パーティ
モンスターシードの製薬所を襲撃した日、傷ついたジェイコブは入院をした。
ジェイコブ自身は反対したが、デービッドに念のためと言われれば、一週間程度の入院を受け入れざるをえなかった。
その間――1番来ていたのはカレブではあるが――イーサン、マシュー、ジョシュアは機会を見てやって来てくれたし、エミリーもほぼ毎日のように見舞いに来てくれた。
その時に、ソフィアの誕生パーティに仲間達を全員を誘ったのだった。
カレブは誘ってもいないのに来たがったのだが、招待状がないと駄目だと断った。もちろん嘘ではある。
しかし、マイケルは事後処理が忙しいようで訪れることはできなかったようで、それはとても残念ではある。
代わりに、デービッドが襲撃の結果をジェイコブに教えてくれた。
四か所のモンスターシードの製薬所は無事破壊できたのだが、その際に大きい事件が起きていた。
それは、マランノファミリーのボスの死である。
マランノファミリーらしく、最前線に出て死んだようである。
ジェイコブからすれば、名前も知らない人物ではあるのだが、代わりに名前の知っている人物がマランノファミリーのボスに収まった。
それは、先日交渉をしたエイデンである。
しかし、ミリアーノからすれば犠牲者は出たが、作戦は成功したという事になり、ジェイコブは安心する。
最初は入院を拒否したジェイコブではあったが、初めての入院はそれなりに楽しい休養となり、退院するころには入院してよかったとすら思うようになっていた。
しかし、何度も入院をするような怪我をするのは、ジェイコブからすればもちろんごめんである。
そして、ジェイコブが退院した日が、ちょうどソフィアの誕生パーティの日となる。
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誕生パーティはダッドの家の傍にある、パーティ会場で行われる。
ジェイコブ達は六人でそのパーティ会場へと来ていた。
六人と言うのは、もちろんマイケル、ジェイコブ、エミリー、イーサン、ジョシュア、マシューである。
多くの人間が集まった中で、六人は一つのテーブルを囲んで談笑をしていた。
「緊張するなー」
マシューは落ち着かない様子でうろうろとしている。
「なあ、変じゃないか?」
マシューが手を広げて仲間達に聞く。
背の伸びていないマシューには、はっきりと言うと、スーツは不格好である。
「安心しろ。みんな似合ってない」
名前の通り、白いスーツを着たマイケルがそんなことを言う。
「俺達スラムあがりだものな」
イーサンも続くと、みんな笑いだした。
しかし、実のところ、周りの客から見てもマイケル達が浮いているなんていうことはない。
だから、笑っているマイケル達を周りも気にすることなどないのだった。
「あ……その、もちろんエミーは素敵だよ」
ジョシュアがエミリーを褒める。
エミリーもまた、名前にちなんで青いドレスを着ていた。
「ふふっ……ありがとう」
エミリーはジョシュアにそう返しながらも、ジェイコブの方はチラチラと見る。
更に、マイケルもその様子を見ながら、ジェイコブの背中を肘でささやかに叩いた。
「ああ……綺麗だよエミー」
ジェイコブもそれを受けてエミリーを褒めると、
「ありがと」
エミリーは顔を赤らめたのだった。
「楽しくやっているようだね」
その時、輪の外から声をかけてくる者がいた。
「ダッド!?」
それは、ミリアーノファミリーのボスであるダッドであった。
急な来訪に、全員は驚き、慌てて頭を下げる。
「そんなことはしなくていい。今日はただの娘の誕生パーティだ」
無礼講とまでいかずとも、かしこまる必要はないということであり、そう言われたら全員は頭を上げるしかなかった。
「どうしたんですか?」
ジェイコブが聞くが、それは当然、何故いるのかではなく、わざわざ自分達の元へ来たのは何故かという話である。
「彼らの話は退屈でね。逃げてきたんだ」
そう言うと、ダッドは子供っぽく笑った。
彼らと言われても、ジェイコブ達には誰の事かわからない。
唯一マイケルだけは、メリカ王国やニューシティの政治家達であることに気づく。
「大変ですね」
だから、マイケルだけがそう答えて、ダッドと同じように笑った。
「マイケル。今回は大活躍だったようだね。よくやってくれた。ありがとう」
「お褒め頂きありがとうございます」
マイケルは深くお辞儀をする。
「もちろんジェイクもだ。怪我をしたと聞いて心配していたんだが、無事で良かった」
「大したことはありません」
