射撃場
ジェイコブはライアンと二人で、来た場所と逆側の扉から外に出た。
その先は、なんてことはない、ただ何もない草の生えた平地と、いくつかの建物、それと遠くにある門と、それから続く塀だけである。
「言うまでもないが、あれが、二つ目の門だ」
もうダッドの車は通った後の様である。
「案内したいとこだが、俺達は入れないし、遠いからな。やめとこう。そのうち行く機会もあるだろう」
一つ目の門と同じなので、何もないという話である。
「この辺りは、好きに移動していいし、好きな建物に入っていいぞ。と言っても、あまり人はいないけどな。次はあっちに行こう……って、なんでついてきてんだマイルズ!」
「ありゃあ、バレちまったか……」
こっそりと着いて行こうとしたマイルズが、罰が悪そうに頭に手をのせて少し姿勢を低くした。
「モニター見てろって言ったろ!」
正確には言っていない。
しかし、暗黙の了解だろう。
「まあまあいいじゃねえか」
「たくっ!また怒られるぞ」
そう言いながらも、ライアンはそれ以上は突っ込まずに歩き出した。
向かった先の建物の中に入る。
中に入って、ジェイコブは少し見渡すと、すぐに何をする場所かわかる。
射撃場である。
「銃撃ったことあるか?」
マイルズが、得意気に銃を回しながらジェイコブへと聞いてきた。
どうせないだろ、とでも言いたげである。
「すこしだけ」
ジェイコブは素直に答える。
「なんだ。まあ、今時のガキは15でも銃くらい撃ちらあな」
ジェイコブの答えに、マイルズは少し不満気であった。
「でも、少しってんなら見とけ」
そして、マイルズは練習場所に立つと、すかさず的目掛けて銃を撃った。
轟音が室内に響き渡る。
「こうやってやるんだぜ」
マイルズは得意気であるが、何も教えてないのも同然である。
「下手糞だから真似するなよ」
ライアンが機械を動かし、紙の的を手元に引き寄せる。
銃声は六発、だが的に当たっているのは4発だけであるし、人型に書かれた的の頭や胸には命中していなかった。
「手厳しいぜ」
マイルズは肩をすくめた。
「貸してやるからやってみな」
そう言って、マイルズは弾を入れ直して銃をジェイコブへと手渡した。
ジェイコブは黙ってそれを受け取ると、練習場所に立ち、マイルズと同じように六回引き金を引いた。
強い反動がジェイコブの体を駆け巡るが、ジェイコブは力でそれを押さえつける。
「なんだ、撃ち方は様になってるじゃねえか」
マイルズに褒められたことは、ジェイコブには少しこそばゆかった。
「しかも一発当たってるぜ、ドたまにな」
ライアンが機械を動かし紙を見せると、たった一発だが、銃弾はきっちりと頭に命中していたのだ。
「それ以外は全部外れてるだろ。ラッキーショットだな。これからは俺が教えてやるよ」
「お前が教えるってタマかよ」
二人は言い合うが、仲はいいのだ。笑っている。
「お願いします」
そんな二人に対して、ジェイコブは頭を下げた。
どちらとは言わない。二人に対してだ。
そのジェイコブの様子に、二人は笑う。
「任せとけ。構えはいいからな。狙うコツを教えてやる」
「じゃあ俺は、銃のかっこいい回し方を教えてやるよ」
ジェイコブは二人から銃の扱いを教えてもらったのだ。
そして、少し時間が経った頃に、射撃場の扉が開いた。
「おっ!なんだライアンの旦那。新人が来るって噂は本当だったんだな」
「おう、アシェル。サボりに来たのか?」
アシェルと呼ばれた人物は、苦笑いをしながら返す。
「サボってる奴に言われたくねーよ」
「サボってねーよ俺はな」
そう言ってライアンは、マイルズの方を見た。
「すぐ戻るって!」
そう言っても、もう結構な時間経ってしまっているのだ。
「アシェルだ。よろしく」
「ジェイコブです」
ジェイコブは挨拶をされ、握手をした。
「さて、アシェルも来たし、これくらいにしておくか」
「なんだよ。俺が悪いみたいじゃないか」
「ちょうどいいタイミングだっただけだよ」
それから、アシェルに別れを告げると、ジェイコブ達は外に出る。
「この辺の施設は、屋敷に住む奴全員が使うんだ。射撃場なんてここにしかないからな。一番外じゃないとダッドの家まで銃声が響いちまうだろ」
「と言っても、ダッド本人はこんなところまでは滅多に来ないから心配すんな。サボってもバレないぜ」
「真に受けるなよジェイコブ」
そんなくだらないやり取りをしながら、施設の案内をされていく、食堂や花壇や医療室や、それに墓等――色々だ。
「さて、遅くなってきたな。これで今日はあがりにするか」
そして、最後に自分の部屋を案内され、ジェイコブは眠った。




