Σ(゜д゜lll) 誰かの謎のラブレター
演劇部の部室で着替えを済ませてから、蔵王アヤトは教室に戻ってきた。
すると、一人の男子が何かを高々と掲げて騒いでいる。
「やったったったー! やったったったー!」
それは薄いピンク色をした封筒だった。しかも封をしているシールは、赤いハートマークで、普通に考えるならラブレターだろう。
なんでも、教室に戻ってきたら、机の中に入っていたという。
はしゃぎまくる男子を横目に、アヤトは自分の席に着いた。
夏休み直前に彼女ができるとは、うらやましすぎる。心の中で本音を漏らした。男一人で女性水着店に行けば変質者扱いだが、彼女と一緒なら話は別。そうやって一緒に選んだ水着で、海やプールでデートしたりするわけで・・・・・・。
さっきまでクラスの女子の水着姿を目にしていただけに、素直に「良かったね」とは思えない。あいつのおしりにサボテンでも生えればいいのに、と本気で思った。
と同時に、ラブレターの送り主が誰なのか、ものすごく気になってくる。
男からだったりしないかな。
自分にとって都合のいいように、アヤトが想像を巡らせていると、
「やったったったー! やったったったー!」
今度は別の男子が騒ぎ出した。なぜか、そいつも同じ封筒を手にしている。
先に騒いでいた男子は「え?」という顔で、自分の封筒を見つめ直した。
同じラブレターが、二つ存在する。普通なら、あり得ないことだ。
しかも、それで終わりではなかった。
「俺のとこにもあるぞ!」
「こっちもだ!」
他の男子たちも、次々と騒ぎ出した。
アヤトも自分の机の中に、右手を滑り込ませてみる。指の先に封筒らしき感触を発見した。
取り出してみると、やはり薄いピンク色をした封筒で、赤いハートマークがついている。
どうやら、男子全員の机に、同じ封筒が入っているらしい。
女子全員で共謀してのイタズラだろうか。
それとも、又子先生の仕業だろうか。
男子たちの間で熱い議論が交わされる。
ほどなくして、そのどちらでもないことが明らかになった。
教室に戻ってきた女子たちが、自分の机から例の封筒を発見しては、不思議そうな顔をしたのだ。
犯人は、このクラス全員の机に、同じ封筒を入れていったらしい。
これで、女子全員による共謀という可能性が消えた。
ついでに、又子先生も容疑者からはずれる。もし彼女がやったのなら、女子の机は無視して、男子の机だけに入れるはず。
となると、問題は封筒の中身だ。
クラスのあちこちで、慌ただしく開封作業が始まる。
アヤトも急いで自分の封筒、その中身を確認した。一枚の便箋が入っている。
便箋は封筒と同じ薄いピンク色をしていて、そこに差出人の名前はなく、謎の数字が並んでいた。
12 165 447 270 125
219 215 343 112 51
118 413 177 88 246