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モンスターシードの効果

 ジェイコブ達がモンスターシードの製薬所の正門に着いた頃には、聞こえていた銃声が聞こえなくなっていた。

 それはつまり、争いが終わったという事である。

 だが、依然として突入したミリアーノの構成員からの返信はなく、その理由を考えれば構成員達がどうなったかは明白である。


「死体がいっぱいですや」


 こっそりと正門から中の様子を伺いながら、カレブが言った。

 広めの工場の様な製薬所の正門から進んだ場所には死体がたくさんあったのだ。

 そして、当然争った形跡もあり、建物の窓は銃弾によって破壊され、壁には弾痕が残っている。


「あっ、ちょっと!危ないですぜ!」


 ビビるカレブを横目に、デービッドとジェイコブは大胆に正門から製薬所の中へと入っていく。


「こいつは……」


 そして、死体を確認して、何があったのかをすぐに理解した。

 多くの死体はミリアーノの構成員である。

 そして、それ以外の死体はアポルネファミリーのものなのであろう。

 しかし、その死体をデービッド達は見たことがあるのだ。

 カラカラに乾いたミイラのような死体である。


「あいつらモンスターシードを使いやがったんだ……」


 それは、間違いなくモンスターシードを使った後の死体なのであった。

 それも、死体によってはボロボロの白衣の様なものを身に着けている者もいた。

 つまり、警備員などではない、非戦闘員もモンスターシードを使ったということである。

 さらに言うなら、ミリアーノ側の死体は明らかに力任せに壊されたといった感じの死体ばかりであった。


「あああ。こりゃあ規定量を超えて使ったんでさあね」


 いつの間にか後ろからカレブが着いてきていた。


「ですがこれで相手はいなくなったんじゃねえですかね。ラッキーですぜ。ヒヒヒ」


 カレブは更に下種な言葉を続ける。


「まだわからねえ。これで全員じゃないはずだ。中に入るぞ」


 デービッドの言葉にカレブは反論する。


「ええ!3人でですかい?少し待ちやせんか?」


 後続の部隊にも連絡はされていて、直に来る手筈だからだ。


「カレブ。行くぞ」


 ジェイコブが静かにそう言うと、カレブは観念したように二人について行くのだった。

 


     ♦



 建物の中へと入り、中を歩き回ったジェイコブ達だったが、出くわすのは死体ばかりであった。


「やっぱり俺達も先に入るべきだったな」


 仲間の死体を見ながら、デービッドがそう呟く。

 しかし、それではダッドと同じなのである。アンダーボスが先頭に立つことを止める部下は多い。

 ダッドが戦場に出ることを止めておきながら、自分は戦場で先頭に立つという事をデービッドは出来なかったため、ジェイコブもそれに付き合ったのだ。


「それで死なれたら困りますからねえ」


 ジェイコブでは決して言わないような事を、カレブはサラリと言ってしまう。

 

「俺は死なねえよ!」


 それにイラついたのか、デービッドはカレブの胸倉をつかんで、引き寄せて凄んだ。


「嫌だなあ。わかってますよ。アヒヒ」


 カレブが笑って誤魔化すと、デービッドはすぐに手を離した。


 それからも、三人は歩き回り、とある場所へと辿り着く。


「ここが精製室ですね」


 扉に貼ってあるプレート通りなら、そう言う事となる。

 目的は製薬所の破壊ではあるが、一番大事なのは製薬施設を壊すことである。

 つまりここは目的地という事になる。

 一時的にでもモンスターシードを作れなくしてしまえば、相手も利益を考えて再生産しなくなるという考えであり、再び生産をされたら再び製薬所を壊してしまえばいいとミリアーノは考えていた。


