マランノファミリー
マイケルの大胆な発言に対して、デービッドは笑い出した。
「ハハハッ!」
それに対して、マイケルは困った顔をする。
「あれ?バレちゃいました?」
「そりゃあお前よ。まず、ここで言うのはおかしいだろ。今この瞬間に、俺に撃ち殺されても文句言えねえよ。中に入って、後ろだてを得てから話すことだろ。それに、ジェイクだっているしな」
アンダーボスであるデービッドをハメるなら、一人で連れてくるのが普通だろう。
「ジェイクもグルかもしれませんよ?」
「……そうかもな」
デービッドは少しの間の後に、静かにそう言った。
「それで、今度こそ本当の目的はなんだ?」
「マランノファミリーと話し合いをしに来ただけですよ。もちろんダッドの許可は取ってます。疑うなら電話していただいても大丈夫ですよ」
そう言って、マイケルは電話を差し出してくる。
それは、デービッドからすれば、解せないものである。
マランノとミリアーノは犬猿の仲である。
理由があろうとも、マランノと話し合いなどダッドが許すとは考え難いのだ。
だが、マイケルの余裕のある様子を見れば、それが嘘ではないというのは明白ではある。
ワイアットとマイケルがいかなる方法を用いてか、ダッドを説得したのである。
「そんなのはワイアットにやらせろよ」
デービッドは交渉ごとには向いていない。それは自分でもわかっているのだ。だからこそ、体一つでミリアーノの為に動いているのである。
「もちろんそう思ったのですけど、ワイアットさんは忙しかったもので」
それが本当かどうか、デービッドには判断出来ない。
しかし、ここまで来たこと、更にダッドの許可も下りていることを考えたら、今更帰るという選択肢はなかった。
「へいへい、どうせ俺は暇だよ」
体よく使われたと思いながら、デービッドは不貞腐れながら建物へと向かった。
「そういうわけではないんですが……まあ、いいか……ほら、行こうぜジェイク」
二人のやり取りを黙って見ていたジェイコブだが、心配などはしていなかった。
マイケルが仲間を裏切ったりするわけがないからだ。
「ああ」
ジェイコブは二人に続いて、大きな建物へと向かって行った。
そして、建物の近くへと辿り着くと、中から騒がしい声が聞こえてくる。
建物の入り口では、あからさまに柄の悪い男達がたむろっており、訪れたジェイコブ達を睨みつけてくる。
「あ?なんだ、てめえらは?」
そして、睨みつけるだけでは飽き足らず、ジェイコブ達へと絡んでくる。
前へ出ようとするデービッドをマイケルが抑え、代わりにマイケルが前へと出た。
「どうも、俺達はミリアーノファミリーです。話は聞いていますよね?」
マイケルがミリアーノの名前を出すと、柄の悪い男達はざわめきだす。
当然だ。敵対組織同士なのだから。
しかし、そのうちの一人が電話でどこかへと連絡を取り出す。
「着いて来い」
そして、電話を終えると、ジェイコブ達を中へと案内しだしたのだった。
建物の中は人で溢れており、外まで響くような騒がしい声は、やはり中ではとにかく響き渡り、はっきりと言えばうるさいとジェイコブは感じる。
そして、見ればわかるが、この大量にいる人間全員があきらかにその筋の人間であり、間違いなくマランノファミリーの人間であるのだ。
ジェイコブ達はまさに、敵の腹の中へと入ってしまったという事になる。
だが、マイケルも、デービッドも、ジェイコブも、その場の空気に呑み込まれることはない。
それぞれが、マフィアとしての格を持っているのだ。
「上で若がお待ちだ」
男は立ち止まり、ジェイコブ達だけで2階へと上るように指示を出す。
ジェイコブ達は、それに黙って従ったのであった。
2階に上がって下を見下ろすと、建物は広いイベント会場の様な場所であることがわかる。
ただ異質な事に、中央に檻があり、その檻の中で裸の女たちがポールダンスを踊っていた。
それだけ見れば、ストリップ劇場であると言える。
しかし檻は、他よりも高い場所に作られたステージであることは間違いはないのだが、広い円形で、外から入れない様に鉄格子で囲ってあるのだ。まさしく、檻としか言いようがないのである。
「これは良くいらっしゃいました。ミリアーノのみなさん」
そして、2階ではスーツを着た若い男が待ち構えていた。
その男は、眼鏡をかけ、髪をオールバックにした理知的な男であり、下の連中とは大違いである。
男の周りにはきちんとしたボディガードが付いており、マランノの要人なのは見て取れる。
「お話を伺っていただきありがとうございます。エイデンさん」
マイケルが頭を下げる。
この男は、マランノファミリーのボスの息子で、アンダーボスであるエイデンであった。




