心臓が痛い。
ミランダ姫の警護は、ルシアン王子の警護が休みの時に入るようにし、私がルシアン王子の警護に入る時は、お父様にミランダ姫の警護をお願いする事にした。
そして初日の今日は、私がミランダ姫の警護。
お父様がルシアン王子の警護。
でも、侍女と言う形で入った警護は、最初の出だしでつまずいた。
「ロザリー?なぜ、さっきから下を向いているの?」
ミランダ姫の声で、顔を上げたが、やっぱり…下を向いた私に、ミランダ姫は…
「あぁ!あれね!ときめいたの?」
「ち、違います!」
せっかく隠していた真っ赤な顔をあげて、弁明する私をミランダ姫はクスクスと笑うと、先程私に声をかけてきた文官の真似なのだろうか、銀色の髪をかきあげ、来月4歳児の姫は、ウットリとした笑みを浮かべて…
…に…似ている…。
「あぁ…ロザリー嬢。一度ゆっくりとお話ししたいと、思っておりました。宮中にお見えにはならないので、なかなかお会いする機会がなくて、残念に思っていたのですよ。あぁ…ほんとに噂通りお美しい。」
「…ミランダ姫、もう…止めてください。」
「どうして~。ロザリーのドレス姿も、あの文官が言う通り素敵よ。」
「物心付いた頃には、もう男の格好で剣を握っていた私ですから、ドレス姿が素敵だと言われると、めちゃめちゃ恥ずかしいんです。なんか…」
「なんか?」
「じょ…女装しているみたいで…」
「女装?女性なのに…女装だなんて…プッ…」
「いいですよ、笑うのを我慢されなくても…。ドレスがなんだか、しっくりこないと思っているのに、あんな歯が浮くような事を言われると、からかわれているような気がして…」
「ドレス姿も素敵だと思うけど」
「同情はいいです。先日の舞踏会でドレス姿を鏡で、じっくり見て…がっかりしましたから…」
「そんなことないわ。騎士の格好も素敵だけど、ドレス姿も素敵よ。その姿を見たら、叔父様だって、きっと綺麗だと仰るわ。」
「き、き…れいって…あの…」
「でも、叔父様には秘密なんでしょう?」
ミランダ姫の言葉に、一瞬ドキッとした心音は…それ以上は高鳴らず、秘密にしている事への後ろめたさに、小さな声で「…はい。すみません。」と言うと
「叔父様は腕には、自信がある方だから、女性に守られていると知ったら、絶対ロザリーを警護から外すわ。好きな人を守りたいと思うロザリーの気持ちなんか、きっとわからないと思うもの。」
「す、好きな人?!
「好きなんでしょう?叔父様を…」
また…心音が…ドキドキとなって
「そ、そんな恐れ多い。主君に対して、こ…こ、恋心なんて滅相もない。」
ミランダ姫は首を傾げながら
「でも…ふたりとも…色が…」
「い、色?とにかく、殿下に対して、そんな…す、す、好き…好き…」
「ロザリー。面白い~」
「お、お、面白い?!」
「だって、好き、好きと大きな声で叫んでいるだもん!」
「姫…殿下は…ご結婚されるんですよ。」
笑っていた姫の顔から、表情が消え
「まだしてないわ。」
「姫。良からぬ噂でもたてばルシアン殿下に、ご迷惑をお掛けしてしまいます。ましてや殿下のご結婚は…」
「ローラン国からの助けが必要だからでしょう。」
「そこまで、お判りなっておいでなら…そんな事を言ってはいけません。」
「でも、ロザリー。私は…ローラン国王が好きじゃないの。」
「色…がおかしいのですか?」
ミランダ姫は頭を横に振りながら、
「ううん、ローラン国王にはお会いした事はないから…わからない。でも、どうして?叔父様はとてもすごい方だけど、どうしてあんなに叔父様を欲しがるの?叔父様の婚約者だって、良い噂がないのよ。そんな人を叔父様の奥さんにしようとするところが…嫌。叔父様のことを考えていないもん。」
ルシアン王子の妻になる方は、すごい美人らしい、だから、いろいろ噂はあるが…あくまで噂。
だがルシアン王子の伯父にあたるローラン国王が選んだ方だ、噂通りとは思えない。
ミランダ姫はお寂しいのだろう…できるのなら…私がお助けしたい。
「ロザリー。」
「はい。」
「叔父様と結婚して。ロザリーなら叔父様は譲るわ。」
「は、はぁ~!!けっ、けっこん…私と…け、け…」
「うん、結婚して!」
今日は…心臓が痛い。
爆発しそうです…。




