Σ(゜д゜lll) 突破不能、絶望の・・・(前編)
メモリがふり返ると、勝者の背中が見えた。
数メートル離れた場所で、彼女が立ち尽くしている。
その前方では、緑色のペンキが大量に、天井から噴き出していた。
(使ったんだ。《ゲート・シャッター》を)
前回の《ゲキバン》で、メモリは同じものを見ている。
それが現在進行形で、赤の回廊を封鎖しているのだ。あれでは、マユハは先に進めない。
目の前の光景を直視しながら、メモリには思うことがあった。
今回の《ゲート・シャッター》、映像室による操作じゃない。
にしては、あまりにタイミングが良すぎる。
(たぶん、もう一つの方法を使ったんだ)
初めての《ゲキバン》を戦った前日、ユユさんが研修の最後に言っていた。
各回廊のすぐ外には、《ゲート・シャッター》を手動で操作できる、そんなレバーがあるのだ。あれなら、タイムラグはなかったはず。
(あ、これ、アヤトに言い忘れていたかも)
マユハは動かない。
無理もないだろう。この回廊を突破できる、と思った直後の絶望だ。彼女の背中は無防備をさらしている。
今なら簡単に仕留めることができそうだ。ペイント弾は尽きたものの、アヤトが持っているハリセンを投げてもらえば・・・・・・。
メモリは空っぽのバズーカ砲を肩に担いだまま、マユハの方に近づいていく。
足を止めたのは、彼女の真後ろではなかった。
真横だった。
正面にある緑色の滝、その奥に向かって大声で叫ぶ。
「私です。《劇番衆》の百瀬メモリです。今から弾を補充します。だから、この邪魔なものを止めてください!」
返事はなかった。
でも、先ほどまで数人の《劇番衆》が待機していたのだ。ペンキの噴出量が多すぎて、その姿を見ることはできないものの、そこに彼らは今もいるはず。
止め方は簡単だ。倒したレバーを起こせば、《ゲート・シャッター》は止まる。
仮に彼らが動かなくとも、『奥館』の映像室でも、この様子を見ているに違いない。今日の担当はアノン監督だ。彼女の性格なら、たとえ完封指示を出していようと、《ゲート・シャッター》を止めてくれそうな気がする。
けれども、そんな期待は虚しく、ペンキの雨は降りやまなかった。
メモリは強い怒りを覚える。
マユハは《役者勢》として、《ゲキバン》のルールに則り、自分とアヤトを突破したのだ。すでに勝敗は決している。《ゲート・シャッター》による妨害などせずに、きちんと迎え入れるべきだろう。
(こんなやり方は、絶対に間違っている!)




