Σ(゜д゜lll) 赤の回廊で激突(マユハ視点 その三)
マユハは無表情を装う。
こちらの真意を、まだ悟られてはいけない。
七つの《関所回廊》の内、《選定候》がいる「青の回廊」を除くと、残りは六つ。
紫、藍、緑、黄、オレンジ、赤。
この中から「赤の回廊」を選んだのには、大きな理由がある。
それは、メモリの存在だった。
彼女の専用武器、ほとんどの《役者勢》には初見でも、自分はすでに知っている。「別の島で行われた実戦形式のテスト」では、本当にひどい目に遭った。
あの武器は、やばい。
通常時の射程は八十メートルで、装填可能なペイント弾は八発。
回廊の全長がおよそ百メートルなので、メモリが前後に二十メートル移動すれば、回廊全域を射程に収めることができる。そんな過剰性能だ。
普通に考えれば、単騎で挑むのは避けるべき相手だろう。
しかも、今の自分には使命がある。《閣下隊》から託された手紙を、『奥館』に届けるという使命が。
にもかかわらず、ここ「赤の回廊」を選んだ理由。
対メモリ専用の「秘策」があるのだ。
赤の回廊における最大の関門は、「アヤトの突破」。それを成し遂げたことで、チャンスは大きく広がっている。
ただし、この秘策は不意打ちの一手だ。通用するとしても、最初の一回に限られる。失敗すれば、『役者連館』へと逆戻りだ。
そのあとの再チャレンジでは、もう秘策は使えない。よって、「青の回廊」だけでなく「赤の回廊」も、突破の選択肢から消えることになる。
だから、この一回で確実に決めたい。
ゆっくりとはしていられなかった。『待機』から、アヤトが戦線復帰してくるまでには、たったの三秒しかないのだ。
その間に、メモリとの対決を済ませてしまおう。今なら一騎打ち。《関所回廊》の残りは、およそ三十メートルだ。
(いざ勝負!)
マユハは右前方に走り出した。
直線に移動するのではなく、曲線を描きながらの移動だ。
やはり飛んでくる、緑色のペイント弾。
まずは回避に成功した。
そして素早く、三歩後退する。
普通ならば、前へ前へと急ぐのが、《役者勢》の定石だ。
だからこそ、あえて逆をした。
直後に、二発目のペイント弾が、自分の正面、その少し先を飛来していく。あのまま進んでいたら、直撃していただろう。
これで、残りは六発。




