別れ
カラーズは、オリビアを連れてアジトへと戻る。
そして、オリビアの体を入念に洗った。
「くっそ!汚ねえもんで汚しやがって」
女の子なので、エミリーに頼もうとも思ったのだが、また同時に、エミリーにこんな液体を触らせるものに抵抗があったため、結局は全員で順番に少しづつ洗ったのだった。
オリビアの体は血を流すような傷はなく、ただ、首を絞められた跡があっただけだ。
大の大人が、小柄なオリビアの首を遊び半分に絞める様子が容易に想像でき、カラーズは怒りを覚えるが、その犯人である男は死んでおり、怒りの向けばもなく、ただ悲しむしかなかったのだった。
「ごめんね。リビア……ありがとう……」
そして、最後に洗ったエミリーは自分を庇ってくれたという特別な理由もあり、より一層大きな涙を流した。
「お前のお袋さんの隣に埋めてやってもいいか?」
マイケルがジェイコブに尋ねた。
「母さんもきっと歓迎するよ……」
ジェイコブはもちろん承諾する。
「そりゃあ良かった。リビアは母親が欲しいって言ってたもんな……」
それは生まれてこの方、両親に会った事もないオリビアの些細な願いだった。
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それから、全員でジェイコブの母が眠る丘へ行くと、オリビアを埋め、目を瞑り黙祷をする。
そして、いつしか黙祷を終えると、マイケルが前に出て話し出した。
「みんなすまない。大事な仲間を失うことになってしまって……」
だが、これはマイケルのせいではないし、ただ巻き込まれただけなのだ。
もはや、仕方のない事だと、全員が理解していた。
「そして、勝手にミリアーノファミリーに入る事を決めてしまったことも」
確かにそれは、マイケル以外の者達からしてみると突然の事であった。
しかし、リーダーであるマイケルが決めたことに意を唱える者はいなかった。
「デービッドさんに言われた通り、これからはミリアーノファミリーの一員になる以上、仲良しグループでは済まされない。つまり――」
マイケルが言う事は、全員わかっていた。
しかし、わかりたくはなかった。
「カラーズは解散する」
それもまた、仕方がない事なのだ。
全員が理解しながらも、この二年間、カラーズとして楽しくやってきたことを思い出し、辛い顔をするのだ。
「そんな顔をするなみんな。ミリアーノファミリーで大きくなって、いつかカラーズを復活させよう。そして、ここに立派な墓を建ててやるんだ」
マイケルは、優しい声でそう言った。
「ああ!」
「そうしよう!」
それに、みんなは同調する。
しかし、一人だけそこに乗れない者がいた。
「ちょっと待って!」
エミリーである。
「私は?」
エミリーだけが、ミリアーノファミリーに紹介をさせてもらえなかったのだ。
それは、つまり――
「ああ、エミーすまない。君だけは置いて行く」
そう言う事である。
「なんで!私のなにがいけないの!?」
「何もいけなくはないし、大切な仲間だと思っている。だけど――」
マイケルがそう言うと、ジョシュアがエミリーの前に立つ。
「勝手なことして済まないけど、調べてきたら、エミーの母さんは離婚したんだ。エミーとやり直したいって言ってたんだ」
エミリーはその言葉にショックを受ける。
エミリーがカラーズにいた原因は、母親の再婚相手に暴力を振るわれたからである。
つまり、それがなくなったということである。
「なんで!今更そんなこと!」
だからと言って、エミリーはみんなと離れる気にはならなかった。
「今さらじゃない。ずっと俺とジョッシュは調べてたんだ。ずっと前から考えていたんだ」
実のところ、マイケルはあまり何もしていない。
動いていたのは、ほとんどジョシュアである。
だが、マイケルはそれを伝えずに、二人で調べたことにした。
「家があるなら帰れって事!?」
はっきりとは言いづらいが、そうである。
この中で帰る家があるのは、エミリーだけである。
「違うエミー。リビアを見ただろ?マフィアの一員になるって事は、もっと酷い事をされるかもしれない。特に女だとさ……俺はそんな事になったら耐えられないんだ……」
そう言われると、エミリーは黙るしかなかった。
「それに、デービッドさんにも言われただろ。残ってもみんなバラバラだってよ。でも、会えないわけじゃないんだ!」
マイケルが追い打ちをかける。
「ジェイコブは暇な時、いつでもエミーに会うってよ」
イーサンが更に口を挟んできた。
しかし、いきなりそんなことを言われたジェイコブは困惑してしまう。
「本当?ジェイク?」
エミリーは少し嬉しそうにジェイコブへと尋ねる。
エミリーの後ろで、マシューが頷けとジェスチャーで、ジェイコブに伝えて来た。
「ああ」
ジェイコブは頷く。
それを見ていた、ジョシュアは複雑そうな顔をしていた。
「……わかったわ。どうせ、みんなバラバラだものね」
悩んだ末に、エミリーは答えを出す。
「すまない……だけど、俺達はずっと仲間だ!さあ、アジトへ戻ろう」
デービッドの話では、新しい住処を用意されるという事で、そのアジトとも今日でお別れである。
荷造りだってしなければいけないのだ。
「ああ、また来るよリビア」
だから、オリビアに別れを告げると、カラーズはアジトへと帰って行ったのだった。




