Σ(゜д゜lll) その正体は若い女性?
ほんの少しだけ、時間をさかのぼる。
午後五時三分、『奥館』の代表支配人室。
まだ、お世話係の女の子は戻ってきていない。粉々になったティーカップが、床には散らばっている。
海箱ユユは一人きりで、考えごとをしていた。
先ほどの電話について、気になることがあったのだ。
(機械音声に加工していましたが・・・・・・)
何となくの印象だけど、若い女性が話しているように思ったのだ。呼吸の感じとかが特に。
相手側には峰谷マノもいるから、あの電話は彼女の仕業だろうか。アコンプリス本人ではなく。
それとも、『世界を旅する薬剤師さん』の仕業?
海箱ユユは自分の記憶を確認する。たしか海王丸邸には、「四人」で潜伏していた形跡があった。
だから、あの電話の主、他の二人という可能性もある。アコンプリスと、謎の四人目。その二人の、どちらか・・・・・・。
代表支配人室の電話は、相変わらず鳴り続けている。が、その音を無視して、海箱ユユは思考を重ねていく。
先ほどの電話、若い女性っぽくはあるものの、モトナやデススちゃんではなさそうだ。
二人でない証拠の一つに、あの電話では、こちらとの会話が普通に成立していた。用意してある原稿を読み上げていただけなら、ああはならない。
それでいて、今回の騒動について、熟知しているような口ぶりだった。
ひょっとして、あの電話をかけてきたのは本当に、「アコンプリス本人」なのか?
で、その正体は若い女性?
これが事実なら、容疑者を一気に絞り込める可能性が出てくる。
アコンプリスには、もう一つ有力な手がかりがあるのだ。
海王丸邸の遺留品には、「女の子シリーズ」のお茶わんが大量にあった。そこから導き出されるのは、「相手はかなりのコレクター」だということ。
その一つが持ち去られていたが、それは三百個限定で、店頭による先着販売の品物だ。
あれを買った多くは男性だろうから、若い女性は珍しいはず。
事件解決の光明が見えた気がした。
ただし、このことはまだ、秘密にしておいた方が良さそうだ。
海箱ユユは疑っていた。
アコンプリスの手口、こちらの事情を、ある程度知っていなければ、実行できるものではない。
つまり、いるのだ。『海箱座』の中に、内通者が。




