新しい仲間
話し合いを終えたジェイコブ達は車で帰路を辿っていた。
当然その中には、助けた裸の男も入っている。
ただし来た時と同じで、マイケルが運転をし、助手席にジェイコブが座っており、デービッドが後部座席にどかりと座り、裸の男はその横で縮こまって座っていた。
「あのぉ~?すいやせん」
そんな中で、男は控えめに声を出す。
その目は前を向いており、厳密にはジェイコブに話しかけているような形である。
「なんだ?」
しかし、答えたのはデービッドであった。
それにビビりながらも、男は話を続ける。
「助けていただきありがとうございやす。ヒヒ……あっしはカレブ・ゴメスと言いやす」
狭い車内でカレブは懸命に頭を下げた。
「そうか、ジェイコブ・ブラウンだ」
ジェイコブが最初に返事をすると、マイケルとデービッドも名前を教える。
「それで……申し訳ないんですが……服をいただけないかなって……イヒヒ」
カレブの要求はもっともな事だが、
「悪いが服の予備は置いてないんだ」
それは普通の事だろう。予備の服を車に備えて置く人間はあまりいない。
「そうですか……」
カレブはあからさまに残念がる。
そして、再び車内に沈黙が訪れる。
「あのぅ……みなさんミリアーノファミリーですよね?」
そんな中で縮こまっていたカレブが再び話を始めた。
「そうだな」
やはり返事をするのはデービッドだ。
「やっぱり!ヒヒヒ!ミリアーノファミリーのアンダーボスのデービッドさんでしたか!あっしは運がいい!是非あっしをミリアーノファミリーに入れて下せえ!ヒヒ!」
「え?やだよ」
テンションの高いカレブに対して、デービッドは即答で断る。
デービッドが断った理由は単純で、ちょっと気持ち悪いからである。
「そう言わずにお願いしやすよー。マランノに話してない情報も話しますぜー。イヒヒ」
「そんな有様で話してない情報なんてあるのか?」
カレブの話に興味を持ち、ジェイコブが話に加わる。
「そうなんですよ。聞いてくださいよ兄貴」
「兄貴はやめろ」
すぐさまジェイコブが否定する。
ジェイコブからしてみれば、会ったばかりの人間に勝手に兄貴と言われるのは気分が悪い。
「それがね兄貴」
しかし、カレブは聞く耳も持たずに話を続けた。
「あいつら酷いんですよ。あっしをボコボコにしたあとに更にあっしの髪を素手で全部抜きやがったんでさあ。そのあと爪を一枚ずつ剥いでいき、ドリルで歯に穴を空けて遊んで、腋が臭いって腋毛を燃やして、最後にはライオンのいる檻にポイですよ。でもジェイコブの兄貴が助けてくれたからよかったですあ。アヒヒヒ」
確かに酷い拷問ではある。
「だから全部喋ったんだろう?」
だからこそデービッドが横から突っ込んだ。
「いえいえ、喋っても喋らなくても殺されるのはわかってたんですや。だから少しずつ情報を出して時間を稼いだんですわ」
それが本当なら、たいした根性である。
「そして、今は俺達にそれに近い事をやる気なわけだ。いい度胸だな」
マイケルが詰問をする。
「まさか!そんなことは……」
カレブが焦りながら手をすり合わせる。
「まあいいさ。それで、その情報ってのはなんなんだ?」
「例えば、モンスターシードの製薬所の場所なんてどうですかい?かなり精製が難しいらしくて、4つしかないんですぜ」
カレブは得意気だが、マイケルは笑い出す。
「ハハハ!その情報はもうマランノファミリーも掴んでたぞ」
カレブは得意顔から一転して、驚いた顔になる。
「ええ!他の奴が漏らしたんですかね……じゃあ、モンスターシードの仕様とか……」
「それもだな」
ことごとく空ぶるカレブの様子に、マイケルはニヤニヤとしている。
それはもちろん、怒っているわけではない。
「そんな……」
「なんだ。役立たずか?じゃあ殺すか?」
そんなデービッドの言葉に、カレブは顔を青ざめる。
「勘弁してくだせえや!靴でもなんでも舐めますんで。ヒヒヒヒ」
そう言って、カレブは本当に車の中で這いつくばり、デービッドの靴を舐めようとする。
「ちっ!やめろや」
そのカレブの顔をデービッドは軽く蹴り上げた。
「ぐひ!」
そんな情けない言葉と共にカレブはのけぞる。
「ハハハッ!面白いじゃないですか。生かしてやってくださいよ」
マイケルがデービッドを止める。
と言っても、デービッドも本気で殺そうとしていたわけではない。
「マジかよ……まあいいか。面倒見るのはジェイクだしな……」
「え?」
唐突なパスに、ジェイコブは困惑する。
「嫌ですよ?」
そして、ジェイコブが当然拒否すると、カレブはやはり「兄貴~」と情けない声を出すのだ。
「いや、お前もそろそろ部下を持たないといけない時期だからな。慕ってみるたいだしちょうどいいじゃねえか」
「ええ……」
デービッドにそう言われては、ジェイコブには拒否することは出来ないのだ。
「よろしくお願いしますぜ。兄貴。ヒヒ」
だから、ジェイコブは堪忍するしかなかったのだった。




