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異世界の王様  作者: 池崎数也
第二章
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第五十話:異世界の王様、城下町に出る その4

 騒ぎから遠ざかるように逃げ出した義人達は、ある程度離れてから再び店などを見て回ることにした。


「ここまで来れば大丈夫……だよな?」


 とりあえず周囲の様子を窺うが、特に変わった様子は無い。義人は軽く気を抜くと、後方から突き刺さる、微妙に恨みがましい視線へと振り向いた。


「む〜……」


 振り向いた先、そこではサクラが僅かに頬を膨らませている。そして義人と目が合うと、目を逸らした。


「あの……サクラさん? 露骨に目を逸らされるとけっこう傷つくんですが」


 サクラが機嫌を損ねた理由がわかっているので、義人はとりあえず敬語で話しかけてみる。すると、サクラは拗ねたように口を開いた。


「ヨシト様、さっきの連中が襲ってくるって知ってましたね?」


 明らかに確信を含んだ問いかけだったが、義人はなんとなく大仰に肩を竦めてみる。


「ハッハッハ、何を仰るサクラさん。そんなこと知ってるはずが」

「じゃあ、なんでわざわざ八百屋さんで金貨を渡したんですか?」


 自身の言葉を遮って返された言葉に、義人は口を閉ざす。そして苦笑すると、降参とばかりに両手を上げた。


「いやほら、明らかに余所者で田舎者っぽい挙動をしてる奴が大金を出したらどうなるかなーと。王都の治安も知りたかったし。案の定金欲しさに襲ってくる奴がいて俺としては参考になったと言うか」

「だからわたしとシノブ様の出番があるなんて言ってたんですね……酷いですよ」


 肩を落とすサクラ。義人もさすがに申し訳なく思い、宙に視線を彷徨わせた。


「あー……ゴメン。うん、迷惑をかけた。そうだよな、いくらサクラが強いって言ってもいきなり戦わせるのはまずかった。ゴメンな」


 サクラの役目は義人の身の回りの世話と護衛だ。その立場上、義人を危険な目に合わせるわけにはいかないのだろう。

 僅かに膝を折り、目線を合わせて謝るように話しかける。しかしサクラはそれに答えず、ポツリと呟いた。


「カグラ様に黙って城から出た上、街中で戦ったなんて知られたらどれだけ怒られるか……うう、お仕置きは嫌です」


 義人はどんなお仕置きがされるのかと少しだけ気になったが、励ますように声をかける。


「大丈夫だって。アルフレッドに許可をもらってるし、護衛もちゃんといる。何かあったら俺が王様命令で無理矢理連れ出したってことにするさ。まあ、そんなこと言わなくても怒られるのは十中八九俺だけだろうけどな」


 もっとも、自分だけが怒られるように誘導するつもりだったのだが。

 サクラは心配そうに顔を上げる。そこにはすでに拗ねたような表情はなく、義人の言葉を聞いて不安を覚えたようだった。


「で、ですがそれだと義人様が……」

「いやー、俺なら怒られ慣れてるし。というか、今回はアルフレッドの許可も取ってる正式な視察だからね。なんとかなる……と、思いたい」


 説教を回避する方法は思いつかないので、最低でも小言はもらうことになるだろう。義人は苦笑混じりに笑った。


「今はそんなことよりも店を見て回ろうぜ。どんな店があるのか知りたいし」


 そう言って周りを見回してみる。すると、隣を歩いていた志信が義人の袖を引いた。


「義人、あの店はどうだ?」

「お、どれどれ?」


 志信が指差し、義人はその方向を見る。その視線の先には、髪飾りや(くし)、手鏡や指輪などの装飾品を扱っている店があった。

 義人は僅かに考え込むと、志信に向けて親指を立てる。


「さすが志信。良い店を見つけてくれた」

「良い店……なのか?」


 志信としては適当に目についたから指差しただけなのだが、義人にとってはありがたいらしい。そのまま四人で連れ立って入店すると、優希とサクラは目を輝かせて品物を見始めた。やはり、女の子としては装飾品などが気になるらしい。

