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異世界の王様  作者: 池崎数也
最終章
173/191

第百七十話:密談

 義人が召喚国主制の廃止を提案して一週間。その間、義人は努めてそれまでと同様に過ごしていた。

 いつも通り政務をこなし、いつも通り臣下と接し、いつも通りの日々を過ごす。そんな 義人の行動もあり、義人の周囲は一見して何も変わっていないように見えた。しかし、城の中の雰囲気はどことなく落ち着きがなく、文官同士で声を潜めて話し合っている姿も見られる。

 召喚国主制の廃止を提案した際に固く口止めをしたわけではないため、誰かが部下に話したのだろう。それはそれで問題だが、義人としては予想していたことなので咎めることはしない。

 義人は執務室で机に積まれた書類に目を通しつつ、一週間前の会議以来、護衛として傍にいることが多くなった志信へと話を振る。


「それで志信、“外”への防諜の方はどうだ?」


 現在、執務室の中にいるのは志信とサクラのみ。義人にとって志信は無条件で信頼しており、サクラについても、今では“信頼”を寄せている。そのため、義人としては気兼ねなく尋ねることができた。

 話を振られた志信は顎に手を当てると、僅かに考えてから口を開く。

 義人が言う“外”とは、単に城の外だけを指すのではない。城下町や国内、そして、それを超えて国外を範囲に含んでの問いだった。


「今のところは“外には”漏れていないと思う。文官達も城外では口外していないようだ。しかし、防諜に使える人間が限られているからな。遠からず、民と言わずこの国に潜り込んでいる他国の間諜にも漏れるだろう」

「そっか。サクラは? 他の使用人達の間で、召喚国主制に関する話は出てないか?」


 志信同様の護衛と、義人の世話を兼ねて控えていたサクラに話を振る。すると、サクラは小さく首を横に振った。


「わたしの周囲でそういった話は聞こえてきません。ただ、文官の方々の間ではだいぶ話が広がっているようです」


 サクラの回答に、義人はふむと頷く。書類に通していた目を止めると、視線を宙に向けた。


「……カグラは?」

「カグラ様についても、目立った動きはないです。いつもと変わらない様子で政務を行われています」


 その言葉に、義人は思考を巡らせる。あの場で反対した割に、カグラが動く様子はない。

 それとも自分が気付かない内に動いているのか、と義人は考え、頭を振った。“今の”カグラは、行動が読めない。今後のことを考えると、先に手を打つ必要があるだろう。

 カグラを味方に引き込めば、それだけで多くの問題が片付く。しかし、カグラを味方に引き込めなければ、義人が描く未来図を大幅に修正する必要があった。



 ――さて、どうするか……。



 内心で呟き、義人はカグラが今後も強硬に反対した場合の展望を想像する。『召喚の巫女』が反対に回れば、それに同調する者も出てくるだろう。もっとも、そのカグラを早急に抑えるための方法があれば大きな問題にはならないのだが。



 ――その“方法”が、あるといえばあるんだがなぁ……。



 外道な手段を取れば、カグラを無力化することも容易い。直接戦闘で敵う者はカーリア国にほとんどいないが、いくらカグラといえど人間だ。食事になにかしらの毒物や薬物を混ぜれば、それで片がつく。あるいは、カグラが持つ義人自身への感情を利用しても良いだろう。


「……いやいや、待て待て」


 知らず思考が物騒な方向へと進んだことに気付き、義人は意識して苦笑する。“ソレ”をやっては、意味がないのだ。義人が思い描く展望の中に、それらの手段は必要ではない。

 深呼吸を一つして、義人は意識を切り替える。

 義人の様子を心配げな表情で見ていたサクラに視線を向けると、気軽な様子で口を開いた。


「ま、サクラは怪しまれない程度に情報を集めてくれ。カグラが何かをするようだったら、それについても報告を頼むよ」

「承知しました」


 椅子に背を預けて、義人は疲れた頭を休めるように目を閉じる。

 召喚国主制の廃止について提案したが、義人自身すべてが上手く片付くとは思っていない。現状に満足する者もいれば、現状に不満を持っている者もいるだろう。前者は事態を静観するかもしれないが、後者は機に乗じて何かしらの動きを見せる可能性が高い。


