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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
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王子様は迷う。《1》

ミランダのように、人の心が色として見える事はできないが、剣の修行をした者なら、おそらく俺と同じように、人の気配を感じる事ができるだろう。


例えば…殺気とかだ。


この…感じる…というこの感覚を、人にどう説明したら良いのかわからないが、まず外れる事はない。


だが、シリルと同じ気配を感じるロザリーを前にして、俺は自分のその第六感のような感覚を初めて疑った。


双子だから同じなのか?

身近に双子がいた事がなかったから、確信が持てない。


だが、もし俺が感じる物が正しかったら…


シリルとロザリーは同一人物……。


確かに18歳の男にしては、あの細すぎる体は、寧ろ女性と言ったほうが納得できる。

だが…あり得ないだろう。


シリルは確かに小柄だが、

あの古武術の腕が、

あの剣の腕が、


果たして……女性にできるだろうか?


ぁ…そうだった。

ロザリーはいやシリルは、あの侯爵の子供だ。

女性だからというのは、理由にはならないかも知れない。


まさか…


一瞬、そう一瞬。


この国は男子しか跡を継げないから…

もしや…いや…まさか…


ウィンスレット侯爵家は武門の誉れ高き名家だ、だが、侯爵はその名家の名前に縋るような男ではない。真面目で、無骨で、どこか憎めない…そんな男が娘を息子にしてまで、侯爵家に縋るだろうか…。


なにより、人の心が色として見えるミランダが侯爵に懐いている。



確かに…エイブが次期ウィンスレット侯爵になるのは、不安ではあるが…そこまでするだろうか?


武門の誉れ高きウィンスレット侯爵家だ、ただ剣が握れるだけでは務まらない。どんな騎士よりも優秀で、そして勇気がないと、周りからは認められないだろう。


そんなことが女性にできるだろうか?


男らに混じって苦しい鍛錬をやるというそんな生活が、女性として耐えられるだろうか?

いや、それだけではない。男としてやってゆくなら、結婚は出来ない。

男として生きて行くのであれば、女性と結婚ということだ。

それでは…血を繋いでは行けない。



女を捨て、男として生きるとしても…ここまでだ、血をつないで行けないのなら、結局、ウィンスレット侯爵家は…エイブの血筋へと変わってゆく。


有り得ないだろう。

そこまでやる意味がない。


ロザリーには、何かあると思っていたが、だが…まさか…



眼の前に佇むロザリーへと視線を移し、彼女の姿を…

その真の姿を見るように、瞬きもせず俺は、彼女を、ロザリーを見ていた。



青い瞳…青いドレス。


『医者を呼ぶなと仰るのなら、殿下の右腕は、私に止血させてください。』

と言って、ドレスの左袖を引きちぎった姿が…


扉の近くで、ゆっくりと、あの青いドレスを細い肩から落としてゆき、扉に手を置き祈っているような姿が…



盾になる覚悟で、俺を守ろうとする青い瞳の少年と重なっていった。




双子なのか…本当に…?


それともお前は…


俺は一歩、ロザリーに近づいた。

後ろに控えるウィンスレット侯爵の心の乱れを感じる。


そして、ロザリーの揺れ動く心がわかる。


双子なのか?

それとも…お前はロザリーでもあり…そしてシリルでもあるのか?

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