 装飾品の他にも様々な物が売ってあり、義人と志信も商品を見ていく。


「中々品揃えが良いな。って、扇子(せんす)まで売ってるじゃないか!?」


 驚きの声を上げる義人。扇子や団扇(うちわ)が存在していることはカグラから聞いていたので知っていたが、実物を見るとやはり驚いてしまう。


「これも歴代の王の影響で作られたんだろうか……」


 建物などは西洋の造りだというのに、時折和風のものが混ざっている。義人はこの国の(いびつ)さを垣間見た気がして、苦く笑った。


「……まあいいや、(あお)ぐものが欲しかったし。あとは何を買うかなー」


 いくつか髪飾りを眺め、黙考する。そんな義人の横では志信が所在無さげに立ち、落ち着か

ないように視線を彷徨わせていた。


「義人、俺はこういった店は苦手なのだがどうすればいい?」

「いや、普通に商品を見れば良いと思うぞ。何ならミーファとかシアラにお土産でも買ったらどうだ?」

「ぬ……土産か」


 義人の言葉を聞くなり、まるで死闘にでも挑むかのように志信の顔つきが変わる。プレゼントなどを選ぶのが心底苦手な志信にとっては、まさしく死闘に違いないのだろう。

 真剣な表情で商品を見始めた志信を横目に、義人は桜の花をあしらった髪留めを手に取る。続いて髪留めとしても使えそうな落ち着いた色合いの()(ぐし)を手に取り、最後にもう一回り小ぶりな手櫛を手に取った。小さい方の手櫛は髪留めには使えないタイプのものだが、淡い色合いで品がある。


「それにしても、こっちの世界にも桜があるんだなー」


 そんなことを呟きつつ、最初に見ていた扇子と一緒に店主らしき若い女性の下へ近づく。


「いらっしゃいませ。これは全部一緒の袋でいいですか?」

「できれば扇子以外は個別に包んでほしいんだけど……」


 義人がそう言うと、女性はクスクスと笑う。


「女の子三人にあげるの? 甲斐性があるのは良いけど、ほどほどにね?」


 嫌味なく、楽しそうに笑う女性に義人は苦笑した。


「いや、そんなんじゃないっす。二つはともかく、残りの一つは逃げ道というか、予防策というか」

「あらあら、彼女のご機嫌取り?」


 どの世界でもこういう話題は共通らしい。義人は何やら納得したらしい女性に三十ネカ渡し、三つの包みを受け取って扇子はポケットに入れる。


「ありがとうございましたー」


 お決まりの商売文句と営業スマイルに小さく笑い、(きびす)を返す。そして商品を楽しそうに眺めている優希とサクラに近づくと、それに気づいたサクラが僅かに焦ったように振り向いた。


「あ、す、すいませんヨシト様! 護衛する立場なのにはしゃいじゃって……」

「いや、気にしなくていいよ。護衛も何も、こんな狭い店の中で襲ってくる奴なんていないって」


 そう言って義人が苦笑すると、そんな義人の背中に恨めしそうな声がかかった。


「狭い店で悪かったわねー」


 先ほどの店員の女性である。


「……すみません。こじんまりとしつつも品揃えが良い、素敵なお店と訂正します、はい」


 義人は両手を合わせ、拝むように謝った。女性は満足して引き下がったが、まだ義人の方を見ている。どうやら、プレゼントを渡すところまで見たいらしい。

 そのことに内心で苦笑しつつ、義人は受け取ったばかりの包みを二人へと差し出した。


「えっと、なんですか?」


 差し出された包みを見て首を傾げるサクラ。優希には毎年の誕生日プレゼントから旅行先のお土産、一緒に出かけた時にも同じようにプレゼントをしているため、包みが何か理解しているようだ。


