Σ(゜д゜lll) 早朝から隕石
少し時間をさかのぼる。
夏休みまで、あと七日。
その日の早朝、この町の高校で大事件が発生した。
なんと、隕石が墜落してきたのだ。
朝っぱらからの、ものすごい轟音に、大勢の人間が叩き起こされた。
寝ぼけた頭で「何が起きたんだ?」と慌てていると、数分と経たずに、轟音に関する情報が、電話やメールで伝わってきた。
どうやら、高校に隕石が墜落したらしい。
情報の中には、UFOが不時着しただの、学校の校舎がロボットに変形しただの、現実離れしたガセネタもかなり混じっていたため、自分の目で確認しようと、人々は野次馬となって、学校へと押し寄せた。
すでに校門の前には、複数のパトカーが到着していた。校門は固く閉ざされていて、目をぎらつかせた二人の警官が、しっかり見張りをしている。
中を見たい野次馬たちは、最初こそ警官に隕石のことを質問していたが、返ってくるのはぼんやりした答えばかりなので、次第にいらだってきた。
ついに一人が突破しようと試みる。警官たちの隙をついて、校門をよじ登ろうとした。
警官は素早く反応したが、止めることができたのは、その一人だけだった。
追随する者たちが次々と現れて、パトカーを足場にすると、門や塀を軽々と越えていく。もともと押し止められる人数差ではなかった。
校内に入り込んだ野次馬たちは、ある場所に向かって爆走していた。隕石がどこに落ちたのかは、墜落跡から立ち昇っているであろう煙が、こっちだよと教えてくれている。たぶんプールの辺りだ。
そんな彼らの予想は正しく、プール周辺で現場封鎖を進めていた警官たちは、迫り来る足音の数と勢いに、激しく動揺した。
そして狂気の笑みを浮かべた野次馬たちが、渡り廊下の向こう側に現れる。
その場を仕切っていたベテラン警官はとっさに、
「順番に見学できますので、こちらに並んでください!」
そう叫ぶと、渡り廊下とプールの中間地点に走り込み、開いた右手を高々と掲げた。
ちゃんと見せてくれるのならと、野次馬たちの突進が弱まった。瞬時に停止するまでには至らなかったが、プールになだれ込むのを阻止することには、成功した。
ベテラン警官はおおまかに列を整えると、まずは先頭から十名を、プールの中に案内する。
そこで十人が目撃したのは、サッカーボールくらいの隕石だった。
プールの底を楽々と突き破った隕石は、その先の地中に、大きなクレーターを完成させていた。クレーターの直径は、二十メートルはありそうだ。
問題の隕石は、いわゆる岩の塊という感じではなく、大気圏突破の摩擦熱で、部分的にガラス化していた。黒と赤とが入り混じった特殊な光沢を放っており、魔性の魅力をもった宝石のようにも見える。
そんな非日常な光景を一分ほど堪能したところで、交替の時間になった。
最初の十人がプールから出ると、次の十人が案内されてくる。
新たな十人も、隕石を早く見たくてうずうずしており、いざ隕石を目の当たりにすると、胸の興奮を抑えきれなかった。
その中に、ポニーテールをした女の子がいた。着ているのは、この高校の白いセーラー服だ。
彼女は瞳を輝かせると、
「私、私、今すごいものを目にしてる!」
天からの不思議な贈り物に、完全に見入っていた。