第百三話:カグラ先生による魔法レッスンその4
「それで、裏庭の惨状についてお聞きしたいのですが?」
早朝訓練を終え、朝食を食べ終えた義人を出迎えたのはやけに迫力のある笑顔を浮かべるカグラだった。どうやらいまだに怒りが持続しているらしく、義人は説教が避けられないことを悟りながらもなんとか回避を試みる。部屋の隅ではサクラがお茶の準備をしているが、義人にそこまで気にする余裕はなかった。
「いや、それはですね、何と言いますか、偶然が重なったことによる不幸が……」
「コユキ様が破壊したんですよね?」
「……ま、まあ。そうとも言う……かな?」
にこりと、笑顔で断じられた義人は目を逸らす。正座をしながらの弁解ではあったが、カグラは聞く耳を持たないらしい。そんな義人の隣では志信も正座していたが、異議有りとばかりに口を開く。
「カグラ、今回のことに関して義人に非はない。すべては小雪の勘違いから始まったことであり、その原因を作ったのは俺だ」
そう言って、志信は正座した義人の膝の上に座る小雪へと目を向けた。小雪はすでにパジャマから着替えており、灰色のセーターと膝丈までの赤と黒のチェック柄のスカートを身につけている。カグラの言葉を聞き流しているのか、それとも気に留めていないだけなのか、その表情は笑顔だった。
ちなみに、小雪があちこちに穴を空けた裏庭は現在近衛隊の兵士によって埋め立て中である。
カグラは志信の言葉を聞くと、小さなため息を吐き出した。
「日中の政務に差支えがないのならば、ヨシト様が体を動かされることに異議があるわけではありません。しかし、一歩間違えば大怪我につながるようなことは控えていただきたいのです」
そのときカグラの顔に浮かんだのは、義人の身を案じる純粋な心配。義人はそんなカグラの表情を見て、小さく頭を下げた。
「気をつけるよ。まあ、今回は志信が手加減をし忘れただけだしな」
「すまない。義人の思わぬ攻撃に、つい本気で反撃してしまった。次からは俺も気をつける」
「……志信。そんな、ちょっと手が滑ったみたいな気軽さで本気を出されたら俺がもたないって。訓練ではあるけど、俺と志信じゃ実力差が大きすぎるしさ」
志信の言葉に苦笑する義人だが、そんな義人に対して志信は小さく頷いてみせる。
「ならば、次はミーファと打ち合ってみるか? あの移動方法があれば、良い勝負になると思うが」
「そうか? 志信相手だと簡単に防がれたんだけど?」
「俺はカール隊長が使ったところを見たことがある。だからこそ反応できたが、初見ならばかなり有効な魔法だと思う。もっとも、移動しながら斬りかかるのは止めたほうが良いだろう。下手な斬り方をすれば、ノーレでも折れかねん」
「体にかかる負担も大きそうだしなぁ」
正座しながら、徐々に話を逸らしていく二人。だが、話を打ち切るためかカグラが呆れたような声を上げた。
「お二人とも、そういった話は後でお願いします。今わたしが話したいことはですね」
「もー、カグラうるさいよ?」
しかし、今度は小雪からカグラに対して声がかかる。声というよりは非難に近いが、それを聞いたカグラは何を言われたかすぐに理解できなかったのか、数秒の間を空けてから反応を返す。
「う、うるさい? あの、コユキ様? コユキ様が暴れた結果なのですが、わかってますか?」
声が震えていたのは、何かを堪えているためか。義人はカグラの声が震えていることに対して反射的に背筋を伸ばし、志信は何か思案を巡らせた視線を小雪へと向ける。
「ちょっとたたいただけだよ?」
「龍種の魔力量で『強化』しながら殴りつけたら地面も陥没します! それと、あれはどう見てもちょっと叩いたという威力ではありません!」
不思議そうに首を傾げる小雪に、カグラは身振り手振りを交えながら否定する。
