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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
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本物のた・ら・し?!

ルシアン王子の顔が、風に煽られた黒髪で見えなくなっても、私の視線はそのままだった。


ぼんやりとルシアン王子を見つめる私の耳に

「ロザリー!」



ゲェ~!マズい!こんなところで叫ばないで!

「ミ・ミ・ミランダ姫!!それは秘密で!」


「うん、ロザリー、秘密ね!」


はぁ~だから秘密だってば…

「姫、私は弟のシリルです!さっきも言ったじゃないですか~!」


私の泣きそうな顔を見て、よりハイテンションになったミランダ姫は、私の腰の辺りに抱きつき、キャッキャッと声を立てて笑い

「でも、叔父様はいいんでしょう?」


「いや…その辺もちょっと…」


「あぁ!そうか!剣で叔父様を守りたいけど、女だから騎士にはなれない……ロザリーは健気なのね。任せて!!」


そう言って、ミランダ姫は難しい顔で宙を睨み、ぶつぶつとなにか言っていらっしゃるが…わかってくださってるんだろうか…不安だ。


やっぱりもう一度、言っておこう。

「あの…誰にも秘密でお願いします。」


「秘密!了解!」


ふ、不安だ!やっぱり不安だ。


「ミ、ミランダ姫!」と、私が叫んだと同時に、後ろから女性の声が…




「「シリル様!!」」


…ミランダ様付きの侍女の方達だ。

そうだよ。逃げるように出て来たから、ミランダ姫と私を追いかけて来られたんだ。

大丈夫かなぁ、ミランダ姫…。また大きな声で名前を呼ばれないだろうか。


とにかく取りあえず、にっこり…にっこり。

「すみません。お二人が一緒じゃないと、姫は外出できなかったんですね。」


「い、いえ…。シリル様は、ウィンスレット侯爵様のご嫡男ですから、心配などしておりませんでしたわ。ただ…急いでいらしたから、なにかお手伝いできたらと思って…」


「スザンヌは、シリル様が好きだもんね。」


「キャロルだって…そうじゃない。」


「……えっ?」



あはは…もう、笑うしかない。

初のナンパも…。初の告白も…。女性からだったとは…。


「…シリル。」


「…姫?」


ミランダ姫がムスッとして、私に両手を伸ばし、抱っこをせがんでいる?


「どうされたんですか、姫?」


「叔父様のところに…連れて行って」


おやおや…。なんだか3歳児らしくなっちゃって。

「御意。」


この少しピンクな雰囲気から抜け出したいし…良いチャンス!

私はミランダ姫を抱き上げ、

「申し訳ありません。姫をお待たせするわけには、まいりませんので、失礼します。」


「「あぁ…ですよね。すみません…。」」


私はにっこりと笑みを浮かべ、侍女達に頭を下げ歩き出した。




「ロザリーって…」


「なんですか?」


「…たらしなんだ。」


「た・ら・し?」


「女たらし。」


「はぁ~。まだ3歳なのにどこでそんなことを覚えてくるんですか?」


「もうすぐしたら、4歳だもん。」


「3歳であろうが、4歳であろうが、そんなくだらないことは覚えないでください。」


「くだらなくないもん。」


「くだらないです。」


覗き込むように、ミランダ姫を見つめると、ムッとした顔を横に向けられた。子供らしいその仕草が可愛くて、少しむくれた頬に手を当て

「お願いです。素敵なレディなって戴きたいのです。ですから、そんなくだらない話には、耳をかたむけられませんように。どうか私の願いをお聞きくださいませ。」


そう言って、優しく、すごく優しく微笑んだのに…。

「…無自覚女たらし。」


「…おませさん。」


そう言いかえすと、ますます頬を膨らませ拗ねられた。それも可愛くて、膨らんだの頬を指で突くと、姫は突ついた私の指を口で追い、その指をパクンと咥えられた。


「へっ?」


ミランダ姫がにっこり笑って…ガブリ!


「ギャッ~!」


可愛いと思っていたのに…や、やられた。


私の叫び声に満足されたミランダ姫の唇は、私の指をすぐに解放され、そっと私の頬に唇を寄せられた。


「姫…。姫の方が【たらし】です。」


ミランダ姫は、クスクスと笑いながら

「侯爵がね。」


「私の父ですか?」


「うん、本当の【たらし】は…」

と言われ、顔をそして指を向けられた、その先には…



黒髪をかきあげ…


赤い瞳を細め…


口元を綻ばせた方がいた。



「…でしょう?」


眼が離せなかった。

ドキン…と、胸が大きく音を立てて、心臓がまるで、駆け出したかのように、ドキドキと早く打ち出した。


「…本物には…敵いませんね。」


私の呟きに、ミランダ姫は大きな声で笑っていた。

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