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かえるドア

作者: hp

電車に押し込まれる羊の群れを尻目に、僕はうんと遠回りして学校へ向かう。校門で挨拶をし、木と砂の匂いのする靴箱で履き物を替え、2階の教室のドアを開ける。授業を適当にこなし、駄弁りながら百八十円の素そばをすすり、放課後はコツを掴み始めた部活に腹が鳴るまで打ち込んだ後、早歩きで家に帰る。

風呂と夕飯を済ませた後は、角ばった不親切な階段を登り、短い廊下の突き当たりにある自室に入る。そして使い慣れた携帯で他人の人生を覗き見ながら、眠りに落ちる。


「あっ」


声が出た後、気付いた。携帯をリビングに置き忘れていた。

数秒自省し、座ったまま振り返りもせずに、握ったばかりの丸いドアノブに手だけをかけた。

冷たい鉄の感触が肌に伝わる。丸いドアノブはそこにはなかった。振り返った僕は、丸いドアノブの代わりに妙に手に馴染むL字型のドアノブに触れている親指を見た。

指をそっと離し、手を左腿へ戻す。視線を上に移すと、そこにはミミズが這ったような字で、「かえるドア」とだけ書いてあった。


吸い込まれるような妖しさを放つ新緑のドアを前にした僕は、違和感や不安を凌駕するほどの高揚感に包まれていた。

実際には、ただのドアであることはわかっていた。ドアを開けたその先には見慣れた廊下が広がっていることも。

しかし僕は自分に言い聞かせた。これは自分にだけ訪れた何かのチャンスであると。ドアを開けると何かが起こる、そう信じた。

心臓の力強い鼓動を感じながら、再びドアノブに手を伸ばす。

ドアノブに触れるまでの時間、それは僕の興味が望遠鏡に移るには充分すぎるほど長かった。


「ガチャ」


意識を置き去りにして、ドアが開く音だけが聞こえる。

そこがどこなのかはすぐに理解できた。

目の前には、毛の生えたちっぽけな豆つぶ、自分だ。


「なんだ、何もかわらないんだ。」


流れに身を任せた。

漫画、写真、手作り小物など、自己表現をしている友人達が輝いて見えたので、以前より興味のあった小説を書いてみました。

この文章で誰か1人にでも良い影響を与えられれば嬉しいです。

コメントなどいただけると、とても励みになります。

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