仕事が始まり、一週間が経った
それは、ジェイコブがミリアーノファミリーに入ってから一週間が経ったという事である。
その間、特別な事はなかった。
ただ、ライアンとマイルズに、ここでの生活を教えてもらっていただけである。
「へい!ジェイク。お前が来て一週間記念にこれやるか?」
その日は、三人でモニター室にいた。
その時に、ライアンが門の開閉ボタンを指差してきたのだ。
正直に言うと、ジェイコブはそんなのはどうでもいいが、
「ああ」
そう答えると、ボタンの目の前まで移動する。
「ちょうどボスが来たぜ。準備はいいか?」
はっきり言って、くだらないノリである。
だが、当然ジェイコブはそんなことは指摘せずに、ボタンを押した。
すると、モニターの先では門が開く。
そして、ダッドを乗せた車が通り過ぎた。
「よし!これでジェイクも一人前だな!」
何が一人前なのかわからないが、ジェイコブは微笑みながら、もう一度ボタンを押して門を閉めたのだった。
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それから少しして、いつも通りに代わる代わる休憩を取ることとなり、ジェイコブの休憩の時間がやってきた。
一週間も経てば、慣れたもので、食堂で飯を食べると、いつものように射撃場へと向かう。
そこには、既に一人の先客がいた。
「おう!久しぶりだなガキ。えっと……わりいな。なんつったけか?」
その人物は、アンダーボスであるデービッドであった。
デービッドは、とても上の立場の者とは思えない気さくさで、ジェイコブへと話しかけてくる。
「ジェイコブ……です」
「おお、ジェイコブな。そんな名前だった気がするわ」
そう言って、デービッドは大きく笑った。
「他のガキ共は適当に突っ込んだんだけど、お前だけは選んで配属したんだよ」
「何故ですか?」
ジェイコブには、自分だけを特別扱いするような理由に記憶はなかった。
「別に大した理由じゃねえよ。お前が一番前で戦ってたからだ。ここでも一番前で、お前がダッドを守るんだよ」
デービッドはジェイコブの肩に手をのせる。
「はい!」
それは頼りにされているようで、ジェイコブは素直に嬉しかった。
「銃の練習に来たんだろ?ちょっと撃ってみろ」
言われて、ジェイコブは位置について、銃を的に向けて撃った。
「なんだ。やけに様になってるな。だが、3発しか当たってないぞ」
一週間の間、銃の練習をしてきたので、ジェイコブの腕は確実に上がってはいる。
しかし、まだまだ的に当てることすらままならない。
「見てな」
そう言って位置に着いたデービッドは、目にも止まらぬ速さで銃から5発の銃弾を撃ちだした。
そして、機械を動かすと、頭3発、心臓に2発当たっている的を見せびらかす。
「こんな感じだ」
デービッドはニヤリと笑うが、教え方はマイルズと同じである。と言っても、銃の腕前はマイルズとは雲泥の差ではあるのだが。
「こうですか?」
見よう見まねでフォームを真似て、ジェイコブが銃を撃つ。
すると、的の端に銃弾は命中した。
「ちげえよ。こうだよ!」
デービッドが再び、的に向かって銃を撃つ。
そもそもその動作自体が、あまりにも早くて、ジェイコブには参考にもならないのだ。
「はい」
だが、そんなことは言えず、ジェイコブはデービッドの後に続いて、ひたすら銃の練習を続けた。
そして、それなりの時間が経った頃に、射撃場の扉が開いた。
「あ!やっぱりここにいやがった。おいジェイコブ戻って来るのがおせえぞ!ってアンダーボスじゃありませんか!」
「おう」
文句を言いに来たマイルズだったが、デービッドに気が付くと、素早く手をすり合わせる。
「うちのジェイクが失礼してやせんか?」
「大丈夫だ」
「こんな奴ならいくらでも貸し出すんで、ごゆっくりどうぞ」
マイルズはジェイコブを呼び戻しに来たのだが、そんなことを言って射撃場を出て行こうとしてしまう。
「いや、そろそろ帰ろうと思ってたところだよ」
しかし、デービッドの方が先んじて、射撃場から出て行く。
「またな」
そして、背中を向けたまま、手を振ってさって言ったのだった。
それを見届けると、マイルズは口を開いた
「なんだよ!アンダーボスと知り合いなんか?」
「知り合いってわけじゃ……」
会ったのだって、今日で2回目である。
「いい顔しとけよ?アンダーボスと話せる機会なんてそうないんだからよ」
そう言われても、ジェイコブからしてみれば、ピンとこない。
「じゃあ戻ろうぜ。早く戻らないと、ライアンの旦那がキレちまうぜ」
それは一大事である。
ジェイコブ達は急いで、門番の仕事へ戻るのだった。




