第三十八話:カグラ先生による魔法レッスンその1
暗殺未遂事件から二週間が経ち、義人は大分落ち着いた生活を送れるようになっていた。
溜まりに溜まっていた書類の山も粗方片付け、税率の引き下げも順調である。この調子でいけば、政務をしなくても良い空き時間が少しはできるだろう。そのことに、義人は小さく息を吐いた。
「そうなったら何をしようかねぇ……志信に頼んで俺も訓練をしようか。うん、それが良いな。また同じような事態が起きたら困るし」
書類に目を通しながら、うむうむと頷く。すると、傍に立てかけておいた王剣のノーレが思念通話を繋げてくる。
『ヨシト。妾が見たところ、お主は魔法剣士の才がある。だから、剣と魔法の両方を学ぶべきじゃ』
最近では義人も多少慣れたのか、ノーレに触れていなくても一メートル以内ならば通話することが可能になった。そして何より、突然話しかけられても動じなくなったことが一番の成長かもしれない。
『魔法剣士? マジで?』
『うむ。魔力の貯蔵量も申し分ないしの。運動能力も問題ないわい。体を鍛えておいて損はないしの?』
『んー……そうだな。護身ができる程度には鍛えたほうがいいか』
ノーレに触れずに会話していると、隣で政務をしていたカグラが突然顔を上げる。そして周囲を見回すと、給仕をしていたサクラへと目を向けた。
「サクラ、先程から魔法の気配がしますけど、何か魔法を使っていますか?」
「い、いえ。わたしは何も使っていませんけど」
「そうですか。最近似たような魔力を感じることが多いのですが……」
眉を寄せ、次いで義人へと視線を投げかける。
「そういえば、ヨシト様も風の魔法を使っていましたね。何か魔法を使われているのですか?」
「え、俺? いや、俺は魔法なんて使えないんだけど」
カグラの言葉に義人は首を傾げた。すると、ノーレが感嘆したような声を漏らす。
『ほう……妾の思念通話に気づいたか。それともここ数日で魔力の波長を覚えよったか?』
『そういや忙しくてお前のことを紹介してなかったな。大分落ち着いてきたし、紹介していいよな?』
『そうじゃの。このままでは、巫女も気になって仕事が手につかんじゃろ』
ノーレの承諾を得た義人は、立てかけてあった王剣をつかむ。それを見たカグラとサクラは、何事かと小首を傾げた。
「魔法を使っていたのは俺じゃなくて、こいつなんだ」
「え?」
「へ?」
二人は義人の言葉を聞くなり、素で反応する。意味がわからないと言わんばかりの二人に、義人は苦笑した。
「だから、この王剣が魔法を使ってるんだよ。俺はただ魔力を供給しただけなんだ。名前は『風と知識の王剣』ノーレ。カグラと同じく、王を補佐するのが仕事らしい」
『初めまして、と言うべきかの。妾は『風と知識の王剣』ノーレ。お主らはヨシトと違って熟達した魔法使いのようじゃから妾の声は聞こえるであろう?』
義人に紹介されたノーレが、挨拶と言わんばかりにカグラとサクラに思念通話を繋げる。
「これは思念通話? いえ、そもそも剣が自ら魔法を使うなど……」
『なんじゃ、今の時代では珍しいのかえ?』
「珍しいもなにも、そんな存在は初めて聞きましたよ」
カグラはありえないと眉間を押さえ、サクラは驚きで硬直している。
「え? ノーレってそんなに珍しい存在なのか?」
二人の反応を見た義人は、不思議そうに尋ねた。すると、カグラはすぐさま首肯する。
「この前の『お姫様の殺人人形』のように、初めから魔法を使う可能性があることを前提に作られているのなら話は別です。しかし、『お姫様の殺人人形』ですら指示を与えなければ自ら他人の姿を真似ることはなく、ましてや動くことはありません。指示さえあれば姿を真似した本人の能力を用いることが可能でしたが、その剣のように命令もなく自発的に魔法を使う魔法具の存在は、今まで見聞きしたことがありません」