「でも、カグラも同じことやそれ以上のことができるんだよな」
「ヨシト様、何か仰いましたか?」
小さく呟いた義人だったが、聞こえていたらしくカグラが笑顔で振り返った。その笑顔を向けられた義人は、冷や汗を流しながら両手を挙げる。
「何でもないです。ええ何でもないですとも」
「敬語で否定するあたりが怪しいのですが?」
「そんなにおこるとしわがふえるよ?」
詰め寄るカグラに、サラリと笑顔で爆弾を放り投げる小雪。それを聞いたカグラは焦ったように首を横へ振った。
「どこからそんな話を聞いてきたんですか!? それと、わたしはまだそこまで歳を取っていません!」
「む? 怒ることと歳は関係ないのではないか? つまり皺は……」
「増えません!」
否定するカグラだが、再び話が逸れていることに気付いて表情を真面目なものへと改める。若干疲労が滲んで見えるのは気のせいか、義人は内心でそんなことを少しだけ考えながら小雪の頭に手を乗せた。
「少し、静かにしといてな」
「うん!」
義人の言葉に満面の笑みで答える小雪。カグラはそれを見て僅かに視線を鋭くするが、それに気付いた者はいない。カグラは仕切り直すように一度だけため息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。
「わたしが言いたいことはですね、今後もこのようなことが起きないかどうかということです。地面を陥没させたのは……まあ、百歩譲って良いとしましょう。しかし、城下町や城の中で同じようなことがあっては困ります」
周囲の物を笑顔で破壊していく小雪を想像し、義人は同意を示すように頷く。
「たしかにそうだな。小雪、もうあんなことはしちゃ駄目だぞ?」
「おとーさんがそういうなら」
本当にわかっているのか、小雪はすぐさま頷く。すると、それを見たカグラが眉を寄せた。
「コユキ様は、ご自分の力で魔力を制御できるのですか?」
「せいぎょ?」
言葉の意味がわからなかったのか、小雪は目を丸くして首を傾げる。それを理解していないのだと受け取った義人は、自身の膝に座る小雪の頭を軽く撫でた。
「じゃあ、小雪はどうやって地面を凹ませたんだ?」
「えーっと、こう、ぎゅっとやってどーんって」
頭を撫でられた小雪は身振り手振り、どこか嬉しそうに説明をする。しかし、それを聞いた義人は真剣な顔で頷いた。
「うん、わからねぇ」
『おそらくは無意識のうちに『強化』を使ったんじゃろうが……修練も積まずに『治癒』も使えるあたり、余程優れた魔法の才があるんじゃろうな。もしくは魔力量に物を言わせた力押しか』
「どのくらい魔力量があるんだろうな? サクラ、悪いんだけど、ちょっと『魔計石』を持ってきてくれるか?」
ノーレの言葉を聞いた義人がサクラにそう告げると、サクラは一礼してから部屋を退室していく。義人の膝の上でサクラが退室するのを見送った小雪は、不思議そうな顔をしながら義人へと振り返った。
「おとーさん、まけいせきってなに?」
「触るだけで魔力の量を計るための魔法具だよ」
「ふーん……ふぁ」
それだけの説明で理解したのか、それとも興味を失ったのか、小雪は小さな欠伸をして義人の体に背を預ける。
「眠いか? 今日は起きたのが早かったもんな」
そう言って苦笑しながら、義人は小雪の頭を撫でた。その手つきはどこか優しく、それを見た志信は穏やかに笑う。
「そうやって見ると、立派に親子だな」
「うぐっ!? ま、マジで?」
志信の言葉が精神的にきつかったのか、義人は少し落ち込んだ表情になる。義人は否定していたが、周囲から見れば“それなり”に父親らしく見えるらしい。
義人は『この歳で一児の父かよ、しかもけっこう大きいし』などと呟いたが、小雪が人に化けた直後に比べればその態度は柔らかい。諦めたのか、それとも認めたのか。
