名義は幹部のものなんですね。
ほのぼのとしていながら少しパンチのある作品に仕上げていく予定です!
都内某所、新築の家が建ち並ぶなか一軒だけ時代に置いて行かれたような外見をした荘があった。
その荘には101号室から110号室まであり、共通の玄関そして廊下を通って部屋に入れるという仕組みだ。
今ではこのような造りはあまりないことだろう。
そしてこの荘にはもう一つ変わった秘密が隠されていた。
ギシギシと踏み込むたびに音が出る木製の廊下を一人の女性が歩いていた。
彼女が向かったのは廊下の突き当りにある105号室だ。
彼女はドアの前に立つと容赦なくその木製のドアを叩いた。
「シュレッツ・マリンソンさん!家賃払ってください!うちでは原則滞納は禁止なんですよ!」
すると、身長が2メートルほどあり角を二本頭にはやした男性がシッー!といいながら
ドアを開けて顔だけを出した。
「『シー』じゃないですよ!家賃!はよ!」
「今、魔王様と私含む幹部の定例会議中なんですよ!後でしっかり払うので今はやめてください!」
するとドアの奥から野太い不気味な声が聞こえてきた。
「大家さんか?シュレッツ」
「はっ、さようでございます。どうやら家賃の件でご訪問なさったようで..」
その時、女性はシュレッツの腕の下を潜り抜け部屋に入った。
しかし、そこは外見からは想像もつかないような巨大な空間が広がっていた。
そして目の前には縦の幅が20メートルにもなろうかというほどの
大きな楕円形の机さらにその奥には玉座のようなものがありそこには魔王なる者が座っていた。
女性はそれらには一切興味を示さず話し始めた。
「定例会議かなにかは知りませんけど、ここの管理人は私ですから。家賃は払ってください!」
「この無礼者が!魔王様に向かって何という発言を!!」
楕円形の机に並んでいた猫人間が女性に向けて帯刀していた剣を抜く構えをとった。
すると女性はポケットからなにか取り出して猫人間に投げつけた。
「こっ、これは..!!」
猫人間の瞳孔は限界まで開ききっていた。
女性は二ヤリと笑って
「魔王さまが家賃払ってくれたらこれいっぱいあげるんだけどなぁ~..マ・タ・タ・ビ」
猫人間はウズウズしながら魔王の座っている玉座に向きを変えた。
「魔王様!早急に家賃を納金するべきです!」
「えっ、でもお前さっきまで..」
「いいからさっさと払えぇぇ!!」
猫人間はそう言って興奮を抑えられず、
地面に転がっているマタタビの匂いを嗅いだり口に入れては出したりを繰り返していた。
「あらあら、あの子いつもああやって後で魔王様にお仕置きされるのに。学ばないわね。」
そう発言したのは一緒に机に並んでいたメデューサだった。
「大家さん、今回は金貨か?それとも幹部に相当する力か?それともこのわたs..」
「27000円でお願いします。」
女性は食い気味で応答した。
魔王は「はい」とだけ言って、
自らがま口を取り出して丁寧に『家賃』と書かれた封筒にお金を入れてシュレッツを介して渡した。
「はい、確かに~」
女性はそう言って部屋から出て行った。
「魔王様はなぜあの世界とこの世界との関係を解かないのですか?」
シュレッツが問うと
「あの世界の珍味は至極のものだったからだ。」
そう言って魔王が指をパチンと鳴らすとマタタビに夢中になっていた猫人間に落雷が当たった。
「だから言ったじゃん。」
メデューサはクスクスと笑っていた。
クスっとでも笑っていただけたら嬉しいです。