希望…。
お父様より、一足先屋敷に戻った私は、ミランダ姫に、翻弄されているであろう、お父様の様子を想像して、ほんの少しお父様を気の毒になって苦笑していたら…
あれ?…と…
…そう、あれ?…と思った。
「…どうして、ミランダ姫は母親である王太子妃様と、ご一緒ではないのだろう?。」
ベッドに横になり…ゴロゴロと回りながら、いくら王家の姫とはいえ、ミランダ姫は、まだ幼いのにどうして、母親である王太子妃とご一緒ではないのだろうか?
まだ、3歳…ではなかったか…?
今まで、ロザリーとシリルをやって行くだけで、精一杯で…ミランダ姫が、侍女達だけに囲まれた生活を、あまり疑問には、思わなかったが、一度気になってしまうと…いろんなことが気になってきていた。
数年前から、病床に伏していらっしゃる国王陛下。
国王陛下の母上である王太后様。
陛下の奥方の王妃様。
そう言えば、王妃様を選ばれたのは、同じルーレン国のご出身の王太后様だった。
陛下には、王妃様との間に、王太子様。
そして、スミラ様との間に、ルシアン王子。
庶子がいらっしゃたようだが、公にはおふたり。
そして、王太子様には、王太子妃様がいらっしゃる。そのおふたりの間に、お生まれになったのがミランダ姫。
妃様方を外すと …わが国の王家は、この6人の方々になる。
ミランダ姫は…
王太子夫妻の唯一の姫で、在らせられるのに、その待遇は…
姫としてなら、当たり前なのかもしれないが…幼子には寂しい生活だ。ルシアン王子だって、スミラ様が亡くなられた5歳の頃まで、一緒にお暮らしだったのに…ミランダ姫はお生れになってから、ずっとおひとりだ。
ルシアン王子がそんなミランダ姫を気に掛け、そんなルシアン王子に懐かれるのは、当たり前だなぁ。
下が騒がしいけど…
お父様が帰られたか?
あっ…階段を走って登っておられる。
コンコン・・
やっぱり、お父様だ。
クスクスと笑いながら
「無事のご帰還、おめでとうございます。」
と、扉を開けた私に、ほんの少し口元を緩められたが、すぐに厳しい顔で私を見られた。
「お父様?!」
それは…悲しげでもあり、怒りで震えているようにも見え…
戸惑いながら、私はもう一度
「お父様…どうされたのですか?」
私を見つめていた、お父様はまるで、怒りを抑えるかのように、目を瞑られると
「ミランダ姫に…姫がルシアン殿下に渡された酒が、ルシアン殿下のお命を危うくしたと…言った者がおる。」
「そんな…」
「その者はミランダ姫が、なかなか言うことを聞いてくださらないことで、つい出た言葉だったようだか…」
「姫に振り回されていた侍女ですか。でも、腹がたつ事があっても、主である方の姫に、ましてや幼子に…なんてことを…」
「その侍女は、すぐに女官長が姫のお側から外したが…姫が…」
「泣いておられるのですか?!」
「…泣いておられるのなら、慰めの言葉もかけることできるが…まるで人形のように、表情さえ忘れてしまわれたように、ぼんやりとされて…。」
「相当、ショックだったんですね。」
「ロザリー。私の執務室に、ロザリーとシリル用の服を用意しておる。いつでも入って、着替えられるように整えた。
……行ってくれるだろうか?
王太后様と王妃様の動きを探るという、当初の目的とは違うが…、頼めるか?
ミランダ姫は…ルシアン王子が描くこの国の希望なのだ。
ミランダ姫がいらっしゃるから、ルシアン王子は…この国を出ることを決められた要因のひとつなのだ。」
「希望…?」
それは…どういう意味だったのだろうか…。
私の顔を見て、お父様は言われた。
「ミランダ姫なしでは、我が国は滅ぶやもしれん。」




