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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
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私の努力が…泡、あわ、アワ。

「それは私の娘です。お礼など、とんでもない。どうぞ、お気になさないでくださいませ。」


お父様…何、得意げに言ってるんですか?!

ウィンスレット侯爵の双子は体が弱く、特にここ数年は、姉のロザリーは領地のど田舎で療養している…と話を作ったのは、誰ですか!


そのおかげで、この数年、私は剣に、馬に、古武術にと、鍛えられ…見事に腹筋は、シックスパックを作る羽目になったというのに!


はぁ…いいです、それはもう…シックスがエイトになろうが、もういいです。


でも、バレたらどうするですか~!



あぁ…わかっていない。

全然、危機感がないんだろうなぁ…。

とうとう、娘自慢をやり始めちゃったもの。


あっ!ルシアン王子が…こっちを、み…見ていらっしゃるよ。


あの鋭い赤い瞳が、国民の前では、ほんの少し柔らかくなるのが、超カッコ良くて、そしてあの体に見合った、剣さばきに憧れていました。


でも…


あの赤い瞳で睨まれ、あの剣さばきをこの身で受けたいとは、一度だって思ったことは、なかったのに…。


その可能性は、今回あるかも…。


腕の良い剣士が、剣を振るうと、シュッって、音がするだよね。まるで風音。


だから切られても、わからなくて

「もう、すでにお前は死んでいる。」


と言われて、ようやく自分が切られたことがわかるらしい。


天国はお花畑って、よく言うけど、一瞬で…お花畑に行けるんだ。この世ではない美しいお花畑に…


でも、花粉症だったら、死んでも大変だ。あはは…。


「シリル。何を笑っている…余裕だな。」


凄みのあるお声に、もうお花畑が見えた気がした。

引きつった顔で

「で、殿下、笑って…などおり…ません。」


ルシアン王子は、眉を上げ

「ほぉ~そうか。では、今からゆっ~くりと、そしてわかりやすく、色々とお前から、話を聞きたいなぁ。」


「ゆ、ゆっくりと、わかりやすく、ですか?」


「そう、ゆっくりと、わかりやすくだ。」


「…はい。」


ルシアン王子はにっこり笑うと、

「では、確認しても良いかな。青いドレスを着た青い瞳の女性は、ウィンスレット侯爵令嬢であり、シリル…お前の双子の姉なのだな。」


「その通りでございます。間違いなく、その青い瞳に青いドレスは、私の娘ロザリー・アーネット・ウィンスレットでございます。」


お父様…

聞かれたのは、私なんですけど、なぜ、進んでお答えになるのですか?おまけに、ご丁寧に私のフルネームまで…。

さすが忠臣ウィンスレット侯爵の返答ですが、どうするんですか?私のこれまでの努力が、水の泡になって行くじゃないですか~。



「シリル…」


ルシアン王子も私に忠義を見せろと仰る。

「…はい。その通りです。」


私の返答を聞いて、眼を伏せられたルシアン王子は、低い、それはすっごく低い声で


「ならば、なぜ隠そうとした。ウィンスレット侯爵家の令嬢であれば、なぜその存在自体を隠そうとしたのだ?」


ようやく…お父様も気付かれたようだ。

顔色がだんだん青くなって行かれる。


ど、どうしょう。


「ロ、ロザリーは!」


お、お父様?!


「ロザリーは…ふ、不治の病でございまして、どうせ先がないのなら…密かにお慕いしておりました、殿下に…ご結婚前に、お会いしたいと言う気持ちが、殿下のお部屋に忍びこむと言う、とんでもないことをさせたのでございます。そんな、悲しく、そして恥ずかしい理由でございましたので、とても言う事はできませんでした。」


……そのロザリーって、まさか私…かな?


お父様、何、ホッとしているです?

おまけにそのやり遂げたと言う顔はやめて下さい。

全然、問題は解決しておりません。

寧ろ、複雑にしているじゃないですか?


不治の病や、王子様に夜這いなど…そんな作り話。


誰が信じます?!


えっ?ええっ?なに、その赤い瞳を見開いちゃって、唇を噛む姿は…まさか、ルシアン王子は、信じちゃった?


う、嘘?!


ぁ…あ…違う。そうじゃない。

唇を噛んで、お父様をただ見つめていらっしゃるのは、ルシアン王子が、この話を信じたというより、お父様を信じていらっしゃるから、まさかと思う話でも、信じようとされているんだ。


赤い瞳が私へと視線を移し、じっと見つめる。


私と同じ青い瞳が揺れて、これしかないんだと、苦しそうに揺れている。


私は黙って、頷いた。

それしかないと思ったから頷いた。


ウィンスレット侯爵家の家督を継ぎたいライアン叔父様や、従兄弟のエイブには、よくない噂がある。そんな人に、ウィンスレット侯爵家を家督を譲りたくない。


でも…ルシアン王子の信頼を裏切ってしまった。

信頼するものしか、自分の後ろには、やらないと言っていたルシアン王子、それほど裏切られる事ばかりだったんだろう。そんな人達の中から、お父様はルシアン王子の信頼を得たのに…



私は…私は、大きな罪を犯したと思った。


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