その光景を見ていたカグラが僅かに目を逸らしたが、小雪に視線を向けていた義人や志信は気付かない。
「『魔計石』をお持ちしました」
すると、その空気を破るように部屋の扉が開いた。その声はサクラのものであり、義人は扉の方へと目を向ける。扉を開けたサクラの手には二つの『魔計石』が握られており、サクラの魔力量で変化したのか濃い緑色へとその色を変えていた。
「ああ、ありがとうサクラ。小雪、その石に触ってみてくれるか?」
歩み寄ってきたサクラが『魔計石』を差し出すと、義人の言葉に従って小雪が『魔計石』へと手を伸ばす。
「どうぞ、コユキ様」
「ありがとう、サクラおねえちゃん」
手渡すサクラに礼を述べる小雪。サクラは小雪の言葉に笑顔になると、どういたしましてと言いながら小雪の頭を優しく撫でる。小雪はその手の感触が心地良かったのか、嬉しそうな笑顔を零した。
「だから、どうしてサクラは『おねえちゃん』でわたしは呼び捨てなんでしょうか……」
納得がいかないとばかりにカグラが呟くが、小雪がその言葉に反応を返すことはない。聞こえていないのか、それとも無視しているだけなのか、手に持った『魔計石』を物珍しげに眺めるだけだ。
小雪が『魔計石』を手に取ると、サクラから手渡されたからか濃い緑に染まっていたものが黄、橙、赤と順に色を変えていく。そして、『魔計石』が血のように赤く染まった途端に音を立てて真っ二つに割れた。
「やはりと言うべきか、大した魔力量ですね……」
『魔計石』が真っ二つに割れることを予想していたのか、カグラの声に驚きはない。小雪が反応を返さないことにも諦めがついたのか、表情はいつも通りだった。
『しかし、これでは正確には計れぬな……ヨシト、妾をコユキに持たせてくれるか?』
「ノーレを?」
『うむ。『魔計石』ほど正確ではないが、おおよその魔力量は計れる。それに妾ならば、『魔計石』のように砕けることはないじゃろう』
「そういうことなら……」
義人はノーレの言葉に頷くと、傍に立てかけておいたノーレを鞘ごとつかんで引き寄せる。そして小雪の方に柄を向けると、小雪に向かって声をかけた。
「小雪、ちょっとノーレを握ってくれるか?」
「……こう?」
小雪は割れた『魔計石』をサクラに手渡すと、空いた手で差し出されたノーレの柄を握る。
『む……これは……』
「どうかしたか?」
ノーレの声色に驚愕に近い響きがあったことに、義人は何かあったのかと尋ねた。すると、ノーレは義人の疑問を晴らすように落ち着いた声を出す。
『いや、大した魔力量だと驚いただけじゃ。おおよそじゃが、並の魔法使いの百倍以上ある……百二十、いや、百三十倍か? ううむ、ここまで大きいとは……ん?』
「ノーレ?」
不思議そうな声を出したのは、小雪だった。だが、ノーレは小雪の言葉に答えない。
『は、ははは……ヨシト、この子は間違いなくお主の子じゃな』
それどころか、どこか乾いたような笑い声を漏らしながらそんな言葉を呟いた。
「……いきなりそんなことを言われても、血縁関係はないはずだけど?」
小雪は空から降ってきた『龍の落とし子』であり、義人には自分の子どもだと言われる覚えはない。
『すまん、言葉が足りなかったな。小雪から、お主の魔力とそっくりの魔力を感じたんじゃ。おそらく、卵の時に吸っていたんじゃろうな。つまり、人間で言えば血を引いていると言っても良いのではないかの?』
「俺そっくりの魔力?」
『うむ。量としては全体の一割もないがな』
何が楽しいのか、ノーレの笑い声は中々止まらない。義人がそんなノーレにどう反応するべきか内心で首を傾げていると、それまでノーレを握っていた小雪が頭を上げた。
「おとーさん、こゆきすごい?」