「義人、城下町の方まで話が広がったらどうする?」


 思考に耽る義人へ、志信が今後の展望について尋ねる。義人は目を開くと、志信へ視線を向けた。


「その辺については、ゴルゾーに頼むよ。あいつのことだ、一番に話を聞きつけて、俺のところに来るだろうさ。あとは、適当な噂を流してもらって、時間を稼ぐ……が、隠し通すのは無理だな。それに、いずれは国民にもきちんとした形で話をする必要がある」


 そう言いつつ、義人は己が成そうとしていることの難しさを噛み締める。

 八百年という長い、否、長すぎるとすら形容できる時間、カーリア国を支えてきた『召喚国主制』。それを、取りやめようというのだ。国民は動揺し、混乱し、下手をすればカーリア国自体が瓦解しかねない。しかし、それでも義人は『召喚国主制』の廃止を決めた。

 これから先、“元の世界”から召喚される人間がいなくなるように。そして―――。


「……誰だ?」


 不意に、志信が扉へと鋭い視線を向ける。その隣では同じようにサクラが扉へ視線を向け、僅かに重心を落とした。そんな二人の様子に遅れて、扉がノックされる。


「おいおい、二人とも目が怖いぞ。文官とかだったら、腰を抜かすってば」

「……いや、すまん」

「……すいません」


 義人が声をかけると、志信とサクラは僅かに気を抜く。その様子を見てから、義人は扉に向かって入室の許可を出した。


「失礼します……と、お取込み中でしたか?」


 入室するなり執務室にいた志信を見て、財務大臣のロッサは首を傾げる。義人は苦笑しながら首を横に振ると、続いて志信へと視線を向けた。その視線を受けた志信は、義人とサクラの両者へと視線を向ける。


「見張りの兵士には近衛隊の者を置いておく。サクラ、何かあった時は義人を頼む」

「身命にかけて」


 その会話を最後に、志信は執務室を退室していった。おそらくは、残りの近衛隊の指導や防諜にとりかかるのだろう。

 サクラと物騒なやり取りをして退室した志信を引きつった笑顔で見送ったロッサは、強張った笑みを義人へと向けた。


「ま、まるでこれから戦にでも赴くかのようでしたな、はは……」

「この前の会議以来、あんな感じだよ。で、ロッサは何の用だ?」


 義人がそう言うと、ロッサは手に持った報告資料を義人へと差し出す。義人はそれを受け取ると、内容を確認しながら口を開いた。


「ところで、ロッサは召喚国主制の廃止についてどう思う?」


 深い意味はないとアピールするように、気軽な感じで義人は尋ねる。ロッサはそんな義人を意図を汲むと、僅かに考えてから口を開いた。


「そう、ですね……なにせ、長きに渡って続いてきた風習ですから。簡単に納得できる者は少ないかと」

「ま、そうだよな」

「ですが、ヨシト王の持ち込まれた“げえむ”……あれを見れば、“向こうの世界”と“こちらの世界”の技術力が隔絶していることもわかります。ヨシト王の仰る通り、『召喚国主制』を廃止しても仕方がないことかと」

「……そうか」


 ロッサの言葉に、義人は小さく頷く。全員がロッサのように考えてくれれば説得も楽だろうが、そうもいかない。やはり難しいなと義人が頭を悩ませていると、そんな義人を見たロッサは真摯な表情で口を開いた。


