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新しいアンダーボス

 結局、ジェイコブの問題は解決しないまま、マイケルのアンダーボス就任式がやってきてしまう。

 気持ちがもやもやしたままのジェイコブだったが、仲間の――特にマイケルの出世は、特に嬉しいのであった。

 

 ジェイコブはカレブと二人で会場へと入った。

 と言っても、カレブと来ようと思って来たわけではない。

 昔あったソフィアの誕生パーティと違い、正式なマフィアの集まりでありエミリーをそんな場所に連れてくるわけにもいかなかった。

 さらに言うなら、デービッドとは顔を見せづらく、イーサン達は忙しいようであった。

 そして、一人で参加しようとしたら勝手にカレブが着いてきたのだ。


「兄貴。こっちの飯旨そうですぜ。イヒヒ」


 カレブは勝手にテーブルへ走り、ジェイコブを呼ぶ。

 無視したいところではあるのだが、ざっと見まわしても知り合いはいなかったため、ジェイコブは諦めてカレブを追う。


「なんだか思ったのと違いますねえ」

「ああ」


 カレブの呟きは、集まった人間に対してである。

 それに関しては、ジェイコブも同じ考えであった。

 

 アンダーボスの就任と言うと、ミリアーノファミリー内の話となる。そのため、ミリアーノの身内ばかりが集まるとジェイコブは思っていた。

 しかし、実際に集まっている人間の多くは、明らかにマフィアにいるような人間ではないとし

か思えない人間ばかりである。

 

「それだけ、マイケルが太いパイプを持っているっていう事さ」


 ジェイコブ達の考えを読んだような言葉が、ジェイコブ達の横から突然かかる。

 その声を聞けば、ジェイコブは相手を見なくてもわかるくらい慣れ親しんだ声であった。

 イーサン、ジョシュア、マシューである。


「よう、連絡返せなくて悪いな。最近忙しくてよ」

「いいよ、そんなの」


 ジェイコブは、久しぶりに仲間と会えて嬉しくなり、自然と微笑んでしまう。


「皆さんお元気な用で」


 カレブが低姿勢で挨拶をする。

 カレブは意外と空気が読める男であり、強く主張し過ぎない。


「ジェイクが世話になってるな」

「いえいえ。ヒヒヒ」


 社交辞令ではあるが、ジェイコブは世話しているのは自分だと思う。しかし、敢えて口には出さない。


「って、悪いけど長居は出来なくてな。用があるから話しかけたんだ」

「用?」

「ああ、マイクが後で話あるから待っとけってさ」


 当然、ジェイコブはマイケルと会おうと思っていた。それは、祝いの言葉を直接伝えたいからである。

 今日の主役はマイケルであり、会うのが難しい事も承知であり、言われなくともどれだけでも粘るつもりであった。


「じゃあ、後でな」


 それだけ伝えると、三人は去って行ってしまう。

 あまりにも早い事で、ジェイコブにはそれが凄く残念であったが、それだけ忙しいという事はわかるので、微笑んだままその背中に手を振る。


「あっしらと違って忙しいんですねぇ」

 

 一言余計である。

 しかし、イーサン達が忙しいという事は、マイケルの為に働いているという事である。

 それがジェイコブには羨ましかった。

 


     ♦



 しばらく時間が経つと、会場が騒ぎ出し、壇上に司会が姿を現した。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」


 騒ぎが小さくなっていき、司会は話を進めていく。


「現在ミリアーノファミリーにはアンダーボスは三人いますが、そのうちの二人がアンダーボスを辞めるという困った事態が起きてしまいました」


 その言葉に、ジェイコブは少しどきりとする。

 しかし、二人と言うのはデービッドの事ではなく、ワイアットとオリバーの事である。

 それに、ただ辞めたというわけではない。


「ですが、我々は幸運です。この二人からアンダーボスを託された者がいたのですから」


 司会は芝居じみた喋りで話し続ける。


「それでは、呼びましょう!皆さんご存じ。マイケル・ホワイトです!」


 そして壇上にマイケルが姿を現した。


「皆さん。私の為にこんなにも集まってくださり、ありがとうございます」


 マイケルが壇上でマイクで話しながら頭を下げた。


「若輩者である私に、伝統あるミリアーノファミリーのアンダーボスを任せていただき、言葉もありません」


 マイケルは会場を見渡す。


「そして、この場を借りて、重大な発表を二つさせて欲しいと思っています」


 全員がざわめきだす。

 この会場にいる全員が、その内容に心当たりが全くないからである。


「おっとすいません。三つですね。一つは私のアンダーボス就任の話です」


 会場内から笑いが上がる。


「それでは二つ目の発表です。私がアンダーボスに就任した際に、ある組織を作ります」


 それを聞いて、会場はやはりざわめきだした。


「その組織の名前はカラーズです」

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