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異世界の王様  作者: 池崎数也
第五章
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閑話:五章之一 とある少女たちの感情

 カーリア国では数少ない、国民の休日である元旦。本日ばかりは臣民問わずに仕事を休み、新年を祝って過ごす。もちろん、国境やカーリア城の警備などの最低限必要な人間は除いてであるが。

 カーリア国の中枢たるカーリア城の城下町でも、町中が新年を祝う明るい雰囲気が満ちていた。旅の楽士が楽器を吹き鳴らし、道に並んだ露店で店主が声を張り上げる。道行く人々はそんな雰囲気に酔いしれ、去年を無事に過ごせたこと、そして今年一年が幸多い年であることを祈る。


「…………」


 そんな雰囲気の中、魔法隊の隊長であるシアラは無言のままに歩を進めていた。つばの広い三角帽子に、魔法隊で着用している紺色のローブ。そして一メートルほどの木製の杖を片手に歩きつつ、周囲の様子に茫洋とした視線を向けた。

 国王である義人が姿を消したことを、城下町の人間は“まだ”知らない。人の口に戸が立てられない以上、いずれは知ることになるだろう。しかし現状では城の人間しか国王失踪の事実を知らず、民は皆笑顔で新年を祝っていた。

 帽子のつばを手で押さえつつ、シアラは今後のことについて意識を傾ける。

 他国の間諜に国王失踪の事態が知られるまで、あと幾日ほどあるか。いや、もうすでにその情報は他国に渡っている可能性もある。そうなると、他国がどんな対応を取るか。

 シアラはそんなことを考えながら、器用に人波を避けて歩く。向かっている先は母親が住む実家で、目的は新年の挨拶である。

 実家への道を歩きながら軽く考えを巡らせてみたものの、シアラに何かしらの案が浮かぶわけでもなかった。そもそも、外交や他国からの干渉などについて考えるのはシアラの仕事ではない。カグラやアルフレッド、それに文官達が対応するだろう。

 シアラに求められるのはその後の対応……他国から手を出された際に、火の粉を払うのが仕事だ。

 新年早々物騒な考えが頭を掠めるが、可能性としては決して低くない。特に、ハクロア国のように好戦的な国も傍にいる。

 もしも他国と争うことになったら。

 その仮定を考え、シアラは僅かに歩調を緩めた。そうなれば、国王代理である志信のもとで戦うことになるだろうか。それとも、カグラを先頭にして戦うことになるだろうか。

 そうして無言のままで歩くこと五分少々、シアラは実家の前へとたどり着いた。カーリア城からは徒歩十分程度の、他の家と比べると多少大きな我が家。現在、シアラの母が一人で住む家である。シアラも暇があれば帰るようにしているが、それでも大半は城の外に造られた魔力回復施設で過ごしていたため、帰るのは二週間ぶりだった。

 新年早々、考えるには気が重くなることを思い浮かべていた頭をすぐに切り替えると、シアラは木で造られた扉を開けて家の中へと入っていく。

 生まれ育った我が家に知らず安堵したのか、シアラは静かに大きな息を吐いて食事を取る部屋へと足を向けた。すると、扉の音で気づいたのか一人の女性が顔を覗かせる。肩口まで伸びた髪は茶色ながらも、シアラによく似た顔立ちの女性だった。


「あら、シアラ?」

「……ただいま」


 シアラは顔を覗かせた女性……自身の母親に対して帰宅の挨拶を述べる。すると、シアラの母は表情を柔和なものへと変えた。


「おかえりなさい。ご飯にする?」

「……ん」


 小さく頷き、シアラは食事を取るための部屋へと足を踏み入れる。そして適当に杖を立て掛け、頭に被った三角帽子をテーブルの上に置くと、傍の椅子へと腰を下ろした。


「今年は元旦の警備の担当じゃないのね?」

「……今年は第一魔法剣士隊が担当してる」


 母の質問に、シアラはミーファが隊長を務める第一魔法剣士隊を思い浮かべる。元旦にカーリア城の警備を行う部隊は、毎年交代で変わっていく。去年は魔法隊が担当をしていたが、今年は第一魔法剣士隊が警備を務めていた。