「え? あ、ああ。すごいすごい」
ノーレの言葉をどう捉えたのか、褒めてと言わんばかりに微笑む小雪。義人はそんな小雪の言葉に、気を取り直して頷く。
「俺の魔力、ねえ……サクラ、ちょっと『魔計石』を貸してくれ」
「あ、はい。わかりました」
義人の言葉に、サクラは持ってきた『魔計石』のうちまだ壊れていない方を義人へと手渡す。義人が『魔計石』を手に取ると、サクラの魔力で濃い緑色に染まっていたものが徐々に色を変え、数秒の時間をかけて濃い青色に変化していく。
「小雪が俺の魔力とそっくりな魔力を引いて……って、あれ? なんか、減ってないか?」
小雪が自分とそっくりな魔力を引いていることに少しショックを受けた義人だったが、手に持った『魔計石』の色が以前と違うことに首を傾げた。
『『加速』を使ったからではないのか? ……と言いたいところじゃが、そこまで多用していないしのう。これは、純粋にお主の魔力量が減ったと見るべきかの』
「……何故に? 魔力の量って簡単に減るものだっけ?」
「いえ、魔力が減ることはそうそうありません。精々、歳を重ねたことで魔力が衰えたという話を聞くぐらいです」
義人の疑問に答えたのはカグラである。そんなカグラの言葉を聞いた義人は、僅かに眉を寄せた。
「つまり、俺ももう歳だと? ここから先は衰えていくばかりだと?」
だとすればショックである。義人は気落ちしたように肩を落とすが、そんな義人を見てカグラは苦笑した。
「やはり、訓練の時に魔力を使いすぎたのではないですか?」
「そうなのか……志信は?」
納得できないものを感じた義人だが、話していても理由は見つからないと判断して話を打ち切る。そして志信へと『魔計石』を放り投げると、志信は軽く頷きながら濃い青色の石を受け取った。すると、今までは濃い色合いだったものが徐々に薄くなっていく。
「青色……特に変わってはいないようだ」
カグラに言わせれば、一般的な魔法使い四人分の魔力量。それに志信は大した感慨を抱かず、『魔計石』をカグラへと手渡す。すると、『魔計石』の色が赤へと変化した。
「わたしは順調に魔力が回復しているようですね」
そう言ってカグラは『魔計石』を机の上に置く。そして頬に手を当てると、何かを思いついたかのように声を上げた。
「そういえば、以前お話ししたどうやって魔法を使うかという話は覚えていますか?」
魔力が魔法関連の話だからか、カグラが言い出したことに義人は何かあるのかと頷く。
「ああ、覚えてるよ。使いたい魔法を頭の中で想像しながら魔力を放出するんだろ?」
「はい。それが“大雑把”に言った場合の魔法の使用方法です……そうですね、折角なので今日はもう少し詳しく話をしましょうか。コユキ様の魔法の制御にも役立つかもしれませんし」
そう言いながら姿勢を正すカグラに、義人や志信も姿勢を正す。そんな二人の聞く姿勢にカグラは一度頷くと、講義をする講師のように話し始める。
「魔法とは頭の中で想像し、魔力を放出することで実現させます。では、何故それだけで魔法が使えるのでしょうか? 生まれ持った才能によって使える魔法の差はありますが、魔法を使うという一点において魔法使い全員が同じ方法で魔法を発現させます」
「ふむふむ」
とりあえず、義人は相槌を打つ。政務は良いのかという考えも頭を掠めたが、例え午後から仕事を始めても夕方には終わってしまうため問題はないだろう。その上、興が乗ったのかどこか楽しそうに話すカグラを止める勇気は義人にはなかった。
「これはアルフレッド様から教わったことなのですが、魔力とは言うなれば“世界に干渉する力”です。魔力を使い、己の思い描く事象を発現させる……魔力が大きい場合はより強く、魔力の変換効率が良い場合はより簡単に魔法を使うことができます。すなわち、魔力が大きいというのはそれだけで大きな武器であると言えますね」
