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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
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ローラン王とミランダ姫

「姫!ミランダ姫!」


侍女のキャロルの声に、庭の木の上から幼い声が答えた。


「ここよ、キャロル!お爺様はもう侯爵家に入られたの?」


「はい。先程、国王陛下は侯爵家に繋がる通路を使われて、無事侯爵家にお入りになられたと知らせがまいりました。」


と言って、微笑んだキャロルだったが、木の上にいるミランダをあらためて眼にして、溜め息をつく寸前のような顔に変わり


「と言うことは、陛下に付き添っていらした、ウィンスレット侯爵様が折り返し、姫をお迎えに参いられると言うことです…ですから…木の上からお降りくださいませ。」


「わ、わかってるわ。キャロルが困っているのは、わかっているんだけど、でも叔父様が…ロザリーが…心配なんだもの。ここからだと、見えるんじゃないかと思って…」


と、ぶつぶつ言いながら、後ろ向きになって木を降りようとしたが、後ろから突然大きな手が、ミランダの腰を掴み足が浮いた。


「?!」


ミランダは足をバタバタさせながら、「えっ?」「なに?」と叫んでいたが、その大きな手は、その声に動じず、ゆっくりとミランダを木の上へを押し上げ





「少し、木の上で私と話をしてもらえないか?」




ミランダはその声にゴックンと息を呑んだ。

(ローラン王…?!。どうしてここに?ぁ…ぁ…キャロルは?!)



「キャロル!キャロルには手を出さないで!お願い!」


「フッ…さすが姫だ。侍女の心配が一番か?案ずるな、ほんの少し眠ってもらっているだけだ。」


「……信じてよろしいんですね。ローラン王。」


「もちろん。ミランダ姫。」


「では、手を離してくださる?ひとりで登れますから。」


だが、大きな手はミランダを自分の腕の中に囲うと、片手で木の上を登って行こうとした、ミランダは慌てて体を捻り、手を伸ばしローラン王から離れようとして


……ハッとした。


(ある?体が…ある。まるで黒い霧のようにしか見えなかったのに…手に触れる事ができる。どうして?)



ミランダは恐る恐る自分を抱くローラン王を見上げ

「み…見え…る。顔も…見える。」


思わず言った言葉に、ローラン王は声をあげて笑い、その顔が大きな緑色の瞳に映った。


「と言うことは、先程までは人の姿に見えなかったのか…?」


そう言って、また笑うと…

「だが、今は私の姿が見えるのだ。」


ミランダは黙って頷き

「そうか…なら良かった。」


穏やかなその顔に、ミランダは顔を顰めた。

(な、なに?私を殺すつもりではないの?じゃぁ、どうしてここに…ローラン王は現れたの?)


ローラン王はミランダを枝振りの良い所に、座らせると、自分もその横に座り

「少し、話がしたかった。」


「わ、私と?!」


驚いたように、パタパタと音がなるかのような瞬きをするミランダに、ローラン王はクスリと笑うと、ミランダをじっと見つめ


「姫はブラチフォード王がお好きか?」


「お爺様?…えっ?…ええ、大好きですが…」


幼いミランダにも、ローラン王が脈絡のない会話をしているように感じて、首をかしげた、その姿に、ローラン王は眼を逸らし

「そうか…好きか…」


そう言って…周りの景色をぐるっと見渡し

「こうやって木に登るのが好きなのか?」


「えぇ…」


「なぜ?」


「なぜ?って、あ、あの、小鳥になった気がするから…」


「そうか…小鳥か…」



ローラン王がなぜ、自分にそんなことを言うのかは、ミランダには全然わからなかった、だが笑みを見せながらも、どこか寂しそうな顔に思わず、言葉が出ていた。



「小鳥になって…」…と。



ミランダのその声に、ローラン王は視線をまたミランダへとやった。


(怖くないと言えば嘘だけど…でも…)


「小鳥になって遠くを見ていると、悩んでいた事がつまらない事だと思うんです。ムカムカ、イライラしてても、鳥になった気分で下の人達を見たら、すっきりしちゃうんです。」



ローラン王は眼を見開き、ミランダを見ると、なにか呟くように言って、口元を歪めながら、ミランダから視線を外した。そんなローラン王が、ミランダは不思議で堪らなくて、ローラン王の顔を覗き込み


「いったい何を私に聞きたいのですか?私と何を話したいと言われるのですか?」



その問いに、ローラン王はうっすらと笑みを浮かべ、呟くように言った。




「…もう…良い。もうわかった。」


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