「おお、ノーレってすごい奴だったんだな」
『ふん、当たり前じゃ』
義人の賛辞にノーレは胸を張るように答えた。もちろん、胸などはないが。
そんな義人を見たカグラは、違うと言わんばかりに首を横に振った。
「すごいも何も、勝手に魔法を使う魔法具など危険すぎるので誰も生み出そうとしなかったんです。使用者の使う魔法を補佐する魔法具ならば存在します。しかし、使用者の意思を問わずに魔法を使われては魔力がいくらあっても足りません!」
「……訂正、やっぱすごくないわ」
説明を聞いた義人はすぐさま前言を撤回する。たしかに、勝手に魔力を使われてはたまらない。
そもそも義人は魔力がどれだけあるかなどわからないため、仮に九割近く魔力を消費されても気づくことはないだろう。
『戯け。思念通話程度で多くの魔力を消費するわけないじゃろ。妾自体、僅かながらも魔力を持っておるしな。この前の屋敷の門を破壊するときに使ったレベルの魔法を使うとなれば話は別じゃが』
「たしかに、あの時使った魔法はすごい威力だったもんな。あれが上級魔法ってやつか?」
『そんなわけないじゃろ。あれは中級魔法じゃ。しかも、中級は中級でも弱い部類の魔法にすぎんわ。それに、お主の魔力の変換効率が悪すぎたせいで消費魔力が普通の数倍になってしもうたしのう』
「……魔力の変換効率って?」
聞き慣れない単語に義人が首を傾げると、それを補足するようにカグラが口を開く。
「魔力の変換効率とは、どれだけ少ない魔力で効率良く魔法を使うことができるかを示す値です。少ない魔力で高威力な魔法を使うことができれば様々な面で有利ですよね?」
「そうだな。反対に、魔力を多く使っても威力が低い魔法しか使えないなら魔力の無駄遣いだしな」
『この前のお主と同じじゃな。あの時、もっと効率良く魔力を使っておったらあれほど疲労することもなかったじゃろ』
「むむ……その魔力の変換効率って、どうやったら良くなるんだ?」
義人は眉を寄せる。元の世界にないものについては、さすがに考えてもわからない。推察することはできるが、それで妙な先入観を持つのは危険だろう。
「魔法は感覚で編むものですから、魔法を使うことに慣れるのが一番早い道ですね。そもそも、どうやって魔法を使うかご存知ですか?」
「いや、わからん」
カグラの問いにすぐさま首を横に振る。義人の知っている魔法など、マジックポイントを消費したら魔法を発動できるゲームの知識程度のものだ。さすがに陰陽術や黒魔術などを詳しく知っているはずもない。
「慣れない人が魔法を使うには、使いたい魔法を頭の中で強く思い描く必要があります。例えば、頭の中で燃え盛る炎を思い浮かべて魔力を体の外へと放出します」
カグラは右手の人差し指の先に小さな炎を灯す。
「魔法の才能がある人の場合は魔力を外に放出する際、魔力が頭で思い描いた形になりやすいんです。魔法が使えない人は、魔力がないか魔力を持っていても操作して外に出せない人ですね」
次いで、カグラは左手の人差し指の先に小さな氷を生み出す。
「慣れれば、このように簡単に魔法を使うこともできるようになります。もっとも、魔法使いには使える魔法の相性があるので、大抵は一種類の魔法しか使えません。ミーファちゃんだったら炎の魔法。サクラだったら氷の魔法というように、それぞれ得意な魔法や使えない魔法があります。中にはわたしのように、複数の種類の魔法を使う者もいますが、これは稀です」
指先の魔法を消したカグラに、義人は学校でするように片手を挙げる。
「はい、カグラ先生。質問です!」
「なんでしょう、ヨシト君」
答えるカグラもノリノリだ。
