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別れ

 カラーズは、オリビアを連れてアジトへと戻る。

 そして、オリビアの体を入念に洗った。


「くっそ!汚ねえもんで汚しやがって」


 女の子なので、エミリーに頼もうとも思ったのだが、また同時に、エミリーにこんな液体を触らせるものに抵抗があったため、結局は全員で順番に少しづつ洗ったのだった。


 オリビアの体は血を流すような傷はなく、ただ、首を絞められた跡があっただけだ。

 大の大人が、小柄なオリビアの首を遊び半分に絞める様子が容易に想像でき、カラーズは怒りを覚えるが、その犯人である男は死んでおり、怒りの向けばもなく、ただ悲しむしかなかったのだった。


「ごめんね。リビア……ありがとう……」


 そして、最後に洗ったエミリーは自分を庇ってくれたという特別な理由もあり、より一層大きな涙を流した。


「お前のお袋さんの隣に埋めてやってもいいか?」


 マイケルがジェイコブに尋ねた。


「母さんもきっと歓迎するよ……」


 ジェイコブはもちろん承諾する。

 

「そりゃあ良かった。リビアは母親が欲しいって言ってたもんな……」


 それは生まれてこの方、両親に会った事もないオリビアの些細な願いだった。

 


     ♦



 それから、全員でジェイコブの母が眠る丘へ行くと、オリビアを埋め、目を瞑り黙祷をする。


 そして、いつしか黙祷を終えると、マイケルが前に出て話し出した。


「みんなすまない。大事な仲間を失うことになってしまって……」


 だが、これはマイケルのせいではないし、ただ巻き込まれただけなのだ。

 もはや、仕方のない事だと、全員が理解していた。


「そして、勝手にミリアーノファミリーに入る事を決めてしまったことも」


 確かにそれは、マイケル以外の者達からしてみると突然の事であった。

 しかし、リーダーであるマイケルが決めたことに意を唱える者はいなかった。


「デービッドさんに言われた通り、これからはミリアーノファミリーの一員になる以上、仲良しグループでは済まされない。つまり――」


 マイケルが言う事は、全員わかっていた。

 しかし、わかりたくはなかった。


「カラーズは解散する」


 それもまた、仕方がない事なのだ。

 全員が理解しながらも、この二年間、カラーズとして楽しくやってきたことを思い出し、辛い顔をするのだ。


「そんな顔をするなみんな。ミリアーノファミリーで大きくなって、いつかカラーズを復活させよう。そして、ここに立派な墓を建ててやるんだ」


 マイケルは、優しい声でそう言った。


「ああ!」

「そうしよう!」


 それに、みんなは同調する。

 しかし、一人だけそこに乗れない者がいた。


「ちょっと待って!」


 エミリーである。


「私は?」


 エミリーだけが、ミリアーノファミリーに紹介をさせてもらえなかったのだ。

 それは、つまり――


「ああ、エミーすまない。君だけは置いて行く」


 そう言う事である。


「なんで!私のなにがいけないの!?」

「何もいけなくはないし、大切な仲間だと思っている。だけど――」


 マイケルがそう言うと、ジョシュアがエミリーの前に立つ。


「勝手なことして済まないけど、調べてきたら、エミーの母さんは離婚したんだ。エミーとやり直したいって言ってたんだ」


 エミリーはその言葉にショックを受ける。

 エミリーがカラーズにいた原因は、母親の再婚相手に暴力を振るわれたからである。

 つまり、それがなくなったということである。


「なんで!今更そんなこと!」


 だからと言って、エミリーはみんなと離れる気にはならなかった。


「今さらじゃない。ずっと俺とジョッシュは調べてたんだ。ずっと前から考えていたんだ」


 実のところ、マイケルはあまり何もしていない。

 動いていたのは、ほとんどジョシュアである。

 だが、マイケルはそれを伝えずに、二人で調べたことにした。


「家があるなら帰れって事!?」


 はっきりとは言いづらいが、そうである。

 この中で帰る家があるのは、エミリーだけである。


「違うエミー。リビアを見ただろ?マフィアの一員になるって事は、もっと酷い事をされるかもしれない。特に女だとさ……俺はそんな事になったら耐えられないんだ……」


 そう言われると、エミリーは黙るしかなかった。


「それに、デービッドさんにも言われただろ。残ってもみんなバラバラだってよ。でも、会えないわけじゃないんだ!」


 マイケルが追い打ちをかける。


「ジェイコブは暇な時、いつでもエミーに会うってよ」


 イーサンが更に口を挟んできた。

 しかし、いきなりそんなことを言われたジェイコブは困惑してしまう。


「本当?ジェイク?」


 エミリーは少し嬉しそうにジェイコブへと尋ねる。

 エミリーの後ろで、マシューが頷けとジェスチャーで、ジェイコブに伝えて来た。


「ああ」


 ジェイコブは頷く。

 それを見ていた、ジョシュアは複雑そうな顔をしていた。


「……わかったわ。どうせ、みんなバラバラだものね」


 悩んだ末に、エミリーは答えを出す。

 

「すまない……だけど、俺達はずっと仲間だ!さあ、アジトへ戻ろう」


 デービッドの話では、新しい住処を用意されるという事で、そのアジトとも今日でお別れである。

 荷造りだってしなければいけないのだ。


「ああ、また来るよリビア」


 だから、オリビアに別れを告げると、カラーズはアジトへと帰って行ったのだった。

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