「しかし、私は“ヨシト王”の臣下です。叶うのならば、『召喚国主制』を廃止した後もヨシト王の臣下として働きたいと思っています」


 まるで宣誓するかのような声色でそう言ったロッサを前に、義人は数度目を瞬かせる。そしてロッサの発言を飲み込むと、今度は自然と笑っていた。


「そう言ってくれるのは嬉しいよ、ロッサ。でも、こればっかりはなぁ……俺が絶対国王になる、とは言えないんだ」

「絶対に、ですか?」

「……ロッサを信頼して言うけど、半々ってところだよ。上手くまとまるのなら、俺が国王を務めるのもやぶさかじゃない……が、それはもっと様子を見てからかな。魔物であることを除けばアルフレッド、それ以外ならカグラ。あとはドングリの背比べだ」


 例外を挙げるとすれば、と義人は無言で傍らに置いてある刀へ視線を向ける。急ごしらえだが、専用の鞘に身を納めたノーレ。彼女も、ある意味ではカーリア国で王座に就くだけの能力がある―――残念なことに、体がないが。

 義人が絶対に王座を継がないというわけではないとわかり、ロッサは僅かに安堵する。そして、安堵の次は確認することがあると言わんばかりに懸念事項を口にした。


「しかし、悠長に動いていては他国の介入もあるのでは?」

「たしかに、その危険性はある。しかし、周辺国の状態を見ると、今のタイミング……時期を逃すと後がないからな」


 ロッサにそう言いながら、義人は近隣諸国の情勢を頭に思い浮かべる。

 現状、カーリア国と接しているレンシア国とハクロア国は、互いに睨み合って動けないでいる。ここ数年に渡って繰り広げられていた領土争いも小康状態になっていたが、停戦や和睦をしたわけではない。隙があれば容赦なく食らいつくような、緊迫した情勢だった。

 そんな中でカーリア国が付け入る隙を見せても、それを機と見て手を出せば、レンシア国もハクロア国も互いに致命的な隙を晒すことになるだろう。故に、カーリア国に手を出すのは難しい。もっとも、兵を挙げて攻めなくとも、水面下で手を打つことは可能であるし、可能性の低い話ではあるが、レンシア国とハクロア国が手を結んでカーリア国を攻める可能性もあった。もっとも、義人はレンシア国とハクロア国が手を結ぶ可能性はないと見ていたが。

 そして、その二国以外にカーリア国に手を出せる国はなかった。レンシア国やハクロア国の周囲にもいくつかの小国があるが、位置的にも遠く、それらに比べればカーリア国の方が国力は上である。『召喚の巫女』のように周辺国に名が通った存在もおらず、迂闊に手を出すとは思えなかった。

 義人は、今を逃すとカーリア国を立て直す―――“建て替える”時間がなくなると思っている。それ故に、巧遅ではなく拙速を。穴だらけで根回しも不十分だが、『召喚国主制』の廃止に打って出た。


「そんなわけで、今しかないんだ。ロッサも俺を支持してくれるのは嬉しいけど、間違って泥船に乗らないようにな」


 言いつつ、義人は王印をロッサが持ってきた報告資料に捺す。


「ええ、心得ています」


 義人の言葉に苦笑し、報告資料を受け取ったロッサは退室していく。そんなロッサを見送ると、義人は軽く体を伸ばして椅子に背を預けた。そして、ポツリと呟く。


「本来なら、こういう時にこそカグラに相談したかったんだがな……」

「ヨシト様……」


 義人の言葉を聞いて、サクラが気遣わしげな視線を向けた。義人はその視線を受けると、なんでもないと手を振る。

 そんな義人に何か声をかけようとしたサクラだったが、執務室の外に護衛の兵士以外の気配を感じて口を閉ざす。そして扉へと向き直ると、僅かに体を緊張させた。


「サクラ?」

「大きい魔力です。ユキ様かコユキ様か……あるいは、カグラ様かと」

「……いや、さっきの志信といい、臨戦態勢だなぁ」


 護衛としては心強いが、白昼堂々暴挙に打って出る者がカーリア城の中にいるとは考えにくい。義人が楽天的なのか、それとも志信とサクラが慎重なのか。義人はカグラや臣下の人柄を信じ、志信とサクラは“あの夜”に対峙したカグラの様子から警戒を覚える。今のカグラはまさしく憑き物が落ちたように落ち着いているが、警戒をして過ぎることはないのだ。

