夜の電話
マイケルがアンダーボスに就任し、カラーズが作られてから数日が経った。
しかしジェイコブは、デービッドとマイケルの板挟み状態に未だに悩み続け、答えを出せないでいた。
そして、ジェイコブがそんな状態のままに、エミリーが家に来た日の夜の事となる。
「ねぇやっぱり、何か悩んでいるでしょう?」
ベッドの中で、終わった後にエミリーが問いかけて来た。
この問いかけは先日に続き二度目である。
しかし、一度目よりも事態は複雑になっていた。
「ああ、その……」
ジェイコブの歯切れの悪い言葉に、エミリーは体を寄せてジェイコブの頭を抱く。
「あなたの事だから何か理由があるのだろうけど、私もあなたの力になりたいの……」
エミリーの言葉にも、触れあっている肌からも、ジェイコブはエミリーの温かさも感じた。
「実は……」
だから、ジェイコブはエミリーへと相談しようと考えた。
本当はエミリーを、マフィアの事になんて関わらせたくはないのだけど。
「デービッドさんにアンダーボスにならないかと言われていて、でもマイケルがミリアーノの中にカラーズを作ったから幹部にならないかって言われて困っているんだ」
「そう……」
エミリーは少し時間をかけてから答える。
「私は、デービッドさんとはあまり会った事がないけど……やっぱり昔からの仲間のマイクと――」
エミリーがそう言いかけたところで、ジェイコブの携帯電話が音を鳴らした。
ジェイコブは少し悩んだが、エミリーが一度黙ったのでベッドから出て、携帯を手に取る。
「カレブからか……」
ジェイコブは少し悩む。別に出なくてもいいかと。
しかし、結局出ることとした。
夜にカレブが電話をかけてくることは珍しいからである。
『兄貴ぃ!大変ですぜ!』
ジェイコブが通話のボタンを押した瞬間に、カレブの大声が飛び出してくる。
しかし、ジェイコブは事前に携帯を少し離しており、その大声に苦しめられることはなかった。
その大声は、エミリーの耳にまで届き、ただ事とは思えない状況にエミリーは不安になる。
「落ち着け。何が大変なんだ」
まだ少し電話を耳から話しながら、ジェイコブは慌てるカレブを宥める。
『は、はい。落ち着いて聞いてください』
言われなくてもジェイコブは落ち着いているし、落ち着いていないのはカレブである。
『デービッドの旦那が殺されました』
ジェイコブは一瞬、何を言われたのか理解できない。
だが、それは一瞬で、当然すぐに理解する。
しかし、信じたくはなかった。
「冗談だろ……カレブ。笑えないぞ……」
そうは言ったものの、当然ジェイコブはそれが嘘だとは思っていない。
いくらカレブでも、そんな冗談は言わないとわかっている。
しかし、それでも否定せざるおえなかったのだ。
『死体はリードストリートにある……ええと、一番大きい病院です』
「すぐに行く」
短く答えると、ジェイコブは言葉の通りにすぐに家を飛び出した。
♦
とてつもないスピードで車を走らせ、病院へはすぐについた。
病院の中へと入ると、すぐにカレブが目に映る。
「カレブ!」
「こっちです」
カレブはジェイコブを待っており、手際よく病院内を案内し、ジェイコブは一つの部屋へと辿り着いた。
その部屋へと勢いよく入ると、一つのベッドを人が囲んでいるのが目に入る。ミリアーノの構成員達だ。
ジェイコブはベッドへと駆け寄ると、すぐに理解する。
ベッドに寝かされた死体が、間違いなくデービッドだということを。
デービッドの死体は、身体だけでなく、顔にまで銃弾を撃ち込まれており、滅茶苦茶であった。
間違いなく殺されたものであるのは明白である。
「おい!誰がやったんだ!」
ジェイコブはカレブに詰め寄る。
「え?あ……それは……えーと……まだ、わかりません」
カレブが答えると、ジェイコブは他のミリアーノの構成員達を見回す。
しかし、皆がうろたえ、ジェイコブの問いに答えられるものはいなかった。
「くそっ!」
ジェイコブには、力任せに病院の壁を叩くことしか出来なかったのだった。