「今日はサクラに迷惑かけたからな……いや、これからも迷惑かけるけどさ。その埋め合わせというか、プレゼント。あー……贈り物のことな」


 そう言いつつ、義人は包みを手渡そうとする。


「そ、そんなとんでもない!? ヨシト様の手ずから何かをいただくなど!」


 するとその瞬間、サクラは慌てたように後退した。そして止めなければ平伏しそうになるのを、優希が羽交い絞めにして捕まえる。


「サクラちゃん捕まえたー」

「ナイスだ優希。よし、そのままでいてくれ」


 このままでは受け取ってくれないな、と判断した義人は、包みを解いて中から桜の花をあしらった髪飾りを取り出す。

 サクラは優希の拘束から抜け出そうとするが、まさか『強化』を使って振り解くわけにもいかない。


「い、良いですかヨシト様。主従間での贈り物にはそれなりの功績が必要で……そもそもわたしはメイドですよ!? ヨシト様手ずから何かをいただいては……」

「ふははは、良いではないか良いではないか」


 必死で言い募るサクラを気に留めず、悪代官のような台詞を吐く義人。もちろん悪代官のように不埒な真似はしない。


「ほら、動くなよー。動くとずれるからなー。あと、悪いけど少しだけ髪に触れるな?」


 一応そう言ってサクラの髪に触れ、桜の花をあしらった髪飾りを手早くつける。サクラは観念したのか、身動(みじろ)ぎもしなかった。


「よし、できた!」


 すぐに髪飾りをつけ、義人は満足そうな声を上げる。優希はすでにサクラから身を離し、正面から覗き込んだ。


「うん、可愛いねー。ほら、サクラちゃんも鏡を見てみるといいよー」


 優希の言葉に、サクラは傍にあった鏡を見る。そして自身の髪につけられた桜の髪飾りを見て、ほんの小さく、嬉しそうに笑った。


「安直だけど、サクラだけに桜の花を選んだんだ。しかし、ピッタリだったな」


 義人は満足そうに呟くと、次いで優希へと視線を移す。


「あと、優希にもプレゼント」


 こちらは慣れたように手渡し、優希も慣れたように受け取る。ただ、その表情はひどく嬉しそうだ。もしも尻尾があったのなら、千切れんばかりに振っていただろう。


「わたしにも? わぁ……何かなぁ」


 手渡された包みを丁寧に開け、中から小振りの手櫛を取り出す。


「手櫛……ありがとう、義人ちゃん!」

「さすがにヌイグルミとかはなかったからな。ま、気が向いたら使ってくれよ」

「うん! 毎日使うね!」


 嬉しそうな優希に義人も微笑む。そして背中に突き刺さる、女性店主の好奇心一杯な視線を努めて無視すると、いまだに悩んでいる志信の傍へと歩み寄った。


「どうよ? 何か良いやつ見つかったか?」

「いや、何を選べば良いのか皆目見当もつかん」


 無駄に威圧感を発揮しつつ、商品を見る志信。周りの客はそんな志信から微妙に離れている。


「プレゼントはやめとくか?」

「いや、俺もミーファやシアラには日頃世話になっているからな。何か形あるもので礼をしたい。ふむ、これはどうだろうか?」


 そう言いつつ志信は手を伸ばし、同じ作りの指輪を二つ手に取る。


「指輪、ねぇ。二人とも同じものを渡すのか?」

「駄目か?」

「いや、駄目というか……もうちょっとこう、気軽な物がいいんじゃないか?」


 ミーファは喜びそうだが。そう付け足したいのを飲み込み、義人は冷や汗を拭う。

 義人はシアラとの付き合いが浅いためあまりわからないが、ミーファならある程度は理解している。志信から指輪を贈られれば、それはさぞ喜ぶだろう。だが、もしもシアラが同じものをつけているのを目撃したらと思うと簡単には薦められない。