 そうやってサクラが警戒している中で扉が開き―――入ってきたのは、優希だった。その後ろには小雪の姿もある。


「お疲れ様、義人ちゃん。お昼ご飯を持ってきたよ」


 そう言って、優希は右手に乗せたトレーを掲げて見せた。トレーの上にはサンドイッチを乗せた皿とジュースを注いだグラス、そしておしぼりが乗っており、義人は首を傾げる。


「優希? 昼ご飯って……今日は何かあったっけ?」


 食堂で義人と一緒に食事を取ることはあっても、“こちらの世界”に来てから優希自身が料理を振る舞う機会は少ない。それを不思議に思っての義人の言葉だったが、それを聞いた優希は小さく首を振った。


「ううん、何もないよ。でも、たまには義人ちゃんに手作りの料理を食べてほしくて……」


 僅かに頬を染め、胸の前で指を絡めながら優希がそう言う。それを聞いた義人は、思わず笑みを浮かべてしまった。


「本当か? はっはっは、いやぁ、嬉しいなぁ」


 気恥ずかしさを誤魔化すように笑いながら、義人は頭を掻く。幼い頃から食べ慣れているとはいえ、“彼女”の手作り料理だ。喜ばない道理はない。今回は手軽さを重視してサンドイッチを作ったようだが、それでも嬉しさに変わりはなかった。

 そうやって喜ぶ義人を見て、優希もまた喜ぶ。優希としては三食とも義人のために料理を作っても良いのだが、それでは料理人の仕事を奪うことになる。そのため、“こちらの世界”に来てからはなるべく料理人の仕事を取るような真似は控えていた。

 義人は仕事の手を止めると、優希からおしぼりを受け取って手を拭く。そして両手を合わせると、机の上に置かれたサンドイッチに視線を向けた。


「いただきます……で、本当のところは?」


 サンドイッチに手を伸ばしつつ、優希に尋ねる。すると、優希は苦笑しながら口を開いた。


「彼女だもん。義人ちゃんにご飯を作ってあげたかったのは本当だよ? でも、そろそろ警戒した方が良いかなぁって」


 その言葉に、義人はサンドイッチに伸ばした手を止める。


「……厨房も危ないか?」

「んー……コックさんとか、メイドさんは大丈夫かな? でも、絶対に安全じゃないよ」


 優希の発言に、義人は頭を抱えた。優希の発言の裏を考えると、下手をすれば義人自身が自分で想像した“外道な手段”を味わう羽目になりかねないことを意味する。


「忠告してくれてありがとう……と、小雪?」


 そういえば小雪が静かだなと不思議に思った義人が視線を向けると、それを待っていたかのように小雪が両手を突き出した。


「みて、おとーさん! これ、こゆきがつくったんだよ!」


 喜色満面といった風情で小さなトレーを差し出す小雪。その発言から優希だけでなく、小雪も何かしらの料理を作ってきてくれたのだと察した義人は表情を綻ばせた。


「お、どれどれ……うっ!?」


 トレーに視線を向け、思わず、義人は絶句した。小雪が手に持ったトレーに乗った皿には、おにぎり“らしき”何かと、魚“らしき”ものを焼いた何か、そして卵料理“らしき”何かが乗っていた。

 小雪が手ずから握ったらしきおにぎり。それは“まだ”良い。形が不揃い―――というよりも、間違って強力なプレス機に白米を乗せ、力の限り圧縮した挙句、圧縮してできた米の板を適当に組み立て、空洞に白米を入れて更に圧縮しました、と言わんばかりに三角錐の形状を保っているおにぎりだ。だが、“まだ”良い。

