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ダッドの娘

 デービッドに銃をもらってから、ジェイコブはいつもに増して銃の訓練をするようになっていたが、それでもやはり教会へと向かい、たまにダッドと会って話す事も忘れてはいなかった。

 と言ってもやはり、ダッドは忙しいようで、会えない日も多かった。


 その日も、ジェイコブは教会へと向かったのだが、ダッドに会うことは出来なかったのだ。


 しかし、代わりに見慣れない少女がいたのだ。

 その少女は、ジェイコブ達と同じくらいの年代に見えた。

 だが、ジェイコブは話しかけずに、教会から去ろうとした。


「お待ちください」


 しかし、何故だか後ろから呼び止められてしまう。

 ジェイコブが振り向くと、先ほどの少女がいた。


「あなたがジェイコブさんですか?」


 急な事だが、偽る理由もないのでジェイコブは頷く。


「突然すいません。私はソフィアと言います。父があなたの話をするので、気になって待っていたのです」

「はぁ……」


 そう言われてもジェイコブは困るだけである。

 どう対応していいのかわからないのだ。


「少しお話しませんか?」


 ジェイコブは悩む。

 あまりにもダッドに似ていないので、ジェイコブからしてみると、ソフィアがダッドの娘という話は本当かどうかわからないが、ダッドの家の敷地内にある教会。という場所にいる以上、ミリアーノの関係者であることは間違いないのだ。

 つまり、ダッドの娘かはわからないが、無下には出来ないのであった。


「わかりました」


 それからジェイコブは、ソフィアに連れられて教会の中へと入っていき、誰もいない教会の椅子に二人で座った。


 そうなってから、改めてソフィアを見ると、エミリーやオリビアとは似つかわしくない、美しい金髪の髪に、真っ白な肌、大きい目が特徴的であり、なんだか人形の様だとジェイコブは思う。


「どうかなさいましたか?」


 だが、これは人形ではなく、人間であり、当たり前だが喋るのだ。


「いや……」


 だから、そんな大きな目で見られると、ジェイコブは困ってしまい目を逸らした。


「ダッドはなんて?」


 そして、あからさまに話も逸らす。


「私と同い年の子がミリアーノに入ったと言ってました。きっと父は、だからジェイコブさんの事を気にかけてるのだと思います」

「ジェイクでいい」


 みんなそう呼ぶからである。


「はい。ジェイクさん」


 しかし、さんをつけてなど、誰も呼ばないのだ。

 だが、わざわざ訂正するほどでもないので、ジェイコブは黙っていた。


「他にも同い年くらいの方達がいるのですよね?」

「ああ、マイケルと――」


 聞かれたわけでもないが、ジェイコブは嬉々として自分の仲間達の事を色々ソフィアに話した。


「色々な方がいるのですね。是非、会ってみたいです」

「今度紹介するよ。特にマイケルはさ――」


 その時、教会の扉が開いた。


「ここにいましたか。お嬢」


 そして中に入ってきたのは、デービッドであった。


「あら、デービッド。そんなに慌ててどうしたのです?」


 デービッドはジェイコブを一瞥したが、すぐにソフィアに向き直した。


「勘弁してくだせえ。ダッドに殺されちまいますよ」

「ふふ……すいません」


 ソフィアはにこやかに謝る。

 父親であるダッドのように、ソフィアもまた、黙って抜け出してここまで来ていたのである。


「ジェイク。お前、失礼しなかっただろうな?」


 デービッドが凄い剣幕で、ジェイコブへと詰め寄る。


「もう、デービッド心配しすぎですよ。ジェイクさんは親切でしたよ」


 ジェイコブが答えるより先に、ソフィアが返事をした。


「そ、そうですかい」


 そう言われたら、さしものデービッドも何も言えないのであった。


「それじゃあもう戻りましょう。ダッドも心配していますよ」

「そうですか。残念です。それじゃあジェイクさん。また」


 そして、ソフィアはジェイコブに手を振って去っていった。


 教会の扉が閉まり、ジェイコブは一人取り残される。


「おい」


 と思われたのだが、ジェイコブの真後ろにはデービッドが立っていた。


「間違ってもお嬢に手を出すんじゃねえぞ。ダッドに殺されるからな」


 ジェイコブからしてみれば今日たまたまあっただけであるし、そんなつもりはないのだが、普段にはないデービッドの剣幕に、ジェイコブは神妙な顔で頷くしかなかったのだった。

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