Σ(゜д゜lll) 勝利への航路(前編)
そして時間は現在に戻る。
青の回廊で新型《空中戦艦》が轟沈した直後、緑の回廊では白い大波が揺れていた。
複数のトイレットペーパーが波のように蠢く中を、《役者勢》の最終兵器が、その実力をいかんなく発揮している。
迎撃に出ていた《劇番衆》二人は、まるで歯が立たなかった。
役者たちが悠々と、空中を飛び越えていく。
このピンチに、頼みの綱の《選定候》は不在だった。
昨夜起きたエピテリカの裏切り、あれに巻き込まれたわけではない。
が、緑の《選定候》はもともと『超多忙』な人物だ。代表支配人が緊急招集を発しているけれど、未だ『奥館』に姿を見せてはいない。
普段とは完全に別物と化した、本日の《ゲキバン》。先ほどまではどうにか凌いできた緑の回廊だったが、それもどうやら終わりらしい。
「ここに橋頭堡を築くよ! 中継発射台用意!」
役者たちの勢いは止まらない。
緑の回廊に攻め寄せてきた《役者勢》には、他の回廊の《役者勢》とは、大きく異なる点があった。
新型《空中戦艦》を構成する二百八十五人、その全員が女性なのだ。
こうなったのには、この回廊特有の事情が関係している。
緑の回廊は昔から、「二枚目」の《劇番衆》が多く配属される傾向にあるのだ。
そのためか、「彼ら」は芝居の題材に使われることが多く、これまでにたくさんの脚本が執筆されてきた。海箱シティ内の劇場では毎月、「新作」が上演されている。
特に、《劇番衆》と《役者勢》の恋愛模様を書いたものは、定番中の定番となっていた。
そんなわけで、『海箱座』に所属する女性役者たちの中には、こう考える者も少なくない。
緑の回廊を突破し、その日の舞台に立つのが「最善」。
たとえ突破できなくても、かっこいい相手と戦った結果であるなら「次善」。
その《ゲキバン》がきっかけで、緑の回廊の《劇番衆》と親しくなれるかもしれないし・・・・・・。
このような思いは、強い推進力となる。
新型《空中戦艦》は緑の回廊を驀進し、大勢の女性役者たちを空中へと高速発射していた。
まさに怒濤。破竹の勢いは止まらない。
回廊内にいる二人の《劇番衆》を、完全に翻弄していた。彼らが弱いのではない。新型《空中戦艦》が強すぎるのだ。
これほどの圧倒的優位にもかかわらず、女性役者たちは気を緩めない。
赤の回廊では惜敗した。
青の回廊では惨敗した。
新型《空中戦艦》は、すでに二連敗している。
でも、ここで敗北を終わらせる。この緑の回廊が、勝利への突破口になるのだ。新型《空中戦艦》の羅針盤は、勝利の一点を示している。
後衛にいる《劇番衆》の頭上を、複数の《役者勢》が越えていく。
そして着地。あとは前に走り抜けるだけ!
ついに、《関所回廊》の一つが陥落する――




