02:リズ
「私の名前を呼びましたか?」
村人が困る姿は見ていられない。
少し様子を見るつもりだったのだが、
つい声をかけてしまった。
「あ、あなたが」
「えぇ、お目当ての『魔女』ですよ」
「やっと会えた、やっと……」
「ん?」
突然、音もなく倒れ込む旅人。
「リズ!?」
隣にいた仲間であろう女性が身体を支える。
倒れられては、落ち着いて話も聞く事が出来ない。
「話は後にしましょう。さぁ、こちらへ」
「……ありがとう」
「ノルトさん、すみませんが村長さんの所へ行って
旅人は私が対応したと伝えてはもらえませんか?」
立ち尽くしていた村人へ頼み込む。
「はい、分かりました。お任せ下さい!」
「ありがとうございます、助かります」
村人へ一礼し、私と旅人はその場を後にした。
*
「それで、何故ここへ?」
旅人と出会い、移動したこの場所は
私の所有する小屋の一角。
村の廃材を集めて作ったベッドの上では
先程倒れた旅人が穏やかな顔で眠っている。
どうやら、この村へ来るまで休憩は
最小限に抑えてたらしく、目的である私を
確認することで疲れが表へ出てきてしまったらしい。
「私が話しても良いものか……
出来れば、今眠っているリズから聞いて欲しい」
「そうですか、ではリズさん、が目を覚ますまで
聞くのはやめにしましょう」
私はそう言うと、
紅茶を淹れる為にキッチンへと向かう。
「紅茶はお好きですか?」
「あぁ、もちろんだ。
ありがとう何から何まで……」
「構いませんよ、なにせ久々のお客様ですから」
客人用のティーカップと
紅茶の入ったボトルを手に言葉を続ける。
「目的は聞かないと言いましたけど、
あなたの名前ぐらいは聞いてもいいですか?」