 昼メロよろしく、手に汗握り背中に冷や汗の愛憎劇が起こってはたまらないのだ。

 もっとも、そんなことを考える義人も割と危ない立場にいるのだが、それに本人が気づくことはない。

 結局、私服の時用に見栄えの良いネックレスを購入すると、装飾品屋を後にした。


 店の外に出るなり夕日の光が目に入り、義人は思わず目を細める。右手を上げて影を作ると、口元を小さく笑いの形に変えた。


「もう夕暮れかぁ……早いもんだ」


 こちらの世界に来て三ヶ月以上が経ったが、遊び心を持って城下町に来たのは初めてである。その分、時間が経つのは早く感じた。

 義人は暮れ行く夕陽を眺めつつ、僅かに覚えた寂寥(せきりょう)感に苦笑する。


「いや、思えばずいぶんと遠くに来たもんだなぁ……」


 遠くも何も異世界なのだが、言葉を聞いた優希や志信が何かを言うことはない。義人と同じように夕陽を眺め、そんな三人を見てサクラは顔を伏せた。


「っと、悪い。少し湿っぽくなったな」


 それに気づいた義人は、取り繕うように苦笑を笑みに切り替える。そして大げさに背伸びをすると、サクラの方へと目を向けた。


「そんじゃ、最後に酒場に寄って行くか。サクラ、場所は知ってるか?」

「あ、はい。酒場でしたらこっちです」


 時刻は九回目の鐘が鳴って少々。つまるところ午後六時を過ぎて数十分程度だ。酒場の様子を見てすぐに帰れば夕食に間に合うだろう。


「それにしても、二時間おきに鐘が鳴るっていうのはけっこう不便だな。一時間おきにその時間分鐘を鳴らすようにさせるか。十時なら鐘を十回鳴らす、みたいにさ」


 なんとはなしに呟き、歩く暇つぶしに義人が話を続ける。


「そういえば、なんで二時間おきに鐘を鳴らしてるんだ? もっとこまめに鳴らしたほうがわかりやすいだろ?」


 義人が尋ねると、サクラは僅かに首を傾げた。そして何かを思い出すように宙を仰ぎ見て、口を開く。


「これはアルフレッド様に聞いた話なのですが、八代前……四百年くらい前に召喚された王様の影響だそうです」

「八代前?」

「はい。その時召喚された王様は歴代の王の中でも抜きん出て優れていたそうです。文武両道で、召喚されたときに刀を身につけていたらしく、そのおかげでこの国の主力武器である今の刀が誕生したとか」


 サクラの言葉に志信が一つ頷く。


「ふむ、八代前ということはおよそ四百年前か。慶長(けいちょう)何年頃だろうな?」

「およそ四百年前ってところが微妙だな。関ヶ原の合戦の前後数年ってところか? というか、刀を持ってなおかつ文武両道っていうことは有能な武士でも召喚されたのかねぇ……」


 志信の言葉に答えつつ、義人は首を捻る。そんな義人達を見て、サクラは恐縮そうに肩を縮めた。


「わたしからはなんとも……アルフレッド様が詳しいですから、機会があれば聞いてみてはどうですか?」

「そうするか。まあ、今は目の前のことからだな」


 そう言って、義人は遠目に見えた建物を見据える。


「『飲み屋』、ねぇ」


 西部劇に出てくる酒場のような建物に提げられた看板。そこには達筆に『飲み屋』と書かれており、違和感があることこの上ない。


「おかしいですか?」


 げんなりとした義人の表情を見て心底不思議そうに首を傾げるサクラ。義人はパタパタと手を振り、何でもないと言葉を返して『飲み屋』へと足を踏み入れた。


 『飲み屋』に入って中を見渡してみれば、そこそこ客が入っている。客の多くは見るからに土木工事などの肉体労働者らしく、夏の日差しで小麦色に日焼けしていた。酒の入ったグラスや杯を手に持ち、今日一日の疲れを癒しているらしい。中には煙草をふかしている者もいる。

