ジェイコブとダッド
朝になり、目を覚ましたジェイコブは階段を降りてモニタールームへと行く。
「おはよう。なんだ?今日はここにいていいのか?」
すると、そんなことをライアンに言われてしまう。
アポルネの麻薬事件が起きてから数日の間ずっと、デービッドに呼び出され続けていたからである。
そして、デービッドと二人で調査をしているジェイコブだったが、しかし中々調査は進展しないのであった。
とはいえ、一応ジェイコブの仕事は門番なのである。
「別にいいんだぜ。今日は俺もいるしよ」
更に、マイルズもまるで追い出すように話す。
あまりにも毎日ジェイコブがデービッドと出かけるので、ジェイコブが頭数に入れられてないのである。
「いや、今日は……」
特に呼び出されたりはしていないのだ。
いつものように、門番をしながらライアンとマイルズとカードゲームでもしていようかと思っていたところである。
「たまには気分転換でもして来たらどうだ?最近気を張り過ぎだぞ」
実のところ、ライアンとマイルズは真剣にジェイコブの心配をしているのである。
今回だけに限らず、ジェイコブの顔が険しい時は、そう言って門番の仕事から追い出してきたのだ。
「あ、じゃあ……少し外の空気を吸ってくるよ」
そう言って、ジェイコブは外へと出た。
そして、ジェイコブは決まってそういうときに行く場所があった。
教会である。
当然、祈りに行くわけではなく、ダッドやソフィアに会いにいくためである。
その過程で、銃の訓練所の横を通る。
昔は、銃の訓練も熱心に行っていたジェイコブだが、最近は銃の訓練を行わなくなっていた。
実戦でいくらでも撃つ機会はあるし、動かない的なら、もう目を瞑っていても当たるからである。
少し歩くだけで教会へと着き、その人影を見つけたジェイコブは嬉しそうな顔をしながら、ゆっくりと彼へと近づいて行った。
「ダッド」
そして彼の名前を呼ぶと、ダッドはにこやかにジェイコブを迎えるのだった。
「おお、ジェイク。元気だったかね」
ミリアーノという大きい組織を束ねるダッドは忙しい。会えても月に一度程度である。
「ええ、おかげさまで」
ミリアーノの全てがダッドであり、息子であるジェイコブはダッドのおかげでいい暮らしが出来ているのだ。
実際に、ジェイコブはスラムに住んでいたころでは考えられない程まともな暮らしをしている。
だからこそ、ダッドのことは心の底から信頼し、尊敬しているのだった。
「デービッドはやんちゃだろう?ついて行くのは大変だな」
ジェイコブはそれを聞いて少し笑う。デービッドがいれば「やんちゃなのはダッドですぜ」と言うところである。
「ええ、最近は特に」
「マランノファミリーだけでも大変なのだが、アポルネファミリーまで出て来たようだね」
当然、全ての情報はダッドにも流れており、ダッドも全てを知っている。
「俺の仲間が、アポルネの勢力圏の大学に通ってるので心配です」
「エミリーのことかな?」
「そうです」
ジェイコブは、エミリーの話を度々ダッドにしていた。
それでも、ダッドがすぐにエミリーの名前を出してきたのは、ジェイコブとしては嬉しいのであった。
「そういえば、今度ソフィアの誕生パーティを開くだろう。エミリー君も連れてくるといい」
「え?」
そう言われても、エミリーはミリアーノファミリーですらないのだ。
それがいいことなのか、ジェイコブには判断がつかなかった。
「今年はソフィアが20歳。つまり、成人する日だから大きいパーティにするつもりなんだ。だから、他の仲間も連れてくるといい。と言っても、マイケルはワイアットのお供で元々参加するだろうけどね」
「わかりました。話してみます」
「君はソフィアと仲がいいし、他のよくわからない政界の大物とかよりはずっと歓迎されるだろう」
ダッドはニコニコと楽しそうに笑っている。
いつも笑顔ではあるが、特別楽しそうであるのだ。
今から、娘のパーティが楽しみで仕方がないという感じである。
「さて、そろそろ行かないとな……」
ダッドは時計を見て、そう言った。
「はい、また」
ジェイコブも笑顔で、ダッドの背中を見送るのだった。




