上の空
海辺でジェイコブとデービッドが話をしてから数日が経った。
その間、ジェイコブはデービッドと会ってはいない。
こんなに長い間デービッド会わなかった事は、ここ数年で初めてである。
デービッドにも思うところがあるのかもしれないし、ジェイコブもどんな顔をして会えばいいのかわからなかった。
幸いな事にも、実のところ、デービッドとジェイコブのやる事はあまりないのだ。
何故ならば平和だからである。
もはやデービッド達のような、荒事だけしかできないマフィアは必要がないのである。
だからこそ、デービッドはあんなことを口走ったのだろうと、ジェイコブにも容易に想像はできる。
しかし、ジェイコブもデービッドと変わらないのである。
あれからのジェイコブは、何をしていても上の空であった。
「兄貴?今日はデービッドさんはいないんですね。どこいきやしょう。ヒヒヒ」
カレブは、呼んでなくても勝手に付いてくる。
カレブには相談しようとも思わなかった。
「どうしたんだジェイク?暗い顔して」
何気なく寄ったダッドの家に入ると、ライアンとマイルズにそんなことを言われる。
しかし、ライアンやマイルズには話せない。
恐らく、デービッドはジェイコブ以外にはこの話をしていないだろう。
ライアンはともかく、口の軽いマイルズに話したら大変なことになってしまうかもしれない。
「やあ、ジェイク。何かに迷ってるのかね?」
ダッドは見透かしたように言う。
だがダッドを心配させたくないので、相談は出来ない。
マイケルやイーサン達は、みんな忙しいようでここのところ会えていない。
「ジェイク大丈夫?」
ベッドでエミリーが耳元では囁く。
だが、エミリーにマフィアの話をするのは避けていた。
だからこそ、それがわかっていて、エミリーはこういった時あまり聞いてこないのだが、今回はそれほどまでに長い間ジェイコブは考え込んでいたのであろう。
「もうすぐ大事な日なんだから、あんまり考えすぎないでね」
続く言葉に、ジェイコブはハッとする。
あまりにも上の空な時間を過ごし過ぎて気が付かなかったのだ。
もうすぐ、マイケルのアンダーボス就任パーティだという事に。




