第一章 1「四季色の決まり事」
__〝四季〟
それは私たちのランク決めをするためのもの。〝四季〟はそれぞれ、春夏秋冬に分かれ下から、冬、秋、夏、春に分類される。
このランクは、生まれた〝四季〟で決められ、母親は皆、春に産もうとするものが多い。春に生まれるものが多発し、その対策として政府は、とあるゲームを考えついた。それは____
「へへっ、お前、いいもの持ってんじゃねぇか。俺たちにソレ、寄越せよ」
「い、いやよ! これは、私たちのものよ! ふざけないで! 春だか何だか知らないけど、冬には冬なりの生き方があるのよ!」
ランク別による完全な〝差別〟
冬は春夏秋に逆らえず、秋は春夏に逆らえず、夏は春に逆らえない。逆に言えば、春に生まれし者は、人生の勝ち組だ。
こんな風に、男が寄ってたかって女をいじり倒しても、春である限りは犯罪ではない。逆に、口が対している女の方が犯罪だ。……この国では。
ホラ、こっちでは。
「こら! 君! ここは神聖なる春の聖地だ。君たちみたいな者が入っていいわけがないんだよ」
「待ってよお巡りさん! 僕は兄さんに会いたいだけなんだよ!」
「い〜や! ダメです! 君のお兄さんに合わせるわけにはいかない! だって、君のお兄さんは神聖なる者だからね」
「そ、そんな……」
愛らしい顔をしたクリクリ目の男の子が、お巡りさんに「兄に会いたい」とお願いしても、夏。というだけの理由で、合わせてさえもくれない。むしろ、大人が子供をいじめている。
それに、ここにも。
「嫌や! ウチ、おかんに会いたいねん!! ここ通してや! このアホ!」
「ごめんなさいねぇ、お嬢さん。あなた…春じゃないでしょ? 通すわけにはいかないのぉ。悪いけど、他を当たって?」
「何やて!? 当たれるわけないやろ!」
大阪弁の大学生は春に生まれた母親に会いたいらしく、警官に立ち会うが、それも通らない。
今はコレが〝当たり前〟
春は誇らしく咲き誇り、冬は惨めに朽ち果てる。そんな最低な規則が当たり前のように守られている。
「ホント、冬は下品でならないわ。煩いから、牢にぶち込んだきましょ」
「はあ!? 何やねんお前! ちょっと口聞いたぐらいで牢にぶち込まれるんか!?」
褐色の手に手錠をはめられた大学生は、もちろん反抗する。親にあいに来ただけでこの仕打ち。でも、これが〝当たり前〟
犯罪でも何でもない。
「こちら東地区。煩いのがいたのでぶち込んどきます。そちらよろしく」
「人の話し聞けや!」