあっけなく終わった。
その間ジェイコブは、ただやり場のない怒りに震えていただけであった。
デービッドの墓は、他のミリアーノの家族と同じように、ダッドの家の教会の墓場へと埋葬された。
ジェイコブは、その墓を毎日のように訪れる。
ジェイコブがデービッドと出会ってから12年間となる。
その間に、彼にミリアーノの掟を叩きこまれ、彼に戦い方を教えられた。
デービッドは間違いなくジェイコブの師であったのだ。
最も、そんなことを本人に言ったら、「よせよ。そんなんじゃねえ」と照れるだろう。
だが、その本人はもういないのだ。
その事実に、ジェイコブは12年振りに涙を流した。
それは、オリビアが死んだ日以来の事であった。
「ジェイク……」
涙を流しているジェイコブに、後ろから声がかかる。
それが誰だかわかるからこそ、ジェイコブは涙を流したまま立ち上がり、振り向いた。
そこには、暗い顔付きのダッドがいた。
ジェイコブがダッドと会ったのは、デービッドの葬式で顔を合わせて以来である。
つまり、デービッドの墓前で会ったのは初めてとなる。
葬式の時は、じっくりと話せる時間もなければ、状態でもなかった。
「ダッド……」
話したいことはたくさんある。
しかし、ジェイコブ以上に、デービッドの死に対して、ダッドの想いは深いことはわかるので、ジェイコブはダッドが口を開くのを待つ。
「私は……もう長い事ミリアーノファミリーのボスをしている」
そしてその考え通りに、ダッドは口を開いた。
「この墓場に眠る人間全員が、私がボスになってから死んだ人間というわけではない。だが、全員が私の家族だ」
ダッドが少しづつ吐き出す言葉を、ジェイコブは黙って聞いていた。
「しかし、こんなにも悲しいのは……父が死んだ時以来だよ……」
ダッドは手で顔を覆うと、その掌の中から、静かに涙を流した。
「俺もです……」
「ありがとうジェイク……家族のために泣いてくれて……」
そう言った後に、ダッドが顔から手を外すと、その顔からはもう涙はなくなっていた。
「そして、私の心はまた、悲しみと同時に怒りにも満ちている」
ジェイコブもまた同じ気持ちである。
それは口に出さなくても、もちろんダッドも理解していた。
「デービッドを殺した犯人がわかった」
ジェイコブはその言葉に、ハッとする。
「マランノファミリーだ」
「マランノ……ですか?」
驚くようなことではない。しかし、ジェイコブは聞き返した。
「ああ、間違いない。マランノファミリーのボスであるエイデンは雲隠れをしているようだが、それが答えでもあるだろう」
ダッドは少しの間を置く。
「奴等に、我々の家族に手を出したらどうなるか思い知らせてやろうじゃないか!」
そして、いつもの静かな口調とは全く違う、大きな怒りの声を響き渡らせた。
その頃にはジェイコブの涙はもう乾いていた。




