01:魔女
大陸の端。
青々とした芝に囲まれたこの村にとっては、
大陸の中心で繰り広げられている争いなど
ほんの些細な酒の肴程度にしかならないだろう。
この平和そのものな土地に足を踏み入れた私には、ひとつの目的があった。
「噂通りの場所……」
私、アルドレア王国第二皇女リズ・アルドレアは
そう呟いた。
*
大陸の端。
青々とした芝に囲まれた村を
一望できるこの場所は、村の西側世界の
端に位置する山脈の一端である丘にある。
平和そのものな土地に足を踏み入れたあの者達は、
恐らく皇族か貴族だろうか。
村を守る役目を任された私が設置した
魔力感知を担う装置が異常な数値を示している。
これほどの魔力を有するのだから、
ただの貴族という訳では無さそうだ。
その魔力量から察するに
例えば、大国のお嬢様とか……
「……まさかね」
私は重い腰を持ち上げて、
ロングコートを手に取った。
*
「すみません、この辺りで『魔女』と
呼ばれる女性をご存知ではないですか?」
「『魔女』……そういえば、
アリサさんの事を前に来た冒険者の方が
そう呼んでいたような」
「っ!やはり、この村にいるのですね!?」
村の入口付近で、男女2人組の旅人が
村人に話しかけている。
2人の旅人の異様な雰囲気に
村人は訝しんだ様子だ。
「それで、どこにおられるのですか?」
「えっと、あのアリサさんは……」
「私の名前を呼びましたか?」
村人が困る姿は見ていられない。
少し様子を見るつもりだったのだが、
つい声をかけてしまった。
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