殺しあうほど仲がいい
今回は初登場のキャラクターが二人出てきます!
とある早朝、荘の真横にある空き地からラジオ体操の音源が聞こえてきた。
「まずは手足の運動~、さんハイっ!」
今にも壊れそうなラジオから出てくる男性の声は時々プツプツと途切れて聞こえた。
そしてそのラジオを前にしているのは、パジャマ姿で魔女の帽子のようなものを被った少女と
髪をオールバックにしてタキシードを身にまとっている若い男性だった。
「なぁ、ハレス。もうこれ今日でやめにしないか?」
魔女帽子少女があくびを噛み殺しながら横にいる男性に聞いた。
「ダメだ。」
「何で?」
「お前からやりたいって言ったから。」
「じゃあ、もうやりたくない。お布団中入ってぬくぬくしてたい。」
男性はそれを聞いた瞬間眉間にしわを寄せ少女を睨むようにして言った。
「じゃあ、てめぇ~が一生布団からでれねぇ様に四肢もいでやろうかぁ?!このガキがぁ!!」
「んだぁと!これでも120歳だわ!!てめぇこそ何その恰好!紳士ぶってんじゃねぇぞ!」
「俺は主に使えているからドレスコードは必須なんだよ!お前みたいに一人でぐ~たらしてねぇんだよ!」
「へぇ~、じゃあそのお前が使えている主様とやらはどこかなぁ~?あっ!そ~だったぁ~!
私の未完成魔法でこの帽子になっちゃったんだった~!」
少女は被っていた帽子を指先でくるくると回し始めた。
「いい加減にしろよ。カスが。」
男性は右腕を肩の高さまで上げるとその横から異次元空間が現れそこから幾本もの黒い腕が出てきた。
「なんだい、やるの?」
少女もそう言い、両手を広げると真下に魔法陣が出現した。
「死んで詫びろ、ガキが。」
「詫びるほどでもないわ、バーカ」
もうあと少しで一触即発しそうだったところにたまたま空き地横を通った
105号室の魔王軍幹部であるシュレッツ・マリンソンが仲介しに入った。
「お二人とも!何をしてらっしゃるんですか?!」
「このガキが俺の主のことを馬鹿にしたんだ!」
「馬鹿にできる主を持ってるお前が悪いんだ!」
「ここはあなた方が暴れていい場所じゃない!これ、差し上げるので喧嘩はやめてください!ご近隣にも迷惑です!」
シュレッツは自分が持っていた荷袋の中から何かはこのようなものを取り出し二人に渡した。
「ホントは私と大家さんの分でしたが差し上げます。京都土産の八つ橋という和菓子です。」
シュレッツはため息をついた後、念押しに注意した。
「亜人のハレスさんと魔法皇のフォルマさん、もう一度言います。
あなた方そして私もですが、この世界ではあのような能力を使ってはいけないそういう制約です。
ましてや我々は皆違う世界線から来ているのにその間で抗争があろうものなら本当に取り返しのつかないことになりますよ。」
ハレスとフォルマは顔を見合わせた。
「もう、ホントにこういうのはやめてくださいね。」
シュレッツはそう言って荘に帰っていった。
静けさを取り戻した空き地に朝日が差し込んできた。
そして、ラジオからはラジオ体操の伴奏が終わり「今日も一日頑張りましょう」という声がかすかに聞こえてきた。
「朝飯、一緒に食うか?」
ハレスがそう言った。
「そうだな、私は卵焼きが食べたいな。砂糖少なめのだし巻きのやつ。」
朝食の話題で盛り上がっていた二人はさながら姉と弟のようだった。
ちなみにハレス君は107号室、フォルマさんは108号室に住んでいます。