「ミーファは『強化』も使ってるけど、あれも魔法だろ? 炎の魔法しか使えないのなら、『強化』は使えないんじゃないか?」
疑問を尋ねると、カグラは出来の良い生徒を喜ぶかのように微笑む。
「良い質問です。ミーファちゃんが炎の魔法を使う時は、魔力を外へと放出します。しかし、身体強化系の魔法を使う場合は逆に体の内側へと魔力を作用させるので、得手不得手はありません。あ、ちなみに『強化』は他人の身体能力を向上させる場合は中級魔法で、自分自身の身体能力を向上させる場合は下級魔法……いえ、言わば最下級魔法になります」
「最下級魔法って……一番低いのか?」
「はい。自身の身体能力を上げる『強化』は、魔法剣士や魔法使いにとってなくてはならない魔法です。魔法を学ばない、魔力があるだけの一般人でもたまに使える者がいるぐらい難易度が低い魔法です。体中を魔力で満たせば『強化』を発動できるので、魔力を操る練習には最適ですね」
政務を進めていた手が止まっているが、今は急ぎで片付ける仕事もない。義人は手に持った書類をひとまず机に置くと、サクラが淹れてくれたお茶に口をつけた。
「なるほど。魔力を持ち、なおかつ操作できれば魔法使い。魔力がないか、操作できなければ一般人ってことか」
「そうです。先天的に魔力を持って生まれてくるのは女性の方が多く、割合は七対三ぐらいです。魔力量に男女の差はなく、遺伝によって決まります。時折突発的に高い魔力を持つ子供が生まれることもありますが、それはかなり稀ですね。両親が魔力を持っていれば子供も魔力を持つ場合が多く、その逆もまた然り(しかり)です。魔力の操作力、魔力回復量、変換効率は生後の訓練次第です。才能による差はありますが、肝心なのは慣れですね」
サクラがカグラにもお茶を淹れ、カグラも口をつける。
「身体能力の向上は最低限にして魔法攻撃に重きをおくか、それとも自分の身体能力を上げ、魔法と共に武器を手にして戦うか。それが魔法使いと魔法剣士の差です。魔法剣士は魔法戦士と言い換えてもいいかもしれません」
「わざわざ分けなくても、身体能力を思いっきり向上させつつ武器を使い、なおかつ強力な魔法を使えばいいじゃないか。そっちのほうが強いだろ?」
義人は気になったことを尋ねてみる。すると、カグラは困ったように苦笑した。
「それができれば一番ですが、それをすると大抵の人間がすぐに魔力切れになってしまいます。それに、常に体中に魔力を行き渡らせるだけでも集中力がいります。その上で剣を振るうか、それとも魔法を使うか分けるだけでも大変なんです。自身に『強化』をかけ、剣を振るいつつ魔法を使うなんて、この国ではミーファちゃんの他には数名しかできません」
「ふーん……魔法って大変なんだな。その魔力量っていうのは、一般の魔法使いや魔法剣士だとどれくらいあるんだ?」
「ヨシト様が他人の魔力を感じ取れればわかるんですが……サクラ、『魔計石』を持ってきてください」
「はい」
カグラの指示に、サクラが執務室から足早に走り去る。その背中を見送った義人は、更なる聞き慣れない単語に首をかしげた。
「『魔計石』ってなんだ?」
「『魔計石』とは、その名の通り魔力を測る石です。石を持てば、その持ち主の魔力量に応じて色を変える魔法具です。最初は透明ですが、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤と魔力量に応じて色が変化します。おおよその魔力量しか測れませんが、魔力を隠していても計ることができるので便利ですよ」
「虹の七色か。赤が一番上なのか?」
「はい。赤の上はありません。もしもそれ以上の魔力量だったら、石が割れちゃうんです」
「へぇ、ちなみにカグラはどうだったんだ?」