 もっとも、警備といっても魔法剣士隊全員が担当しているわけではなく、隊長と必要な人員が配置されているだけではあるのだが。

 そうやって適当に会話を交わしていると、シアラの母がテーブルの上に料理を並べていく。そして皿を並べ終わると、互いに頭を下げた。


「明けましておめでとう」

「……おめでとう」


 言葉を交わし合い、シアラはテーブルに並んだ料理へ手を伸ばそうとする。すると、それを遮るようにシアラの母が口を開いた。


「新しい年になったわけだけど、そろそろ婿でも取る気になった?」

「…………」


 いきなり何を言い出すのだろうか、という意味を込めてシアラは冷たい視線を自身の母へと向ける。その視線を受けたシアラの母は、まるで気にせず笑い飛ばした。


「ほら、あなたもいい歳だし、そろそろ恋人の一人や二人……ねえ?」


 何が『ねえ?』なのかわからなかったシアラは、無言でテーブルに並んだ食事へ手を伸ばす。

 カーリア国における女性の結婚の適齢期は十代後半までである。正確には十五歳から十九歳に結婚する女性が多く、シアラは現在十六歳。適齢期の真っただ中であり、彼女が隊長を務める魔法隊でも同年代前後の女性隊士が結婚を機に脱退することもある。

 もしも義人がこの場にいたならば、『早いよ』と笑い飛ばしただろう。しかし、義人が住んでいた世界でも昔の時代では珍しいことでもない。

 興味なさげに料理を食べるシアラを見て、シアラの母は苦笑を漏らした。幼い頃から感情の起伏が少ない娘ではあったが、この年齢まで浮いた話の一つも聞かない。シアラの母もかつては魔法隊の隊長を務めていた人物であり、現在の魔法隊にも顔が利く。その伝手を使って調べてみても、シアラの周囲に男の影はほとんどなかった。

 シアラが名を連ねるテンシア家は、カーリア国の中では魔法使いの家系として有名である。カグラという例外を除けば、カーリア国屈指の魔法使いの家系と呼べるだろう。かつて、テンシア家の人間が魔法隊や魔法剣士隊の隊長になったことも数多くある。

 そんな歴史がある家であるから、シアラの母の心配も当然だろう。このままでは、シアラの代でテンシア家が終わることにもなりかねない。


「ねえ、シアラ。あなた、好きな人はいないの? あ、もちろん好きっていうのはサクラちゃんみたいに友達として好きって意味じゃないわよ?」


 食事を進めるうちに、シアラの母がそんなことを尋ねる。その問いを聞いたシアラは、食事の手を止めて自身の母へと視線を向けた。



 ―――好きな人?



 母からかけられた言葉を胸の中で繰り返し、シアラは僅かに首を傾げた。

 サクラとは違う、好き。そうなると、それはどんな『好き』だろうか。

 不思議そうな顔で目を瞬かせるその姿に、シアラの母は無駄を承知で問いを重ねる。


「一緒にいると楽しい、ずっと一緒にいてほしい、一緒にいると落ち着く……そんな男性はいない? ……いないわよねぇ」


 途中から諦めてしまったのか、シアラの母は溜息を吐きながら問いを打ち切った。


「…………ん」


 シアラは母の問いに対して、律儀に考えを巡らせる。

 一緒にいると楽しい男性……そもそも、一緒にいる男性自体が“ほとんど”いない。

 ずっと一緒にいてほしい男性……そもそも、親しく話したことのある男性自体が“ほとんど”いない。

 一緒にいると落ち着く男性……そもそも、傍にいて落ち着く男性など“ほとんど”いない。


「…………?」


 何かに思い当り、シアラは小さく首を傾げた。先ほどから、条件に該当する人物がいるような気がする。

 それが誰かと考えた途端、シアラの脳裏に一人の男性の顔が思い浮かんだ。それは、当代の国王である義人と一緒に召喚された―――。


「……ぅ……」

「シアラ?」


 小さく声を発したシアラに、疑問の視線を向けるシアラの母。いったい何事かと注視して、シアラの母は一つの違和感を覚えた。


「……うぅ…」


 ゆっくりと、非常にゆっくりとだが、シアラの頬が赤く染まっていく。無表情なのは変わらないものの、親であるシアラの母にはシアラの表情が変化していることがよくわかった。