「魔力が大きければ、『強化』の効果も大きくなるようにか?」
カグラの言葉に志信が質問を挟むと、カグラはそれに頷きを返す。
「その通りです。そのため、コユキ様が力の制御を覚えるのならまずは魔力を自分の意思で操作することから覚えるべきですね。それさえできれば、魔法使いとしての初歩を覚えたと言っても過言ではありません。あとは才能に従って、覚えることができる魔法を覚えていけば良いでしょう。もしくは魔力の操作に重点を置くのも良いですね。強大な魔力と抜群の魔力の変換効率。それだけで桁違いに強くなれるはずです」
「へぇ……それじゃあ、小雪も魔法の練習をした方が良いのか。小雪、どうする?」
小雪が力任せに暴れるのを抑えるためにも、魔法の訓練は必要だ。その意味も込めて義人が尋ねると、小雪は僅かに首を傾げる。
「おとーさんはやったほうがいいとおもう?」
「俺はそう思うけど」
「じゃあやる!」
本当に必要だと思ったのか、それとも義人の言葉に従っただけなのか、小雪は元気良く返事をした。だ
が、そんな小雪から視線を外して義人はカグラへと目を向ける。
「でも、誰が教えるんだ? カグラか?」
「わたしは日中に政務がありますから、教えるなら夜などになりますね。アルフレッド様も同じですし、シアラ隊長は部隊の訓練。ミーファちゃんも部隊の訓練がありますし、魔法を教えるにはあまり向いてないでしょう」
カグラは思いつく限り名前を挙げていくが、それぞれが忙しく小雪に教える暇はほとんどない。しかし、義人はまだ名前が挙げられていない人物に気付き、そちらへと目を向けた。
「サクラはどうだ?」
「サクラ、ですか。たしかに腕は申し分ないですし、コユキ様も懐いています。しかし、そうなるとヨシト様の護衛が……」
「俺の護衛って言っても、日中は大抵カグラが一緒だろ? これ以上の護衛はいないと思うけどな」
お茶は優希が淹れてくれるし、と付け足して、義人はカグラの反応を待つ。カグラはそんな義人の視線を受けながら、事の成り行きを見ていたサクラへと話を振った。
「サクラはどう思いますか?」
「わ、わたしですか? その、カグラ様がヨシト様の護衛をされるのなら心配はないですし、コユキ様にお教えするのは構わないのですが……『治癒』魔法などに関してはカグラ様の分野ですよね?」
「はい。その辺りの魔法についてはわたしが教えます。サクラはひとまず、魔力の操作を教えてください。それだけでだいぶ違うはずですから」
「それぐらいでしたらわたしでも教えられますし、部屋の中でも教えられますね……わかりました。お引き受けします」
自分でも教えられると判断し、サクラは微笑みながら承諾する。すると、今まであまり会話に参加しなかった志信が不意に口を開いた。
「義人、小雪の訓練に関してなんだが……体の動かし方や戦い方についても教えないか?」
「ああいいよ……えっ!?」
特に考えること頷き、その三秒後に義人は音の立つ速さで志信へと振り返った。
「えっと、いや、なんで?」
「白龍というのは希少な種族らしいし、有事の際は自分の身を守れる手段が多いほうが良いと思ってな。今日は力任せに戦っていたが、あれだけの速さと力強さがあれば小雪は強くなるだろう」
「そりゃそうだろうけど……」
義人は困惑しながら志信を見るが、志信の表情はいたって真面目である。どこか違う意味も含んでいるように見えたが、義人の視線に気付いた志信は苦笑してみせた。
「“力”の使い方というのを教えるのも重要だと思って、な」
「……わかったよ。それじゃあ、手が空いたときにでもお願いする」
「任された」
そう言って、義人と志信は二人で頷き合う。
それを最後に、義人達五人は解散するのだった。