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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
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王子様は決めていた。

ミランダを誘拐?

なぜミランダを殺さずに…攫った?


その時点で違和感を持ったが、だが反面、安心をもたらせた。

ミランダを誘拐した者は、ミランダをすぐには殺さないと。


今は…侯爵だ。侯爵ほどの腕を持つ人物を負傷させる者とは…いったい。

そして、その傷の具合が…心配だ。


横に立つシリルの顔は真っ青だった、そして俺も手に汗をかいていた。



「侯爵の傷はどうなのだ?」


「右肩を貫らぬかれたようですが…」


「後ろから刺されたのというのか?あの侯爵がか?」


「いや…それが…」


「どうした?」


「医者が申しますのには…剣ではなく、銃ではないかと…」


「銃だと?」


「はい。銃創を見たことがないで、はっきりとはいえないが、銃創ではないかと…。」


南の国で作られた銃が、とうとうこの大陸まで来たというのか…

ローラン国始め、南の国では今や、剣よりも銃へと変わってきていると聞いてはいたが、まさかわが国までか…


銃…そのようなものを持ち入り、ミランダを殺すのではなく攫った者は…いったいどういう者だ。




「殿下。ミランダ姫を攫い、侯爵に銃を向けた者からと思われるものが…このような手紙を残して行っております。」




*****

ミランダ姫を預かった。

取引がしたい。今夜23時にリールの森近くの教会で待つ。

ルシアン王子、シリルの両名で来られたし。・・・救国の志士

*****




ルシアン王子、シリルの両名で来られたし


これはどういう意味だ。なぜ俺とシリルを…

俺ひとりで充分だろうに…なぜ?


俺とシリルになにをさせるつもりなのだ。


……まさか?


となりのシリルの口も俺と同じように動いていた。



ミランダを殺さなかったのは、俺とシリルを呼び出すためだ。なぜ俺とシリルに拘る?

俺とシリルふたりを相手に勝てる者はそうそういないだろう。


もしシリルに勝てる相手がいるとすれば…おそらく俺だ。

そして俺に勝てる相手は…シリルしかいないだろう。


そう考えれば、わざわざ俺とシリルを呼び出すのは……やはり考えられるのはひとつ。



俺とシリルを戦わせる。



俺とシリルがもしやりあえば、お互い無傷ではいられない。どちらが勝っても、ミランダを攫った者は、傷ついた俺たちを相手にするのなら勝機はある。そして…銃だ。



シリルも気づいているはずだ。


どうする?

だが…行かない選択はない。行かねばミランダが殺される。


シリルの青褪めた顔は徐々に、色を取り戻していた。そして、バートから俺に視線を移し、軽く頷き、微笑んだ。


シリル…お前は…


シリルは例え敵であっても、人を殺める決心がついていない、おそらくシリルは…死ぬつもりだ。俺に切られて死ぬ覚悟を決めている。



シリル、俺に…お前を切れというのか?

俺に…お前を…


ロザリーが…泣く姿が浮かんだ。

シリルと同じ青い瞳から涙が零れる姿が



ミランダを人質にし、そして銃を持った者がいる以上、俺とシリルは剣を交えねばならないのか?!なにか…方法はないか?


考えろ!

何のために、この頭はあるんだ!


落ち着いて考えろ!

まだ…時間はある。


「バート、侍女たちからもう一度話を聞いて、現場の捜査を念入りに頼む。そして…侯爵の意識が戻ったら、話を聞きたい。連絡してくれ。」


「御意。」


走ってゆくバートの背を見つめていた俺に、シリルが口を開いた。


「…この命は殿下のものです、自由に使ってください。」


やっぱり、そう言うだろうと思っていた。

俺は眼を瞑り、大きく息を吐くと…


「そんなくだらないことでお前を死なせはしない。」


「ですが!殿下!」


「シリル!俺を誰だと思っている。」


「殿下…。」


「俺はこの国の王子、ルシアン・ウィルフレッド・メイフィールドだ。俺を信じて付いて来い。お前も、ミランダも、この国も、すべて俺が守る。」


そう、すべてを守るために…俺は俺自身を捨てる。



それだけは決めていた。


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