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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
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わ、私は…今シリルバージョンです。

急いでお父様の執務室へ戻り、シリルバージョンで戻って来たけれど…


私は今、ミランダ姫の部屋の前に立ったまま、動けないでいる。


それは扉の向こうから聞こえる、ふたりの侍女の言葉に、またもや木霊のように私の頭の中で鳴り響いて、心が揺れ動き、考えがまとまらなかったせいだった。



「ねぇ…ロザリーさんがこの部屋を出るときに、あとで弟シリルが参りますので…と言ってあったじゃない?もしかして…あのウィンスレット侯爵家の?」


「そうよ。あぁ…あの金色の髪に、あの透き通るような青い瞳。おまけに剣の腕は…」


「うんうん、すごいの。見たことある?もうほんとにカッコいいのよ。細身で、身長も男性にしてはそれほどでもないけれど…まだ少年ですものね、五年後…ううん二年後はもっと逞しくなられて…」


扉を叩こうとした手が、力をなくし…そして顔が…微妙に引きつっていく気がした。


「たとえ、五年後であろうが、二年後であろうが…逞しくなりません。いえ…これ以上逞しくにはぜっ~たいなりたくないです。」


「絶対。」と呟き…鼻を啜りながら、扉を叩いた。


ほんと…マジ絶対!!



*****



結構、厳しい顔で、扉を開けたと思うんだけど…


先ほど会ったふたりの侍女は、にこやかに

「わ、わたし…スザンヌです。」


「あ、あ…私は、キャロルです。」


「シリルと申します。姫にお会いできるでしょうか?」


侍女のお二方はじっと私を見て…動かれない。


「あ、あの…スザンヌさん?キャロルさん?」


「「きゃぁ~!」」




はっ?【きゃぁ!】…何を驚かれたんだろう?


ま、まさか…バレた?

慌てて、視線を下にして服を確認した。


だ、大丈夫…服は騎士の服だ。ド、ドレスじゃない。ない。


まさか、ウィッグを外し忘れた?!!

慌てて…手を頭にやって…


だ、大丈夫…ウィッグじゃない。




「きゃぁ~」


「きゃぁ~、可愛いい!」



か…わ…いい?



「ほんと…私たちを見て俯いて、恥ずかしそうに頭を掻く姿は…もうたまらない。」


はぁ?!俯いたんじゃなくて…服を確認しただけなんですが。

恥ずかしそうに頭を掻く姿ってなんだ?


……あっ?!ウィッグを確認したときだ。


あはは…なんなの、この状況は?

えっ…まさか…その眼はハート?!じゃないですよね。


まさか…ないですよね。


「あ、あのシリル様は…休日はなにをされてありますの?」


「えっ…えぇぇーと…?」


ナンパ?まさかナンパ?初のナンパ?!

あはは…なに…この状況は?


きっと騎士の服を着ているから、2割増しでカッコ良く見えるんだ。


そうだ…


そういえば…


お父様は…その制服2割増しを利用して、お母様を射止めたと、得意げに仰っていた。


あぁぁあ!!まったくためにならない記憶だ。

はぁ~、どうやってこの場を逃げればいいんだろう!



……?


えっ?今…




それは小さな声だった。



「あなたが…シリル?」




そう、小さな声は言うと、小さな手をそっと私へと伸ばし、震えながら、ぎゅっと私の服を握ってきた。それは、離れないでと言っているのに思えたが、ミランダ姫はそこに立ち尽くしたまま、不安に震えている。


『いや!知らない人は嫌。みんな…お父様もお母様も…私を嫌っているから…嫌。』


あぁそうだ、そう言っておいでだった。


ルシアン殿下の下に連れて行って欲しいから、嫌われたくない。でも、どうしていいのかわからない…だから、私が離れて行かないように、服をしっかりと握っているんだ。


私は姫の横に跪き、その小さな手にキスを落し、

「ミランダ姫」と呼ぶと…


ミランダ姫は顔を上げ…私の顔をしばらく見つめていたが、満面の笑みを私に見せて、私の腕の中へ飛び込んで来られた。

「ロザリー!!」と叫びながら…。



えっ?…えええええぇっ!!

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