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婚約破棄してやると啖呵を切ったシリーズ

悪役令嬢が婚約破棄してやると啖呵を切った。するとおや?攻略対象のようすが……?

作者: 明。

 普通、乙女ゲーに転生したヒロインってもっとこう人生イージーモードじゃないかと思うの。それなのに、私の人生はウルトラハードモードからのスタートだった。


 自力で排泄できない赤子から始まらなかったことだけは良かったのだが、三歳から日本で暮らしていた記憶があった。

 しかし最底辺と言っていい貧乏孤児院からスタートよ。孤児院は臭いし汚いし、皆いつもお腹を空かせていた。

 そこから頑張って頑張って頑張って、孤児院でもある程度の収入が見込めるようになって、ご飯も食べられるし居心地が良くなったら神童だからと男爵家に引き取られた。


 貴族に引き取られて生活が楽になるかと思うでしょ?しかし私の人生はウルトラハードモード。そこからも人生ハードモードが続いた。男爵家に娘が生まれ、義両親からも使用人からもいたぶられる日々。いや、まあ黙ってやられはしないけどね!

 商会を内緒で立ち上げたので、最悪そっちに逃げてやる!日本知識チートを舐めるなよ!私の個人資産は実家以上!!知られたら取り上げられるのは間違いないので綱渡りの日々だけどな……!


 そして勉強しまくり新たに始まった奨学金制度を使って学校に避難できた。義妹は甘やかされた結果、成績もいまいちなので同じ学園には入れなかった。バラ色の学園ライフ満喫と高成績で卒業し住み込み就職を心に誓った私は、気がついてしまう。




 ここ、乙女ゲーの世界やんけ、と。





 ウルトラハードモードな人生に疲れた私。乙女ゲー世界を楽しむ余力などない。入学あたりで記憶が戻れば……いや、そしたら孤児院にまだいたかも。とはいえ、死亡の危険もあるためバッドエンドフラグはある程度へし折る必要があり、少し攻略対象とも関わっていた。しかし、ヒロインにあるはずの光魔法が使えない。あれか、中身が汚れた大人だから?必要なら他者を蹴落とす強欲女だから??なんでなんだろう。まあ、なければないで勉強するからいいけど。








 そんなある日、悪役令嬢が婚約破棄してやると攻略対象に啖呵を切った。え?こんなイベントあったっけ?


「エリー……?」


 まるで仮面のような笑みが剥がれ落ち、そこには絶望した男が残された。そして、私への憎悪を顕にした。やばい、殺される!?考えろ考えろ考えろ!どうすればこの危機を回避できる!?


「アルフレッド様、ボケっとしてないでエリザベート様を追いかけてください!!」


 この攻略対象は、悪役令嬢を心から愛している。私よりも悪役令嬢を優先すべきと示してやった。

 のろのろしつつもどうにか攻略対象は悪役令嬢を追っていった。攻略対象よ、健闘を祈る。なんなら、悪役令嬢に全力で謝罪して誤解をとくため協力しよう。好感度チェックのために悪役令嬢の悪口を言った私も悪い。明日全力で謝罪しようと思うのでどうか殺さないでくださいお願いします。

 その後、悪役令嬢の家の前で泣き叫ぶ攻略対象を見かけた。私の命は明日までかもしれない。







 そして、翌日。悪役令嬢と攻略対象は遅刻して一緒に登校してきた。

 何故か、悪役令嬢は仮面をつけており、攻略対象は恭しい従者のようになっていた。しかし、見るからに泣き腫らした顔なのだが、表情は晴れやかで幸せそうだ。


「エリー、段差に気をつけてね」


「……ええ」


「エリー、辛くはないかな?」


「……ええ」


「エリー、喉が乾かないかな?紅茶はどう?お菓子は?」


「……ええ、けっこうよ」


 攻略対象がウザ男にクラスチェンジした。クール不器用キャラどこ行った??かまいすぎて地味に悪役令嬢が困惑しているじゃないか!!さっきから「ええ」しか言ってないぞ?


「ヒッ!?」


 攻略対象から睨まれた。間違いなくこれは殺気!!やばい、殺られる!昨夜から散々シミュレートしてきたのだ!

 理解したら、行動は迅速に!!学年主席の知力を見せてやる!!


「エリザベート様」


「何の用かしら。わたくし、あなたに発言を許した覚えはなくてよ」

「大変失礼いたしました!私にも事情があったんですうう!!今後二度とこのようなことが無きよう、契約でも血判でもなんでもいたします!どうかどうか、寛大なるお心でこの卑小なる庶民にご慈悲を!!」


「ふぇ……?」


 悪役令嬢は明らかに怯んだが、隣で絶許滅殺オーラを放つ婚約者を見て理解してくれたようだ。


「どうか、どうかお許しおおおおお!!」


 額を床に擦りつけて必死で許しを乞う。プライドなんて命に比べたらポイよ!そもそも、私はこれまでこうやってなんとか命を繋いできたのだ。なんなら、靴を舐めろと言われても従うぞ!


「ゆ、許しますわ。顔をお上げなさい。……まあ、おかげでアルと親密になれましたし……」


 私は悪役令嬢の呟きにより命を救われた。よかった、絶許滅殺オーラを放っていた攻略対象が満面の笑みだ。お前、マジでクール不器用キャラはどこ行った。

 そして、悪役令嬢様ことエリザベート様は命の恩人です。私に危害が及ばない程度でよければいつかご恩を返します。


「ああ……エリー。本当になんて可愛いんだ……。抱きしめていいかな?」


「ひ、人前では駄目ですわ!!」

「では今すぐ二人きりに!!」


 言うが早いか、攻略対象は颯爽と悪役令嬢を抱いて去っていった。悪役令嬢が授業はどうするんだとか言っていたが、多分聞いていない。


「……とりあえず、勉強しよ」


 悪役令嬢エリザベート様に内心エールを送りつつ、見なかったことにして勉強することにした。

 助けたいけど、殺されるんで邪魔はできない。私はヒロインよりも平凡なモブとして生きていこうと思う。

気が向いたら、また続きを出すかもしれません。

ヒロイン(仮)は転生者でした。

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