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食堂

 マランノファミリーとの会見から数日が過ぎた。

 その日のジェイコブは、いつものように門番の仕事としてモニタールームにいた。

 しかし、やはり欠伸をしてしまうほど暇なのであった。


「暇ですね。兄貴」


 そして、当たり前のようにカレブはジェイコブの隣に座っていた。

 

 カレブを助けた翌日には、デービッドによってカレブはミリアーノファミリーの構成員となり、本人の希望によってジェイコブと同じ門番に配属された。本人の希望と言っても、希望が通ったわけではなく、デービッドが面白がって配属しただけである。

 意外にもライアンもマイルズもカレブに対して好意的であり、カレブはジェイコブの日常へと組み込まれてしまったのだ。


 ジェイコブは黙って立ち上がり、門の内側の外へと向かう。


「あっ!兄貴どこ行くんですかい?ジェイクの兄貴!」


 すると、カレブもその後を勝手に追ってくる。


「来るなよ。一人はモニタールームで監視してるんだよ」」


 厳密には正しいのであるが、嘘である。

 サボってモニタールームに誰も居ない場合も多かった。

 そして、今日はライアンもマイルズも非番であり、ジェイコブとカレブだけが門番の仕事をしていた。


「ええ~そりゃないですぜジェイクの兄貴~」


 それを知っているわけでもないのにカレブは、それでもジェイコブについて行くのだった。


 外に出たジェイコブだったが、どこに行こうと決めていたわけではない。ただ暇だから外に出ただけである。

 普段なら教会へ行くところではあるが、カレブを連れて行く気はなかった。


「兄貴。飯食いに行きましょうぜ。ヒヒ」


 確かに、時間的にはちょうどいいのだが、ジェイコブは余り気が進まない。


「お前金持ってないだろ」


 そもそも無一文どころか素っ裸で放り出されたカレブは、住処がアポルネにあるため戻り辛く、ミリアーノから給料をもらうまでは0円で過ごさないといけないのだ。

 なので、自然とジェイコブが払わされることとなるのである。

 別に、ジェイコブは金に困っているわけでもないし、執着をしているわけでもないが、相手がカレブだと少し嫌なのだ。


「頼んますよ兄貴。絶対に返しますから~。ヒヒヒ」


 しかし、餓死をされても困るので、ジェイコブはため息をつくと食堂へと足を向けた。


「ありがとうございやす!兄貴」


 その後ろを、カレブは嬉しそうな顔でついて行くのであった。

 


     ♦



 食堂に着くと、やはり昼時という事でミリアーノの構成員がそこそこおり、それなりの騒がしさを見せていた。

 当然、ダッドがこの食堂に来ることはないのだが、この家に住まうミリアーノの構成員もダッドと同席するわけはない。この食堂には、ここで働く多くの人間が食事をしに訪れるのであった。


 と言っても、ジェイコブはあまりここを使用せずに、外で安物のファーストフードを買って食べていることが多い。

 それは単純に、ライアンとマイルズがそうしていることが多かったからである。


「チーズバーガーで」

「あっしも同じので」


 二人は少し待ち、注文したものを受け取ると席へと着く。


「いやあ、ミリアーノファミリーは好待遇で凄いですねぇ。ヒヒ」


 汚らしく飯を食いながら、カレブが嘯く。


「アポルネは違うのか?」


 カレブはアポルネファミリーではないという話であったが、マイケルは最初からそれが嘘だと見抜いていた。だからこそカレブを助けたという部分もある。

 それを聞いた時、ジェイコブはやはりマイケルは凄いと思ったのだ。


「いやあ、わかりやせんね。おいらは末端でしたんで」


 と言っても、カレブにアポルネファミリーらしさはない。

 アポルネファミリーというと、はっきりと言えば陰湿なイメージがあるからである。

 そしてそれは実際にそうなのである。


 カレブとは対照的に、ジェイコブは綺麗に食事を取る。

 ただ、ジェイコブは昔から綺麗に食事をしていたわけではない。カラーズにいた頃は、皆騒がしく、食べ散らかしていたものだから。特に最年少のオリビアなどは――

 そこまで思い出すと、ジェイコブの気分は落ち込む。オリビアはもうこの世にはいないのだから。


 その時、ジェイコブの携帯電話がなる。

 ジェイコブは画面を見ると、マイケルからの電話であったため、当然すぐに出る。


『よう、ジェイク。久しぶりだな』

 

 最近はマイケルは電話をする暇すらないほど忙しいようで、あまり電話自体をかけてこないし、会う機会もかなり減っていた。


「ああ、久しぶり」


 だから、たまに来る電話がジェイコブには嬉しいものであった。


「マイケルの旦那からですかい?俺がいるって伝えてくださいや!ヒヒ」


 カレブがそんなことを言ってきたが、ジェイコブは無視する。


『なんだ。カレブもいるのか。ちゃんとやってるか?』


 しかし、電話越しに声が聞こえてしまったようでマイケルは反応する。


「へい!もちろん!」


 そして、カレブは元気よく返事する。


『ははっ!調子いい奴だな』


 本当にそうだとジェイコブは思う。


「それで、どうしたんだ?」


 正直に言うと、ジェイコブからしてみれば電話をするのに用事などなくてもよいのだが、最近のマイケルからの電話は必ず何かの用事がある時だけである。


『ああ、待たせたな。アポルネファミリーの麻薬精製所への襲撃の日時が決まったぞ』

「いつだ?」

『一週間後の夜の0時に決行だ。ジェイクはデービッドさんの部隊に組み込まれたから、それまでに準備しといてくれ』


 それはつまり、マイケルとは別の部隊ということであろう。


「ああ」

『デービッドさんからも話がいくだろうけど――』


 マイケルは少しもったいぶって言った。


『そっちは頼むぜ相棒』


 ジェイコブは、口の端を持ち上げてそれに答えたのだった。


「任せとけ」

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