 シアラはそれを自覚しているのか、落ち着かないように視線を彷徨わせると、心細げにテーブルの上に置いた両手の指を絡める。

 そんなシアラを見た母は、驚愕して一瞬だけ忘我した。



 ―――この()が、恥ずかしがっている?



 思わず、内心でそんなことを呟いた。

 そして、それと同時に今まで見たことのない娘の反応にシアラの母のテンションが一気に跳ね上がる。テーブル越しに身を乗り出すと、シアラへと質問を開始した。


「いるの!? いるのね!?」

「……い、いない」


 母からの追及に対して、シアラは逃げるように傍に置いた帽子で顔を隠す。そんな、シアラの反応を見たシアラの母はさらに勢いを増して尋ねた。


「誰!? わたしが知っている人!? 魔法隊の人!?」

「…………」


 否定を表しているか、それとも恥ずかしさを隠すためなのか、帽子を抱きかかえたままでプルプルと首を横に振るシアラ。シアラの母は、その仕草から前者だと受け取った。


「魔法隊の人じゃないってことは……まさかその、国王様とか?」


 当代の国王として召喚されたのは、シアラよりも少し年上の男性だと聞いている。さすがに退役した身とあっては謁見する機会もなかったが、当代の国王の為人(ひととなり)ぐらいは耳に入っていた。

 シアラの母が仕えていた頃の国王とは、似ても似つかぬ人物だと。


「……違う」


 しかし、シアラはそれを否定する。そんな否定の言葉を聞いたシアラの母は、楽しげに口元を緩めた。


「否定するってことは、好きな人がいるのは認めるのね?」

「……しまった」


 シアラ最大の失策である。

 帽子のつばから少しだけ顔を覗かせたシアラは、耳まで真っ赤にしながら母の反応を窺う。

 からかわれたら、とりあえず殴り掛かろう。そんな物騒なことを決意しながら、シアラは自身の母の言葉を待った。


「あの、何事にも興味を持たなかったシアラがねぇ……」


 そんな決意とは裏腹に、返ってきたのは嬉しげで、どこか一抹の寂しさを含んだ声。シアラが視線を向けてみれば、彼女の母は現在(いま)ではない、どこか遠くを見るように目を細めていた。


「……お母さん?」


 常にない母の様子に、シアラは困惑しながら声をかける。すると、シアラの母は表情を優しげなものに変えてから口を開いた。


「その人は、良い人?」

「……ん」


 誤魔化すという選択すら頭に浮かばず、シアラは素直に頷く。

 シアラは幼い頃から物事に興味を向けることが少ない女の子だった。テンシア家の人間として魔法や魔法に関する技術には興味を持ったものの、それ以外に興味を持ったことはほとんどない。

 そんなシアラが、男性に何かしらの興味を抱いている。

 友情か、思慕か、愛情か。それはわからなかったが、今までにはなかったことだ。

 シアラの母は、自分がシアラと同じ歳だった頃のことを思い出す。

 その頃はまだ前代の国王も存命しており、シアラの母は日々を魔法の訓練と魔物の討伐で過ごしていた。シアラ同様魔法隊の隊長を務めており、魔法剣士隊に務めていたサクラの母とも仲が良く、それなりに楽しい日々だったと自負している。

 もっとも、その楽しい日々も仕えているはずの国王によって粉々になったのだが。

 脳裏に()ぎる不快な記憶。しかし、今は過去にあった……前代の国王との間にあった出来事を思い出す時でもない。脳裏に浮かんだ記憶に蓋をして、シアラの母は己の娘へと優しげな目を向けた。


