失敗
ジェイコブ達はマイケルとの待ち合わせ場所へと着く。
そこは、シェイク・ウエスト・ストリートと、そう遠くないところだった。
「マイク」
ジェイコブが、小声でマイケルの名前を呼ぶ。
「いや、ここは遠いから大丈夫だ。今、ジョッシュが見張ってる」
「ああ」
マイケルがそう言うので、ジェイコブは声を普通の大きさへと戻した。
と言っても、元々声は小さい方だし、口数だって少ない方だが。
「どうやって見つけたんだ?」
イーサンが聞いた。
「ウィリアムさんの部屋に行ったんだ。そしたらよ、ウィリアムさんは元々ジャクソンの事を疑ってたみたいでな。奴を調べた情報が置いてあった。その中に奴の隠れ家の場所があってな。隣のビルから覗いたらドンピシャだぜ」
もっと言うなら、ボブは冷静に見えて頭に血が上っており、ウィリアムの家には行っていなかった。
ジャクソンの隠れ家は、廃ビルの中の一室であり、割れた窓ガラスの向こうに、ジャクソンがいるのを隣の廃ビルから確認することが出来た。
「ボブさんには?」
「もちろん連絡した」
「なんて言ってた?」
イーサンの質問に対して、マイケルは肩をすくめた。
「俺が行くまで手は出すなってさ」
そのマイケルの様子から、イーサンは次の分かり切った言葉を聞いた。
「どうするんだ?」
「俺達で捕まえよう」
それを聞いて、イーサンもジェイコブも笑う。気持ちが同じだったからだ。
「じゃあ、まずはジョッシュを呼び戻すぞ」
そう言って、マイケルは携帯を取り出した。
それからしばらくして、ジョシュアがマイケル達の元へと戻って来た。
「あの野郎。呑気にコーヒーを飲みながら、ハンバーガーを食ってやがる」
それはつまり、動く気はなさそうということである。
「はは、好都合じゃないか」
マイケルが楽しそうに笑う。
「じゃあ作戦を説明するぞ。相手はプロのヒットマンだ。おそらく銃だって持ってる。こっちから部屋に入っても、誰か撃たれるかもしれない」
カラーズは誰一人として欠けるわけにはいかないのだ。
「じゃあどうするんだ?」
「だから部屋の扉の前で待つ。奴が部屋を出てきた瞬間に腕にしがみついちまえ。こっちは4人いるんだ。銃さえ出されなきゃ、取り押さえるのは簡単さ」
マイケルの顔は、失敗するとは欠片も思ってない笑顔であった。
「じゃあ、ここからは物音一つ立てずに静かにだな」
イーサンがそう言うと、
「ジェイクはそういうの得意だよな。いつも静かだからな」
ジョシュアが茶化したのだ。
それに対して、ジェイコブは微笑む。
「そういうジョッシュは、いつも騒がしいんだから気を付けろよ」
そしてマイケルは、ジョシュアを弄り返したのだ。
「気を付けるよ」
そして、みんな笑った。
しかし、それもそこまでである。
「じゃあ行くぞ」
そこからは、全員が真面目な顔に切り替わり、全く音を出さずに進行を始めたのだ。
ビルの中に入ると、特別足音もたてない様に、当然一言も喋らずに、廃ビルの階段を上っていく。
そして、ジャクソンの隠れ家の部屋の前に辿りついた。
その時だった――
「動くな」
その言葉と共に、一番後ろを歩いていたジェイコブの頭に硬い感触が当てられた。
ジェイコブはそれが銃だと瞬時に理解し、しかし、それでも自分の命などどうでもよかった。
だから、頭を下げながら背後に向かって回し蹴りを放つ。
「おっと」
しかし、その渾身の一撃は躱されてしまい、今度はマイケルが何者かに銃を突きつけられてしまう。
何者かと言ったが、この状況でそんなことをするのは一人しかおらず、間違いなくジャクソン・クルス本人なのである。
「動くなって言ったよな?次はまじで撃つぞ?」
マイケルを人質に捕られてしまっては、誰も動ける者などいなかったのだ。
「そうだ。いい子だ。よく来たな、中に入れ」
絶体絶命ではあるのだが、不思議な事にジャクソンはそんなことを言い出した。
それを疑問に思おうと、全員が口には出せずに、黙って部屋の中へとぞろぞろと入るしかなかったのだ。