興味本位で尋ねてみる。するとカグラは少し目を細めて小さく笑った。
「魔力が完全に回復してれば簡単に割れますよ? 今は魔力が減っているので、黄色くらいだと思います」
「うん、聞いといてなんだが、それがどれぐらいなのかまったくわからん」
「紫色なら普通の魔法使い一人分で、それ以降は二倍の魔力量が必要になってきます。まあ、およそ十六人分といったところでしょうか」
「……本来のカグラの魔力量が気になるな。黄色で十六人、橙で三十二人、赤だと六十四人分か。それを簡単に超えるってことは……百人分ぐらい?」
適当に計算して尋ねてみるが、カグラは首を横に振る。
「わたし自身、正確にはわかりません。ですが、そのくらいはあるでしょう」
そう言って、カグラはどこか寂しそうに笑う。悲しみとも思えるその表情に、義人は眉を寄せた。思わず理由を問おうと口を開き、それを遮るように執務室の扉が開く。
「カグラ様、『魔計石』をお持ちしま……あわわっ!」
そして、余程急いできたのかサクラが絨毯に足を引っ掛けて前のめりに転んだ。両手に持っていた『魔計石』はその勢いで宙を飛び、義人の元へと飛来する。
「よっと。サクラ、そんなに慌てなくても良いんだぞ?」
飛んできた『魔計石』をキャッチして、義人は苦笑した。
「ううう……すみません」
転んだのが恥ずかしかったのか、サクラは顔を赤くして立ち上がる。カグラもそれを見て笑っており、その表情に先程の寂しそうな色はない。
勘違い、だったか?
改めて問うには場の空気が明るい。そう判断した義人は、ひとまずカグラの態度を記憶に焼き付けて話を逸らすことにした。
「これが『魔計石』か……って、透明じゃないぞ?」
改めて『魔計石』を覗き込んだ義人は首を捻る。『魔計石』は濃い緑色になっており、とても透明とは言えなかった。それを見たカグラは興味深そうに『魔計石』を見る。
「濃い緑色……どうやらヨシト様は十人分並の魔力をお持ちのようですね。魔力量だけでいうなら、サクラと同等かと」
「十人分か。これって多いのか?」
「多いですね。魔法隊の隊長であるシアラ=テンシアもそれぐらいですし。鍛えていない状態でそれだけあれば、もっと上を目指せると思います」
カグラの言葉に、義人は自分の体を見下ろす。
魔力と言われても実感などない。悩むように首を捻っていると、それまで説明を聞いていた王剣のノーレが話しかけてくる。
『ヨシトの特性は魔力量ではない。魔力回復量が並外れて高くなっておる。そこの巫女を遥かに上回る程度にな』
「え、本当か?」
『うむ。この間、門を破壊するときに一気に半分くらい魔力を使ったじゃろ? 翌日にはすでに回復しておったからな。大した回復量じゃ』
何故か誇らしげなノーレの言葉を聞いたカグラとサクラは、驚愕したように義人を見る。
「カグラ様の魔力回復量でさえ、三日で一人分ぐらいなのに……」
「わたしの十倍以上ありますね」
眉を寄せ、二人して義人を頭の先からつま先まで見ていく。
「あれじゃないか? 魔法ってイメージ……想像することが大事なんだろ? 俺の世界では、魔力は一晩で回復するのが当たり前だった。だから、俺も一晩で魔力を回復したとか」
考えを述べるが、義人の言う魔力とはあくまでもゲームの話である。宿に泊まる。アイテムを使う。そうすれば魔力が回復すると思っていた。
『ふむ、あながち間違いとは言えんかもしれんな。そもそも世界が違うんじゃ。こちらの常識に当てはめることはできんじゃろ』
「俺の世界の常識が、こっちの世界で当てはまらないようにか?」
ノーレの言葉に義人は納得してみせるが、カグラとサクラはいまいち納得していないようだ。
いくらカーリア国の魔力回復設備が劣悪とはいえ、カグラは魔力回復量においても高いレベルである。