「あなたはそういった面では不器用を通り越しているけど、仲良くできてる?」


 仲が悪いわけではないはずだ。そう結論付け、シアラは答える。


「…………多分」


 答えた声に、自信はない。そんな娘の姿にシアラの母は破顔すると、口元に手を当てて笑った。


「あはは……頑張りなさいよ、シアラ。わたしは、そういった感情とは無縁だったからね。あなたが少し羨ましいわ」


 そう言って笑う自身の母に、シアラは複雑な視線を向ける。シアラの母は、サクラの母と同じく前代の国王によってその人生が多少なりと狂った。

 シアラも今よりもずっと幼い子供の頃、“そのこと”で密かに憤った記憶もある。なにせ前代の国王……自身の父にあたる人物が、間違っても自身の母のことを大切にしたわけではないのだから。

 そんなシアラの母が、自分の娘には幸せな道を選んでほしいと願ったのはある意味当然だったのかもしれない。からかいこそしたものの、シアラが意識しているらしき男性と“良い仲”になってくれればとも思う。もっとも、その前に大事な一人娘を任せるに足る人物かを見極める必要はあるのだが。


「…………」


 目の前で何やら考え始めた母を前に、シアラは無言で食事を再開する。

 食事を終えたら、頭の中に思い浮かべた男性……志信のところへ新年の挨拶をしに行くのも良いかもしれない。そんなことを考え、シアラの口元が僅かに緩む。すると、そんなシアラの様子から何かを感じ取ったのか、シアラの母は再びからかいの笑みを浮かべる。


「あら、嬉しそうな顔をしてどうしたの?」

「……別に」

「そう?」


 尋ねる母に頷きを返し、シアラは食事の手を少しだけ早くした。シアラの母はそんな娘の様子を楽しげに眺めると、不意に両手を合わせて口を開いた。

 やけに楽しげな笑みを浮かべつつ、シアラの母は自身の娘へと尋ねる。


「それで、いつ頃になったら孫の顔が見れるのかしら?」


 笑顔でそんなことを言い放った自身の母に対し、椅子を蹴倒して全力で殴り掛かったのもシアラにとっては仕方のないことだった。








 場所は変わってカーリア城の兵士の詰所。

 元旦でもいつもと変わらずに兵士が詰めているその部屋では、いつもと違った緩んだ空気が流れていた。


「たいちょーたいちょー」


 緩んだ空気を発している人物……魔法剣士隊の女性隊士は、こんな日でも職務を忘れない上司であるミーファへと話しかける。話しかけられたミーファは、眉を寄せながらそれに応対した。


「……気が抜けているぞ。それと、その妙な呼び方は止めなさい」


 普段ならば一喝して説教をするところだが、さすがに今日ばかりはミーファもある程度は好きにさせている。国民の休日だというのにいつもと変わらず仕事に就いているのだ。それに対する不満ぐらい、見逃してやるのが人の情である。

 詰所にいる者や城の各地で見張りや守衛を行っている者は、今年の元旦を迎えるにあたってあらかじめ選抜された者達だ。第一魔法剣士隊の中でも、家庭を持っていない者や元旦に用事がない者を中心に選ばれている。ミーファは隊長のため強制的に参加しなければならないが、それ以外の者にとっては中々の苦行だろう。城の外では祭囃子が鳴り響き、城下町からは時折楽しそうな歓声まで聞こえてくる。


「……なんでわたし達は元旦から働いているんでしょうね?」

「言うな。それに、誰かがやらなければならないんだ。」

「それはそうですけど……あーあ、こんなことならわたしも男の一人でも捕まえておくんだったなぁ。そうしたら『家庭の事情があるので』なんて言い訳が使えたのに」


 さらりと肉食的な発言をする女性隊士。それを聞いたミーファは、呆れたような視線を向けた。


「来年からは当分違う部隊が担当することになるんだ。あまり愚痴を吐くものではない」

「そうですけどね。わたしも今年で十八ですし……さすがにそろそろ焦ってきてるんですよ」


 焦ってきている。その言葉を聞いたミーファは、僅かに頬を引きつらせた。

 ミーファは今年で二十歳になる。カーリア国における女性の結婚の適齢期から、一歩踏み出してしまうのだ。しかも、それだけではない。十九歳と二十歳では、男性に与える印象がかなり異なる。