「じゃあ開けますね」


 ジェイコブが扉を一気に開けて、中へと入り銃を構える。

 しかし、すぐに銃を下ろした。

 ここも争いが終わった後だったからである。

 つまり、味方も敵も死体が散乱しているのである。


「ここもかよ……」


 デービッドは死体を確認していく、念のため生きているものがいないかを確認しているのだ。


「それで、これからどうするんです?」


 施設内はだいぶ見回ったし、一番重要な場所へは来たという事になる。


「ああ、後はここを爆破して終わりだな」

「爆破!?爆弾なんて持ってるんですか?」


 驚くカレブに、デービッドは呆れる。


「事前に話しただろうが、安全を確保した後に破壊の為に別の部隊が来るって……」

「え?そうでしたっけ?イヒヒ」


 カレブはやはり笑って誤魔化すのだった。


 その時、ジェイコブの耳に微かな音が聞こえてくる。

 ジェイコブは音の方へと歩いて行く。


「どうした?ジェイク」


 そして更に、デービッドがジェイコブの動きに気づいた時だった。


「ひぃ……く、来るなぁ!」


 ジェイコブの進行方向の物陰から人が飛び出してきたのだ。


 一体どこに隠れていたのかわからないが、白衣来ているためこの製薬所の職員の生き残りであることは簡単に理解できた。

 つまり、アポルネファミリーの一員であり、ジェイコブ達からしてみれば敵なのである。


「落ち着け。殺しはしない」


 ジェイコブはとりあえず話しかける。

 しかし、それは判断ミスだったのだ。


「う、嘘をつけぇ!」


 白衣の男は叫びながら懐から取り出した注射を自分の体へと打ち込む。


「う、ぐ、ぐぐ」


 そして男は呻きながら苦しみだす。

 その時、ジェイコブの後ろから銃声が響き、男が倒れ込んだ。

 デービッドが撃ったのだ。


 だが、倒れ込んだ男はすぐに立ち上がり、服を破りながら体が膨れ上がっていく。


「おいおい……ジェイク!」


 言われるまでもなく、ジェイコブも銃を撃った。

 弾丸は頭へと命中し、血が流れだしたが、男は倒れずに巨大な体を完成させて、ジェイコブへと殴りかかって来た。


「ぐっ……」


 その巨体から繰り出された拳は、思ったよりもはるかに速く、ジェイコブはなすすべもなく吹き飛ばされてしまう。


「マジかよ!」


 デービッドは驚きながらも銃を撃ち続ける。

 しかし、巨大な化け物となった男の体に弾丸こそ撃ち込まれ、流血もするが、動きが止まる気配はなく今度はデービッドへと殴りかかって来た。


 しかし、デービッドは化け物の拳を紙一重で躱す。


「こっちですぜ!」


 遠くからカレブが叫びながら銃を撃つが当たらない。


「おい馬鹿!俺に当たる!」


 化け物に当たるどころか、デービッドの近くの床に着弾をしたため、デービッドは怒る。


 化け物は今度は、近くにいるデービッドを放っておいて、カレブへと襲い掛かる。


「やべぇ!こっちに来た」


 カレブは銃を撃つことをやめ、一目散に逃げだす。

 遠くにいるカレブを化け物は追う。間にある機械などを破壊しながら。

 

「ジェイク!起きろ!今のうちに撃ちまくれ!」


 ジェイコブは痛む体を強引に動かして、デービッドと一緒に銃を撃ち続けた。

 いくつもの銃弾が、化け物へと命中し、化け物が呻き始める。


「あ゛あ゛あ゛あ゛」


 化け物は、段々と動きが鈍くなり、しかしそれでも暴れ続け、そしていつしか動かなくなる。

 

「ふぅ……」


 デービッドが一息つくころには、化け物はしぼみ続け、元の人間――いや、それを通り越してカラカラに乾いたミイラのような死体になっていたのだ。


「ジェイク。大丈夫か?」

「ええ、なんとか」


 人一人を吹き飛ばすほどの力で壁に叩きつけられたのだ。無事ではなく全身が痛んでいた。しかし、骨などは折れていないとジェイコブは感じる。


「しかし、こりゃあ爆破する手間が省けたな」


 化け物が暴れたおかげで、製薬室は滅茶苦茶である。


「あっしのおかげですよ。褒めてくだせえ。ヒヒヒ」


 カレブが得意気にジェイコブ達にすり寄って来る。


「ビビッて機械の後ろに隠れてただけだろ」


 つまり偶然である。


「バレやしたか」


 カレブは笑う。


「ジェイクの治療がある。外に出ねえとな」

「大丈夫ですよ」


 ジェイコブはすぐさまそう答えたが、正直に言うとまだ全身が痛い。


「強がるんじゃねえよ。行くぞ」


 それを見抜いて、デービッドはジェイコブへと肩を貸す。

 それに便乗して、カレブもジェイコブへと肩を貸して、三人で外へと向かったのだった。

 


     ♦



 外に出る頃には、ちょうど後続の部隊がついていたのだが、それ以外の問題が起きていた。

 警察が来ていたのだ。


「アンダーボス!ご無事でしたか!」


 すぐさま駆け付けた部下に言われて、連絡を入れ忘れていたことに気が付く。


「なんで警察がいやがんだ」


 来たとしてもすぐに追い返せるはずである。


「それが……」


 その時、会話に割って入って来る者がいた。


「また貴様か!デービッドとか言ったか?」


 それはこないだ会った警察官であった。

 あまりにもキャラが濃いので、デービッドも覚えていた。名前は忘れたが。


「悪いが疲れてるんだ。怪我人もいるしな。また今度な」


 めんどくさいので適当にあしらう事にする。


「おい!この状況で帰れると思ってるのか!」


 デービッドを追おうとする警察官を、デービッドの部下が数人がかりで止める。


「お前らもこのまま適当なとこで引き上げていいぞ」


 偶然とはいえ、製薬室は滅茶苦茶に出来ているので最低限の目的は果たせていた。


 後ろから聞こえる声を無視して、デービッド達はその場を後にしたのであった。

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