彼女達にしてみれば、魔力は回復しにくいものでしかない。戦時の際は、いかに早く魔力を回復するかが鍵となるくらいだ。
ちなみに魔力回復施設とは、様々な設備によって人工的に魔力を濃くされた空間のことだ。施設にいれば、通常よりも遥かに多くの魔力を回復することができる。
設備が良ければ魔力がもっと濃いのだが、カーリア国の設備ではそこまでの効果は望めない。
カグラとサクラはなんとか納得したのか、表情を和らげて口を開く。
「こうなったら、ヨシト様も本格的に魔法を学ぶべきですね。いえ、本格的ではないにしても、魔力の扱い方は学ぶべきです」
「そ、そうですよヨシト様。わたし達がお守りしますが、もしものときに魔法が使えるのと使えないのでは全然違いますし!」
魔法を薦める二人に、義人はしばし考え込む。たしかに政務も大分落ち着いてきたし、護身のために何かしようと思っていたのも事実だ。
「魔法を学ぶって、どうすればいいんだ? なんか言葉を詠唱したりすればいいのか?」
「魔法はわたしが教えましょう。それと、詠唱は魔力が足りないか、自分の苦手な魔法を使う時、自分の実力よりも上の魔法を使うときに用いるものです。詠唱することにより、精霊や大地、世界などに働きかけます。ですがヨシト様は魔力もたくさんありますし、詠唱は必要ないでしょう。まずは、魔力を操る感覚を覚えることから始めることになると思います」
「詠唱はしないのか……格好良さそうなのに」
魔法を唱えるのは格好良いと思ったのだが、この世界では違うらしい。義人の不満そうな声に、カグラはたしなめるように微笑んだ。
「ヨシト様、仮に魔法が詠唱をしなければ絶対に発動できないものだとしたら、どうなると思いますか? 今の世の中ほど、魔法に有利性があると思いますか?」
「んー、そういえばそうだよな。俺なら詠唱をさせないと思うし、有利性はかなりなくなるよな」
志信だったら、迷わず喉を潰しにいくだろう。そうして魔法さえ使えなければ、魔法使いとてただの人間にすぎない。
「その通りです。昔は詠唱をしていたこともあったらしいですが、現在では滅多なことでは詠唱はしません。わたしがヨシト様達を召喚するために使った『祝詞』や、召喚を成功させる補助として焚いた『護摩木』のように、補助的な意味合いが強いんです」
祝詞とは神に祈りを捧げて願い事の成就を願うものであり、護摩木とは願い事を書く札のことだ。
「詠唱や道具は補助か。そういえばカグラは『召喚の巫女』って言ってたけど、巫女って神様に仕える女性のことだよな。この世界って神様もいるのか?」
「いることはいると思いますが、このカーリア国の場合意味合いが違うんです。昔は召喚された王のことを神と崇めていたため、その王を召喚して仕える女性を『召喚の巫女』と呼んでいました。今ではさすがに神として崇める風潮は薄れましたが、その当時の流れを汲んで『召喚の巫女』と呼ばれています」
「へぇ……本当に変な国なんだな」
今ではその国の王は自分だが、義人はそれを脇に置いておく。そして残っていたお茶を飲み干すと、一つ息を吐いた。
「もう少ししたら政務も落ち着くだろうし、時間ができたら魔法を学んでみるかな」
元の世界で魔法を学ぶことなどできない。だが、子供の頃に思い描いた夢のような出来事が目の前に転がっているならば、義人は迷わずそれに飛びつく。
「そうですね。税率の引き下げも大分進みましたし、もう少ししたら空き時間もできてくるでしょう」
義人の言葉にカグラが頷く。魔法を教えることが楽しみなのか、その表情は少々嬉しそうだ。
「ああ。それじゃあ、その時はよろしく頼むよ」
そう言って、義人は再び政務に戻ることにする。
カグラの楽しそうな笑顔の意味が少しだけ気になったが、それを聞くことはなかった。