更に5年が経った
ジェイコブがミリアーノファミリーに入ってから5年の月日が流れた。
それだけの月日が経っても、ジェイコブ、ライアン、マイルズは相変わらずモニタールームで門番をしていた。
「ほらよスリーカードだ」
ライアンがトランプを机の上に放り出す。
「へへっ、俺はストレートだぜ」
「マジかよ!」
マイルズが同じようにトランプを出すと、ライアンは頭を抱えた。
「悪いな。フルハウスだ」
そして、最後にジェイコブがトランプを出して勝者が決まる。
「くっそ!ジェイクの勝ちかよ」
「今日はツいてんな!」
「偶然さ」
ジェイコブはトランプと金を回収して、再びトランプをシャッフルしだした。
その時、扉が開いて、いつものようにデービッドがモニタールームに入って来た。
「おい、お前ら、またサボってんのかよ」
その様子は、怒っているというより呆れている。
「すいません。それで、どこに行くんです?」
ジェイコブは、トランプを置いて立ち上がる。
これも変わらずいつもの事で、ジェイコブの門番という地位は変わらずとも、ミリアーノ内では実質的なアンダーボスの片腕として扱われていた。
「少し走ったとこだ。なんか変な事を言っててな。まあ来い」
そしてデービッドは外へと出て行った。
「じゃあ行ってくる」
「おう、気を付けてな」
ジェイコブもまた、デービッドを追って外へと出たのだった。
外では、デービッドが車の側で立って待っていた。
「運転しましょうか?」
ジェイコブが提案したが、デービッドは断った。
「いやいい。運転くらいさせろ」
そして二人が乗り込み、車は走り出した。
「それで、変な事って何ですか?」
デービットがそんな事を言うのは珍しいのだった。
「いや、なんか化け物が暴れてるとか抜かしやがってな……麻薬中毒者の所に行ってる奴等だったんだが、まさかあいつらも薬をやってるんじゃないだろうな?それだけはねえと思うんだが」
ミリアーノでは麻薬はご法度である。構成員が麻薬をやるとは考え難かった。
「行けばわかるんじゃないですか?」
「まあ、そういうこったな。そんなに遠くない所だからすぐ着くぞ」
その言葉の通り、目的地へはそう時間がかからずに辿り着く。
「ん?なんだ?」
そこには人だかりが出来ていた。
近くに車を止めると、すぐにミリアーノの構成員が寄って来た。
「なんだあ、ありゃあ」
「すいません。警察が来てしまいまして……」
「なんだって警察が出張って来るんだよ?」
「それが……」
説明しようとした構成員を、デービッドは途中で遮った。
「まあいいや。見ればわかるだろ。おい、行くぞジェイク」
「はい」
二人は、野次馬をかき分けて中へと入っていく。
人避け用にテープが張ってあるが、二人はそれすらも気に留めず乗り越えていく。
周りの警察官も、それを止めることはなく、二人は死体の元へと辿り着いた。
「こいつは……」
それはまるでミイラの様な死体であった。
しわしわの老人のような死体であり、しかし血だまりはしっかりと出来ており、銃で撃たれて死んだということがありありとわかる死体である。
「確かに化け物みたいな形相だけどな……麻薬中毒者ってもんはこんなもんだろ?」
「そうですね」
二人が死体を見て考えている。その時だった。
「おい!貴様ら!ここは立ち入り禁止だ!」
「あ?」
その二人を咎める者が現れた。
それは現場にいた警察官のうちの一人である。
やたらガタイのいい、中年の男性であった。
「てめえ、俺らが誰かわかってて言ってるのか?」
その警察官に、デービッドは平然と凄む。まるでそれが正しいかのように。
「ああ?誰だてめえらは?何様のつもりだ?」
だが相手の警察官も凄み返してきて、デービッドは不思議に思う。
ミリアーノだとわかっていて、こんな返しがしてくる警察官は、ここニューシティにはいないはずなのだ。
「け、警部!まずいですよ!この方達はミリアーノファミリーですよ!」
その証拠に、別の警察官が焦って寄って来て、横から口を出した。
「ああ?何がミリアーノファミリーだ。俺はマフィアが嫌いなんだ。今まではでかいツラ出来たかもしれないが、俺が来たからには好き勝手はさせねえぞ」
口ぶりから察するに、今までニューシティにいなかった警察官のようである。
「おい――」
ジェイコブが一歩前に出たが、デービッドがそれを制した。
「あんた名前は?」
「マフィアに教える名前なんてねえが……オリバーだ」
「そうか。俺はデービッドだ。おい、ジェイクもういい、行くぞ」
デービッドは意外にも大人しく引き下がる。
「いいんですか?」
後ろからジェイコブは声をかける。
「構わねえよ。目的である死体は見たしな」
そう言ってデービッドはすたすたと歩いて行ってしまう。
そして、現場から出てしばらくすると、ミリアーノの構成員が3人、デービッド達の元に集まって来る。
「アンダーボス見ましたか?」
「ああ、しわしわの老人の死体だったな」
「ええ、でもあいつはさっきまで若者だったんです」
「はあ?どういうことだ?」
確かに、麻薬中毒者が老けたように見える事はよくある。しかし、それもいきなりと言う事はない。少なくとも数週間はかかるだろう。
「いえ、俺ら本当に見たんです。あいつが薬を打った途端、すげえでかくなって……」
「お前ら集団で幻覚でも見てたのか?」
デービッドからしてみれば、そうとしか言いようがない。
「アンダーボス信じてください。本当なんですって。いきなり体が肥大化して暴れ出したから仕方なく撃ち殺したんです。そしたら体がしぼんでいって、ああなったんです」
それで、急いでデービッドを呼んだというわけである。
「信じろって言われてもな。動画でも取っておけってな」
「すいません。そんな余裕は……」
「まあ、信じがたいが、その麻薬になんかドーピング的な要素があったのかもしれねえな」
「そのことなんですが……どうもこの麻薬はマランノではなく、アポルネから流れて来てるみたいです」
ニューシティの三大マフィアであるアポルネは、比較的おとなしいとはいえ、敵対マフィアであることには変わりない。
だから変な事とは言い難いが、今まで麻薬を流してくることが多かったのはマランノの方である。いきなりアポルネが絡んできたともなれば少し変ではある。
「それは確かなのか?」
「ええ。ほら、背の低いガキがいたでしょう。あいつが調べたみたいですよ」
「マシューが?」
つい、ジェイコブは口を挟んだ。
「ああ、お前の仲間か。じゃあ一度会ってみるか」
「そうですね」
「よし、じゃあお前らは余った麻薬を持って帰っとけ」
「はい!」
そしてデービッドとジェイコブは、再び車に乗り込み走り出したのだ。