 義人達が足を踏み入れると、不躾(ぶしつけ)な視線を送って(とし)恰好(かっこう)を見て笑い出す。


「おいおい坊や達、ここは子供が来る店じゃないぞ?」


 一人の男がそんな声を上げると、他の男達も馬鹿にするように笑う。義人はまったく気にせず、店主らしき中年の男へと目を向けた。


「おっちゃん、四人ね。席は適当に座らせてもらうよ」


 そう言って義人達は近くにあった席に座る。すると、それを見た店主が口を開いた。


「注文は?」

「喉が渇いたからお茶で」

「同じく」

「わたしミルク……じゃなかった、牛乳で。あ、ミルクでも通じる?」

「わ、わたしも同じ席に座っていて良いんでしょうか……? あ、そ、その、牛乳で」


 その注文に、再び周りから笑い声が上がる。


「おいおい! 飲み屋に来て酒以外の飲み物を注文するなよ!」

「しかもお茶と牛乳とは! ハハハハハッ!」


 野次染みた笑い声を聞いた義人は、むしろ嬉しそうに笑う。


「なんというか、西部劇のお約束みたいで楽しいな」


 ちなみに、カーリア国では飲酒に関して特に法令が定められているわけではない。飲もうと思えば何歳でも飲むことができる。現に、客の中には義人達と大して歳の変わらない者もいた。

 運ばれてきた飲み物を受け取ると、それを見計らったように何人かの男達が席を立つ。そして下卑た笑みを顔に貼り付けながら義人達の方へと、正確には優希とサクラへと歩み寄った。


「お嬢ちゃん達、こんなガキと一緒にいてもつまんねーだろ? こっちに来て一緒に飲もうぜ?」

「そうそう、俺達に酌してくれよ」


 多少酔っているのか、男達の顔は赤らんでいる。


「うん、やっぱりお約束だな」


 絡んできた男達を見て、義人は小さく呟く。

 酒を飲む場所なら何か面白い話が聞けるかと思っていたのだが、酔っ払い相手では期待できない。かといって暴れるわけにもいかないため、義人達はとりあえず無視することにした。

 男達はそれから数回話しかけるが、義人達はそれに取り合わず自分達だけでのんびり話す。男達の周囲から『振られてやんの!』などの野次が飛び始めると、男達はすごすごと元の席へと戻っていった。


「ったく、あんな貧相なもやしみたいなガキのどこかいいんだか」

「言えてるぜ」


 座った男達からそんな声が聞こえてくるが、義人は怒っても仕方ないので軽く流す。志信とサクラもそれに倣い、優希は“笑顔で”聞き流す。近衛隊も数名紛れ込んでいたのだが、微妙に殺気立ってきたのを志信が手振りだけで制した。

 徐々に顔がどうだとか性格がどうだとか悪口の内容が酷くなっていくが、義人はそれを聞きながら別のことへと思考を飛ばす。


 やっぱり飲酒や喫煙に関する法律も定めないと駄目か……だけど酒や煙草は庶民の娯楽だしな。何歳を境にするか……他国の法律と照らし合わせないとな。酒税とかはどうなってたっけ? そういえばこの国の教育制度や就職はどんな仕組みだったか……うーん、けっこう見落としてるところがあるなぁ。城に帰ったら確認してきちんと決めないといけないか。


 そこまで考え、義人は我に返る。


「イカンイカン。最近どうにも思考が国のことに流れるな」


 周りに聞こえないように口に出し、義人は店主へと目を向けた。


「おっちゃん、トイレ……(かわや)借りるよ」


 ちょっと気分を切り替えよう。そう思って立ち上がった。


「ちょっとトイレ行ってくる」


 そう言い残し、義人は席を離れる。



 そして義人の姿が見えなくなって数秒後、笑顔の優希がゆっくりと立ち上がった。


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