あの…つい…ポロッと言葉が出てしまったんです。
えっ?…
急に黙り込み、私を見ていらっしゃるようで、まったく眼に映っていないかのような感じ…いったいルシアン王子はどうなさったのだろう?
「ルシアン殿下?」
私の声に赤い瞳がゆっくりと瞬きをされると、その視線は私の中のロザリーを探しているかのように、私の顔を見つめて
「…ロザリーがミランダの…」と言われたが、また口を閉ざされた。。
なに?
なにか気づかれたてんだろうか?
心臓が大きな音をたて、鳴り止まない。
どうか、気づかれませんように…。
90日、せめて、あと90日は気づかれませんように。
・
・
・
「…嘘…」
「えっ…?」
「…うそ…自分から叔父様の言ったの?ロザリーを私の警護にって。」
いけない。今はミランダ姫のお部屋だ。
ミランダ姫の呆れたような声にハッとして、意識を今に持ってくると、小さく息を吐き
「…はい。」
と答えると…来月やっと4歳になる姫は、子供らしからぬ、大きな溜め息をつかれた。
「でも、体はひとつよ?どうするの?」
はい…わかっています。でも、つい言っちゃったんです。
ルシアン王子もミランダ姫も守りたくて…
わかっていたんですけど、あの…つい…ポロッと言葉が出てしまったんです。
はぁ~
あの時ルシアン王子が、呆然とされていたのをいいことに、目覚められたミランダ姫と一緒に、逃げて来たわけで…。
もし…ルシアン王子が、ミランダ姫の警護の事で、もっと話を突っ込まれたら…私の性格だ、あ、危なかったかも…。
はぁ~
いろいろ思うことは、あるけれど、出てくるのは…
はぁ~
私のその溜息とは裏腹に、元気な声がミランダ姫の部屋に響いた。
「やっぱり、私の娘だ。頭に浮かんだことが、考える暇もなく口に出る…これはもう間違いなく遺伝だ。」
「…ここに…どうしているんですか?お父様」
気まずそうに、笑ったお父様に、ミランダ姫がにっこり笑うと、紙を私に差し出した。
*****
侯爵家の秘密は知った。おとなしく私の言うことを聞かれよ、悪い様にはしない。手を結び秘密を共有しようではないか。ミランダ
******
「脅迫状?」
「違うわ。侯爵とロザリーと私で、叔父様を守る秘密組織を作ろうと、侯爵に出したお誘いのお手紙よ。」
「ど、どこがですか?!いや…一行だってお誘いと感じるところがないですよ!」
「そうかしら?!ロザリーとシリルのことは知っているので、私の秘密も教えるから、一緒に戦いましょう。と書いたつもりよ。」
「…ぜんぜん…そうには受け取れませんが。いったい…どこでこんな文面を?」
「前に、商人をやったときに、キャロルが教えてくれたの。」
キャロルさんは、いったいどんな商人をモデルにして、ミランダ姫に教えられたのやら…やれやれ。それにしても、こんな手紙を貰ってノコノコ出てくるお父様は…そっと視線をお父様を移すと、なぜだかニコニコしていらっしゃる?
「へっ?お父様は、まさかこの文面が…【ロザリーとシリルのことは知っているので、私の秘密も教えるから、一緒に戦いましょう。】と読めたのですか?」
「いや…。だが、姫からのお手紙が嬉しくてな。」
好々爺だ。満面の笑みじゃない。そうだ…お父様は子供は好きだった…。
秘密組織…か、思いつきだけで動く、危なっかしいの3人組の秘密組織…あはは…。
はぁ~
「そう、溜息をつくな。」
「もう~お父様!その第三者のような言い方はなんですか~!大体、このような事になったのは、18年前に、お父様が頭に浮かんだ事を、考えもなしに口にしたことが、発端なんですよ!」
「ロザリー…。侯爵をいじめないであげて」
「はぁ。でも…」
ムッとした顔で、お父様を見れば、
「すまないと思っている…でも、エイブが継ぐんだぞ。それだけは嫌だ!そんな事になれば、我が侯爵家は、いや…この国はおしまいだ!」
確かに…エイブやライアン叔父様は、間違いなく王大后様と王妃様に繋がっている。
あぁ…そちらも調べておく必要があるかも。
そう言えば…ルシアン王子が…
王大后様と王妃様の色が見えないと…仰っていた。
見えない。
それは、どういうことなんだろう。
誰かに操られているのか…あるいは…人であらざる者に…と殿下はそう仰られたが、それはどういうことなんだろう。
お父様と、笑って話すミランダ姫に目をやると、私の視線に気がつかれた姫がにっこり笑い
「侯爵がね。字がとっても上手だと褒めてくれたの。」
「いや、本当にミランダ姫は上達されましたな。」
「じゃ、今度の組織の話し合いもお手紙で知らせるわ。」
「おおぉ…。それは楽しみです。」
暢気な姫とお父様の会話を聞いて、口元は笑みを作ったが、ふと…、きっとこんな風に、のんびりとした時間は、もうないかもしれないと…思った。
ルシアン王子を…ミランダ姫を守るためには…
王大后様と王妃様に近づく必要がある。
エイブやライアン叔父がどう絡んでいるのかも調べないと。
そして…カルヴィン・アストン…。この男が殿下の警護に入り込んだのだ。それは万全の体ではない、ルシアン王子を狙う可能性もある。そんなことにならないように、お父様があの男と組むのだが…
笑みを作った口元に力が入った。
カルヴィン・アストン、あの男…は強い。
お父様…あの男は人を殺める事に躊躇しない男です。
ミランダ姫と笑うお父様を見つめながら、私は
「どうか、お気をつけてください。」と口にしていた。