 義人は同じ皿に盛られた、“元は”魚らしき物体へ視線を向ける。

 焼いたのか、煮たのか、揚げたのかすらわからない。謎の調理技法を駆使し、その身を真っ黒にされ、輪郭から元は魚だろうとしか判断できない、不思議な物体が鎮座している。

 続いて、義人は卵料理らしきものへと視線を向ける。

 ほぼ炭化し、僅かに見える黄色が、それが元は卵だったのだと悟らせる。おそらくは卵焼き、あるいはスクランブルエッグを作ろうとしたのか、と義人はどこか諦観染みた心持ちで思考する。

 無言で、義人は優希を見た。優希はそんな義人の視線を受けると、苦笑しながら頷く。


「わたしがサンドイッチを作っているのを見て、小雪も作り始めちゃって」


 小雪の自主性に任せたのだろう。そして、その結果が今、目の前にある。


「そ、そうか……」


 動揺したように義人は視線を逸らし、同じように小雪の作った料理を見たサクラと視線がぶつかる。サクラは何かの言葉を言おうとして、それを飲み込む。そしてぎこちなく微笑んだ。


「……胃の薬を用意しておきますね」

「……悩んだのはわかるけど、その反応はどうかと思うんだ」


 絞り出すようにして義人が言うと、傍らの刀がカタカタと震える。


『ふふ、男冥利に尽きるではないか。いや、この場合は“父”冥利かのう?』

「……食べたいなら、一緒に食べても良いんだぞ?」

『いや、妾は物を食べられぬ。それに、娘が父親のために一生懸命作ったであろう料理を共に食べるような無粋な真似はできぬよ』


 からかうようなノーレの言葉に、義人は内心で『このやろう』と毒づく。しかし瞳を期待に輝かせる小雪を目の前にしては、戸惑うような素振りも見せられなかった。


「……いただきます」


 義人に言えたのは、それだけだった。








 義人が引きつった笑顔を浮かべながら小雪の料理に舌鼓を打ち、サクラが胃薬を求めて城の中を走る中。

 城中の一角にある小部屋で、数人の文官が顔を突き合わせていた。


「……それで、どうする?」

「どうすると言っても……お前は?」


 それぞれがお互いの顔色を窺うように、密やかな声を交わし合う。


「召喚国主制を廃止すると言われてもな……武官の方はどうなっているんだ?」

「隊長の中には、ヨシト王の提案に賛成する者がいる。といっても、まだ立場を表明していない者も多いがな」


 周囲に人がいないことを確認しながら話し合い、文官達は互いの立場を検討していく。


「カグラ様が反対しているが、どうなるか……」

「しかし、もしもカグラ様がヨシト王を抑え込めば、ヨシト王の側についた者達の立場は危うくなるだろう。そうなれば……」


 一人の文官がそう言うと、他の文官の表情が僅かに変わる。

 高官の中には義人側に立つことを表明している者もいるが、その数は多くはない。多くが様子見であり、明確に反対しているのはカグラぐらいだ。しかし、『召喚の巫女』であるカグラが反対しているというのは大きい。

 今回の件を上手く利用すれば、自分達はもっと上の立場になれるのではないか。そんな欲が、彼らに立場の表明を迫る。勝ちが決まってから立場を表明するよりも、早い段階で立場を表明した方が後々の影響力も大きい。

 義人は能力に応じた仕事を振るようにしており、そうなると、能力の低い者は相応の地位にしか登れないのだ。そして、義人は横領などの不正を極力潰している。真面目に働く以外で余分に懐を潤すためには、手段が限られていた。



「―――面白い話をしていますね」



 そうやって文官達が密談をする中で、不意に少女の声が響く。その声を聞いた文官達は身を震わせると、慌てて声のする方へと振り返った。


「カ、グラ……様……」


 そして、いつの間に部屋に入り込んだのか、話の中心にもなっていたカグラと目が合う。




 そのカグラの口元は、僅かに笑みの形を描いていた。


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