表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
97/214

扉から視線が外せなかった。

目の前に座っていらっしゃる小さな主君は、なぜだかムスッとした顔で、私を見ていらっしゃる。



この4日、毎日私を見舞ってくださるのだけど、あの可愛いい顔が日に日に険しくなって行き…今日など、扉を開けた途端、私の部屋をグルリと見渡し、溜め息をつかれると顔を歪められた。


どうしたらいいのかわからず、取り敢えず笑みを浮かべた私の顔に、小さな主君は眉間に皺を寄せると、私に近づかれ


「…俺を信じて待っていろ…」


「…?」


「俺はお前を離さない。」


「…?!」


「すべてを片付けるまで…待っててくれ。」


「…ぁ!」


「ロザリー、愛してる。」


「あっ!あアァ!!ど、どうしてて!あのその…!」


「せっかく、気を利かして寝たふりしていたのに…その後、な~んの進展もない…ってなんなのよ!」




う、うそ…




「叔父様もロザリーも、日頃なら私の動きなんて、お見通しだと思っていたのに…キスに夢中で…。」


「い、いや、あ、ぁぁ…」


顔が真っ赤になって行くのがわかって、下を向いた私の顔を下から覗き込まれ、畳み掛けるように

「もちろん…叔父様がその後いろいろ忙しくされているは…わかってるけど、好きな女性を、それも怪我をしている恋人を…ほったらかしはないわ。おまけにそんな薄情な態度を許しているロザリーも、ロザリーよ。」


「あ、あ、あ…」


言葉にならない私を一瞥されると

「しょうがないわね。」


へぇ?なにが、なにがしょうがないのだろう?

嫌な予感がしてならない。


「任せてロザリー。」


なにを任せてなの?


ミランダ姫はニッコリ笑われると…扉の向こうで控えていたキャロルさんを呼ばれ

「ウィンスレット侯爵に手紙を書くから、ペンと紙を用意して頂戴。」



お父様に…手紙?

なぜ、お父様に?


キョトンとした私に、ミランダ姫は満面の笑顔で

「叔父様を守る秘密組織…ううん、今度からは叔父様とロザリーの恋を叶える秘密組織と名を変えて、活動するの!」




叔父様とロザリーの恋を叶える秘密組織…。



「いや…あの…私は…」


戸惑う私に、ミランダ姫はハッとした顔で私を見られた。

わかった下さったんだ…顔を曇らせたミランダ姫のお顔に、ホッとしたが…なんだか胸だけがチクッと針が刺さった気がした。


バカだ。まだどこかでルシアン王子を求めている自分がいる。本当に私は…



心の思いがけない動きに俯いた私を、抱きしめるようにミランダ姫は私の首に手を回され


「ごめんなさい。私ったら…ロザリーの気持ちも考えず、勝手に進めて…」


「ミランダ姫…。」


もう、これ以上…。私はルシアン王子のお側にいてはいけない。

男と偽った事で、侯爵家に処分は下るだろう。

爵位を失ったウィンスレット家が、国を裏切ったウィンスレット家が…王家に入るなどできるわけはない。

いや…国の為に、ルシアン王子は…道を選ばれるはずだ。



そうしなければ、国は…




そう思うと胸が痛くて、一瞬顔を歪めた私の耳元で、ミランダ姫の声が…


「隊員のロザリーが入るのは変よね。」


「えっ?」


えっ?そ、そこですか?!そこが問題なんですか?!


唖然とする私に、ミランダ姫の唇が頬に触れ、チュッと小さな音を立ててキスをされた。

「あとは任せて!」


ニッコリとされ、私の両頬に手を添えると、ニンマリと笑みを浮かべ



「私を信じて待ってて」



ギクッとして震えた、私の体だを抱きしめられ

「あっ!これは叔父様のセリフだったわね。」とクスクスを笑われた。



わざとだ。

わざと…仰ったんだ。



青やら、赤やらと顔色が変わる私を、楽しそうに見られると、

「何れは、叔母様と…ロザリーを呼びたいの。だからこれは私の望みでもあるの。」


「ミランダ姫…でも私は…」


私の声は小さな手に遮られた。


「もう…」

ムスッとした顔で、私の口を押さえられた手をゆっくりと外しながら

「前を向く!騎士の気構えはどうしたの!私はロザリーのように剣や、古武術という力はないわ。でも!私には違う力があるの。」


「ミランダ姫?」


ミランダ姫は幼子のあどけない顔に、笑みを浮かべ

「次期、この国を治めるという力が…」


「ミランダ姫!」


「フルに使わせてもらうわ。」


そう言って、微笑まれると…走り出された。


「ミランダ姫!!!」


叫んだ私に、振り返られると

「叔母様。大好きよ。」


そう仰って、扉の向こうに行かれた。




「叔母様…。」




そう口にして、私は呆然と扉から視線が外せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