褒められるたのは二人だが、イーサン達他の四人は自分の事のように誇らしかった。
「それに、イーサン、マシュー、ジョシュア、エミリーだったね」
自分達は関係ないと思っていた四人だが、ダッドに急に名前を呼ばれとても驚き、全員が慌てて「は、はい!」と返事する。
「五年振りだね。元気そうで何よりだ」
四人は、ダッドが自分達の事を覚えていた事に対して、やはり驚き、そして感動をしながら「ありがとうございます」と返事をした。
それからダッドは何かを話そうとしたが、後ろから来た者がダッドの肩を叩き、何かを話した。
するとダッドは、申し訳なさそうな顔をして話し出す。
「すまない。ニューシティの市長が呼んでいるそうだ。もう少し話したかったのだが……」
「少しの間でも、お話しできて楽しかったです」
マイケルが答える。
「うむ、それでは……」
それで、ダッドは名残惜しそうに去っていった。
ダッドが見えなくなったのを確認すると、マシューが大きく息を吐いた。
「びっくりした~」
「まさかダッドに会えるとはな」
先ほどの話の通り、ワイアットの付き添いで会っているマイケルと、個人的に会っているジェイコブ以外はダッドに会うのは五年振りである。それは驚きもするものである。
「でもすげぇなマイケルもジェイコブも、ダッドに認められてる感じじゃんか」
「そうでもないよ、まだまださ」
「そうだな、まだまだだ……」
ジェイコブが謙遜し、マイケルは遠い目でそれに続いた。
「あ……」
その時、ジェイコブがある人物が自分達の元へ近づいてくるのに気が付く。
「どうした?ジェイク」
皆がジェイコブの視線の先を目で追うと、一人の少女が六人の元へと近づいてきていた。
「知り合い?」
エミリーが不思議そうに聞く。
それに、ジェイコブは答えようとしたのだが、それよりも先に、少女が辿り着き、
「皆さま、こんばんは」
美しい動きで、ドレスのスカートをつまみ上げて挨拶をした。
その優雅な動きに、ジェイコブとマイケル以外は面喰らい、「こ、こんばんは」と気の抜けたような返事をする。
「ソフィアと申します。皆さんの事はジェイクから話を聞いていまして、とても会いたかったのです」
それを聞いて、四人はますます驚く。
「ええ!ソフィア……様って、もしかして……」
マシューがそう言いながら、ジェイコブの方を見た。
「ああ、ソフィアはダッドの娘だ」
ジェイコブは答える。
「お、おい……呼び捨ては……」
「大丈夫です。皆さんも歳は近いので、ソフィアでいいですわ」
ソフィアはニコニコとしながらそんなことを言ったが、ジェイコブ以外はそういうわけにはいかない。
「あ……えっと……イーサンです。よろしくお願いします」
とりあえず先ほどの言葉は聞かなかったことにして、イーサンがまっさきに挨拶をした。そして、ジョシュアに目線で合図をする。
「ジョシュアです。よろしくお願いします」
「マシューです。よろしくお願いします」
「エミリーです。よろしくお願いします」
皆がそれぞれ、頭を下げながら挨拶をしていく。
「マイケルです。よろしくお願いします」
そして最後に、マイケルが挨拶をした。
すると、ソフィアの様子が変わる。
「まあ!あなたがマイケルさんなのですね。ジェイクからよくお話を伺っております」
先ほどまでと変わり、少しだが興奮した様子である。
「ははは、そうですか。一体どのような話を聞いたかはわかりませんが、実物を見てがっかりさせてしまいましたか?」
マイケルはにこやかに話し出す。
「いえ、とんでもありません!想像の通りの方でしたわ」
ソフィアは必死にその言葉を否定した。
そのソフィアと話しながら、マイケルはジェイコブ達にウィンクをして、さりげなくジェイコブ達から離れていく。
そして、少し離れたところでソフィアと二人きりとなった。
それを見ていたマシューが呟く。
「マジかよマイク。大丈夫かな?」
それに対して、ジェイコブは言った。
「マイクなら大丈夫だ」
実際に遠巻きに見ていても、マイケルとソフィアはとても楽しそうに話している。
「ありゃあ、しばらく戻って来ないな」
イーサンが推察する。
「それよりジェイク。やけに親しげだったじゃない?」
そして、エミリーが少し不機嫌そうにそう言った。
だが、ジェイコブは何故エミリーが不機嫌なのか理解できない。
「本当だぜ。やけに仲良かったよな。この野郎」
ジョシュアが、少し本気で、ジェイクの肩を小突いた。
「たまに話すだけだって――」
そうして時間は過ぎて行き、その日はジェイコブ達にとって楽しい一日となったのだった。




