話し合い
「ミリアーノファミリーのアンダーボス。デービッドだ」
デービッドは率先して名乗り、エイデンと握手をした。
「マイケルです」
「ジェイコブです」
そして、デービッドの後ろで、マイケルとジェイコブは頭を下げる。
「どうぞ、お座りください」
エイデンが高そうソファーにな座り、勧められるがままにジェイコブ達も対面のソファーに座る。
この場所は2階ではあるのだが、吹き抜けのバルコニーのようになっており、座った状態でも檻のようなステージでストリップをしている女たちがよく見える。
「実は、少し驚いてましてね。もっと、たくさんの方でいらっしゃると思っていましたので……まさか三人とは、流石はミリアーノファミリーの幹部の方だ。肝が据わっていらっしゃる」
エイデンがそうは言うものの、実のところジェイコブ達は訳も言われず連れてこられただけである。
しかし、それでもデービッドもジェイコブは気後れなどしていなかった。
銃撃戦になれば、全員撃ち殺して帰るつもりだからである。
「そっちこそ、マランノファミリーに知的な人間がいるとは驚きだ」
丁寧な物言いのエイデンに対して、不躾な物言いでデービッドが煽る。
しかし、エイデンは涼し気な顔で流す。
「そうですね。見ての通り、知性のない部下で困ってしまいます」
エイデンが下の部下達を見下ろす。
酒を飲んで暴れている者などまだいい方で、薬でトリップして奇声を発している者や、裸で檻に性器をこすりつけているものまでいる。
しかも、これはマランノファミリーにとっては日常なのである。
つまるところ、マランノファミリーは他のマフィア以上に問題のある人間の集まりなのである。
「だから、危険な麻薬にも手を出すんですよ。正直困ってしまいましてね」
エイデンは頭を抱える。
本当に困って仕方がないという感じである。
「うちに頼るほど、お困りの様で」
デービッドはタバコに火をつける。
「そちらには、まだ余り流れていないようですが、このモンスターシードは困りものでしてね」
エイデンは、ボディガードからモンスターシードを受け取る。
「普通の麻薬と同じように、使えば気持ちよくなれるんですがね……使い続けると化け物になっちまう」
それは、またである。
また化け物である。
「どういうことだ?」
「これは麻薬って言うより、ドーピング剤に近いようでしてね。簡単に言えば、体が強くなるんですよ。使えば使うだけデカくなる。でも、麻薬が切れると縮みます。だから、また打つってわけですね」
それは理にかなっているが、
「そういう側面がある麻薬は他にもあるだろ?」
という話になる。
「そうですね。でもこれは、多分魔獣の何かを混ぜてるのでしょう。だから、モンスターシードだというのだと思います。だからか、本当に使えば使うだけ、どんどん体が大きくなっていく、うちの奴の中には、三メートルまででかくなったやつもいるって話ですよ。まさに化け物――モンスターになるってわけですね」
ただの人間が三メートルまででかくなる。それがどれだけ異常な事かは想像する間でもない。
「だけど、膨らんだらいつかは破裂する。それこそ、風船のようにってわけですね」
マイケルが口を挟んだ。
「はい」
それに対して、エイデンは嬉しそうに肯定する。
「麻薬をやって死ぬ奴なんてうちには珍しくはないんですがね。これは余りにも摂取してから死ぬまでが早い。せめて組の役に立ってから死んでもらわないと……」
そこまで話されて、デービッドには引っ掛かることがある。
「やけに詳しいじゃねえか」
まるで製作者である。
「うちは被害が大きいですからね。必死に調べたのですよ」
納得のいく説明ではあるが、デービッドからすれば少し釈然としないものがある。
しかし、それでも話は進んでいく。
「そこで、ミリアーノファミリーと手を組んで、アポルネファミリーの麻薬の精製所を潰せないかと考えたのです」
アポルネファミリーの麻薬は、ミリアーノからしても潰しておかないといけない物であり、ミリアーノ側にも理由はある。
それに加えて、アポルネファミリーにかまけている間に、ミリアーノファミリーに攻撃されないためという話でもある。
しかし、エイデンはそれを隠したし、マイケルもそれをわかっていても語ることはなかった。
「そう言われてもな……」
思ったよりも話が大きいため、デービッドは戸惑ってしまう。
「こちらはもう製薬所の場所を掴んでますので、それを教えます。うちと手分けして破壊するんです。そちらとしても悪い取引ではないと思いますよ」
更にエイデンが追い打ちをかけ、
「ダッドはいいと言ってましたよ」
マイケルも同時に後押しをしてきた。
そこまで根回しは済んでおり、実質的に話はまとまり切っているという事なのだ。
「ちっ……まあ、いいんじゃねえか」
デービッドからすれば、ますます来た意味がなく、自分のアンダーボスという立場を利用されたのは面白くはないのだが、ダッドの意向もあるのならば仕方がないのであった。
「では、話し合いは成立という事で」
デービッドの返事に、あっさりとエイデンは即答する。
やはり、元から決まり切っていた話なのである。
「では話し合いはこれで終わりという事で、この後ショーをするので、よろしかったら見て行ってください」
エイデンが笑顔でそう言った。
結局、終始笑顔を崩さなかったエイデンに、デービッドはどこか既視感を覚える。
しかし、よくよく考えれば、それはマイケルのことであると、すぐに気付いたのだった。