「……だからですね、わたしも……ってあれ? 隊長? あの、隊長? 聞いてます?」


 女性隊士の声が右から左へと通り抜け、ミーファは思わず片手で顔を覆った。



 ―――そうだ……わたし、二十歳になるんだ……。



 まだまだ十分に若い。しかし、二十歳である。もう、十代ではなくなるのだ。

 もしも一年前のミーファならば、それがどうしたと鼻で笑っただろう。そんなことよりも、父の仇を討つという意識が先に立った。


「……なんだ、この焦燥感は……」


 小さく呟き始めたミーファに、女性隊士は顔を引きつらせる。だが、ミーファはそれに気づかず自分の考えに没頭していた。

 思い返してみれば、自分と同時期に魔法剣士隊へ入隊した女性の同僚は皆家庭に入っている。結婚してからも退役しない者もいるが、それはどちらかと言えば少数派だ。すでに何人かの子供がいる者もいる。そのことを考えた途端、ミーファは言いようのない焦燥感と敗北感を覚えた。

 ふと、ミーファは己の青春時代を振り返る。

 父が殺されてからは一心に刀を振るい、魔法の腕を鍛える日々だった。同い年の少女達が色恋話をしている頃も、血豆を潰しながら刀を振るい、魔物を相手にしていたのである。その結果が魔法剣士隊の隊長という今の立場ではあるが、なんとも殺伐とした青春だった。


「これは……まずい……」


 国王が姿を消した時に何をと思う自分がいる反面、そんな時だからこそと思う自分もいる。

 もちろん、思い悩むのにも理由があった。ミーファとて、何も理由がなくてここまで悩むわけではない。

 現在、ミーファ=カーネルに親族らしい親族はいない。両親や先祖から受け継いだ血筋をミーファの代で絶やすのは忍びなく、申し訳が立たないという思いがあった。

 ならば魔法剣士隊の隊長を辞め、婿を見つけるのが妥当だろう。しかし、自分が辞めた後の魔法剣士隊を任せられる人物がいないのだ。そもそも、婿を見つけるというのも簡単にいくかわからない。

 並の魔物ならば一人で倒し切る自信があるが、こと色恋沙汰となるとその辺の新兵にも劣る。実際のところは魔法剣士隊の中にもミーファに恋慕する男性隊士がいるのだが、ミーファはそれに気づかずに何年も過ごしたある種の傑物だ。


「父上、わたしはどうしたら良いのでしょうか……」


 すでに亡き父の顔を思い浮かべ、ミーファは呟く。その隣では、最初に話を振った女性隊士が若干引きながらミーファを見ていた。

 もしも婿を取るとして、と仮定したミーファは視線を宙に向けて黙考する。

 ミーファも女性である。できるなら男性に守ってほしいという願望があるが、生憎とその身は魔法剣士隊の隊長だった。カーリア国の中では、接近戦において屈指の腕前を持つ。その辺の男性が三人同時に襲い掛かってこようが、適当にあしらえるぐらいにミーファは強かった。

 そうなると、ミーファの希望に該当するのは一人しかいなかった。正確には一人と魔物が一人。すなわち、志信とアルフレッドである。



 ―――アルフレッド様はまず論外よね。



 祖父であり父であり上司であり恩師でもある。男性という括りでは見れない人物だった。

 そうなると、志信一択しかない。というよりも、初めからそれしかミーファにはなかったのだが。


「む……むむ……シノブは、女性の年齢を気にするのかしら……」

「あの、隊長? 今は職務中なんですけど」


 先ほどの自分を棚に上げ、ミーファを注意する女性隊士。しかし、ミーファはそれに気づかない。

 結局、その日のミーファは考えすぎてロクに仕事がこなせないのだった。


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