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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
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【閑話】暗躍する者たち③

「……」


「そんなに見られていては…さすがの俺も照れますよ。」


そう言って、口角を上げたエイブに震えながら、ミランダは問いかけた。


「……どうして?」


「えっ?」


「どうして、色がないの?…あの時は色があったのに…どうして?」


ミランダの言葉に、エイブは今度は大きな声をたてて笑いながら

「姫、俺は不死身になったんですよ。」


「ふじみ?」


「えぇ…この教会に住む修道女様のお力によって…。」


「えっ?でもここって…」


「廃墟って言いたいのでしょう。でも、彼女はいるんですよ。」

エイブは、そう言ってビールを煽ると話し始めた。



この教会は1000年程前に作られたもので、歴史的にも価値のある教会ですが…今は誰一人ここに訪れようとはしないほど、荒れ果てています。なぜそうなってしまったのかは、記録として残されているものには、書かれてはいないが、村の言い伝えでは7~800年前、記憶を失い、この教会に流れ着いた男と、その男を助けた修道女との間に芽生えた恋が始まりだったそうです。


男を助けたのは、修道女として…いや人としての優しい気持ちだったのでしょうが、彼女は…いつしかそれ以上の気持ちを男に持った。


それは、いつも遠くを見る男の赤い瞳に…自分だけを映して欲しいと願うようになり…

風で靡く黒髪に指を通したいと思うようになっていった。


だが男でも女でも、神に仕える修道者には、800年後の現世でも恋は許されはしない。ましてや昔の話です、今よりもずっとその枷は重かったのではないでしょうか。許されることなどない恋は、やがて「貞潔」「清貧」「従順」という誓願を立てていたはずの修道女の心を変え、一途に愛を乞う修道女を、男は次第に愛するようになっていったそうです。


でも…そうは言っても、幼い頃から神に仕えていた彼女です、最初の頃は、神以外の男に心を支配される度に、神を裏切ったと恐れおののき、泣いていたそうですが、恋と言う熱に身も心も焼かれしまった彼女は変わった。信仰深い修道女だったが、日々の勤めが疎かになり…いつしか男と一緒になる事だけを考えるようになったそうです。


そんな修道女を神は、お許しにはならなかったのか…男が修道女に助けられて一年経った頃、男の恋人という女がこの村を訪れた。

ふたりはお互いを見た途端、会えなかった一年という月日など無かったように、お互いがお互いを求め合うように、駆け寄り口付けを交わしたそうです。


修道女はどんな気持ちで見ていたのでしょうね。


男の赤い瞳に女は見つめられ、女の金色の髪は、男の大きな手に何度も触れられる、そんな様子を…


いや、事はもっと残酷だった。


男は記憶の中で微笑むその女性を思い出し、代わりに修道女と愛し合った日々を忘れ、男の記憶に残った修道女は…恋人ではなく…命の恩人という存在になっていたんです。


修道女の恋心は、やがてそれは憎しみとなり、

修道女の信仰心は、神を崇拝する気持ちから、 侮蔑へと変わっていった事をどうして責められるのでしょうか?


修道女は狂ったように男を求め、その男の恋人を妬み、そんな運命に導いた神を恨み…そして悪魔と契約をするまでに至ったそうです。それが…村の言い伝えです。


幼い姫に男と女の話をしても、お解かり頂けたかは解かりませんが…修道女は今もその男を求めて、この教会にいるんです。





ミランダは周りを見渡し、エイブのうっとりとした顔を見て、だんだんと青褪めていった。


片手に持ったビールを煽ると、エイブはにんまりと笑い、ミランダをからかうように、また…

「…いるんですよ。そして修道女様は今、俺たちに力を貸してくれている。」


より青くなったミランダを楽しそうにまた笑い、唇を舐めて、またなにか言おうとした時だった、呆れたような声がエイブの上機嫌に水を差した。


「やめとけ、エイブ。」


「お優しいじゃん。怖い話にビビッている姫を助ける騎士気分かよ。アストン。」


左腕に包帯を巻く手を止め

「バカ、そんな話よりお前の笑う顔のほうが不気味だからだ。」


「なんだと!!誰かにやられて帰ってきたくせに…偉そうに…。フン、何様のつもりだ。」


顔色が一瞬変わったアストンだったが、また左腕に包帯を巻きながら

「…何様か…。まぁ俺は人間だが…。お前はなんだ?」


「不死身の男だ。」


「化け物だろう?!肉体はすでに死んでいるのに、そうやって動いている。それは化け物だろう!」


そう言って、アストンはミランダへと視線を動かして


「だから、色がないんだよ…姫。」


「…色がないって…そういうこと?でも…」


「姫の曾祖母である王大后や、祖母の王妃も…色がないからだろう。なんと言われたか想像付くぜ。王家では色を隠す力を持つ者もいる、とかなんとか言われたんだろう。」


顔色を無くしたミランダに、アストンは

「図星かよ。姫も気の毒なこった。陛下が元気が良ければ、その力の秘密をもっと教えてもらっていただろうに、姫に教える前に倒れて…王太子夫妻もあんなんだし、なんにも教えてもらえないままなんだ。」


アストンはそう言って、また黙って包帯を巻き始めた。


「じゃぁ!じゃぁ…おばあさま達は…」


声を詰まらせたミランダに、今度はエイブがアストンの代わりに

「そういうことですよ。俺と同じ不死身の体。そして今頃…その力を使って、陛下を「エイブ!!」」


アストンはエイブの声を止めるように叫び

「それ以上は…秘密だ。」


「なんだよ。いいじゃんかよ。」


「それって…おじいさまを…国王陛下を…おばあさま達が…」


「あはは…なにが、それ以上は秘密だよ。姫はわかってるじゃんか。」


エイブは立ち上がると、アストンに銃をちらつかせながら

「アストン…。お前は最初から気に入らなかったが、もう俺も我慢の限界だ。修道女様のお力をその体に受けないのなら…受けられるようにしてやろうか?」


そう言って、銃口をアストンに向けた。



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