表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
12/214

王子様も結構…やります。

どれだけ…過保護なんだと俺はクスリと笑った。


どうやら、侯爵は、息子のシリルがまだ戻って来ないことが、余程気になって仕方ないのだろう。

ベットで横になっていた俺は体を起こし、窓ガラスにへばりつくように立つ侯爵に笑っていた。


やはりひとり息子は可愛いいのだろう。

いや…娘の結婚の時も号泣したと聞いたから、子煩悩なのだ侯爵は…


だから……


そう、だから…俺に嘘をついてまで、なにかを隠そうとした。

ロザリーという娘には、なにかある…俺に言えないなにかが…


侯爵やその息子シリルが嘘をついてでも、ロザリーのなにかを隠そうとしたことは気にはなる。


だが…侯爵が泣きそうな顔で言った嘘には…悪意が感じられなかった。

その息子の騎士の誓いには…真摯な気持ちが溢れていた。


だから、信じる。それ以上の詮索は無用だ。


だから…忘れよう。


青い瞳…青いドレス…を


『医者を呼ぶなと仰るのなら、殿下の右腕は、私に止血させてください。』

と言って、ドレスの左袖を引きちぎった姿を。


扉の近くで、ゆっくりと、あの青いドレスを細い肩から落としてゆき、扉に手を置き祈っているような姿を。


……忘れよう。


意識が遠のく前に、もっと彼女を見ていたいと思った気持ちを


……忘れよう。



そんなことを考えていたら、いつの間にか視線が下がっていたのだろう。


ハッとして、顔を上げたとき

窓の外に眼をやって、ニヤリと笑う侯爵に気がついた。


「侯爵、どうしたんだ。あまり人が良い笑みには見えなかったぞ。」


「すみません、殿下。ちょっと…わくわくしておりました。」


「わくわく?」


「はい。うちのシリルが…従兄らに絡まれておりましたのを見て、年甲斐もなくちょっとわくわくして…しまいました。」


俺は、ベットから出ると、窓の前に立つ侯爵の横に並び、中庭で三人に囲まれるシリルに眼をやった。


「ほぉ~、3対1か。もちろん…」


「はい、もちろんでございます。」


「ならば、見せてもらおうか…ウィンスレット侯爵家の嫡男の腕前を…」


「御意。」


そう言って、笑った侯爵に、俺も笑った。



小柄な体を利用したシリルの動きは、早くそして的確で、思わず感嘆の声が出るほど、美しい動きだった。だが、あまりにも一方的な戦いに…隣に立つ侯爵から


「つまらん。」と小さな声が聞こえ、思わず苦笑した。


確かにあれでは…ダメだ。あの三人では…とてもシリルをやれない、それどころかシリルにかすり傷ひとつ、つけることもできないだろう。



「古武術か…」


「はい。」


「攻撃はもちろんだが、戦場で負傷した者を運ぶことも容易になる。だったな…師匠?」


「殿下…師匠は止めてください。」


「侯爵は、剣や古武術を教えてくれた私の師匠であることは、間違いないではないか。」


「いや…師匠と呼ばれるほど、うまくお教えできませんでしたし、無礼な振る舞いばかりで…あの時は…申し訳ありません。」


「確かに、あの頃の侯爵は厳しかったな。」


「私には、男子がおりませんでしたから…おそれながら殿下が、息子のように思え、私のすべての武を伝えたいと、ついつい厳しくなってしまいました。申し訳ありません。」


「だが…そのおかげでそれなりに強くなった。」


俺は侯爵の襟をしっかりと握ると、肘を外側に出すようにして、釣り上げ、侯爵のかかとが浮いた瞬間、俺は、にやりと笑って侯爵を投げた。


侯爵は、仰向けになったまま


「殿下…」

と、情けない声をあげ、その声に俺は大きな声で笑いながら、俺も侯爵の横に寝転んだ。


いろいろとあった…

いや、まだこの国でやらねばならない事がある。


不穏分子の一掃。


俺は横に寝転ぶ、侯爵に顔を向け

「侯爵は、俺の師でもあり、そして…父親のような存在。」


「殿下?」


「だが…その命を俺にくれ。」


「はい。その覚悟は、とうの昔に決めております。」


でも…次に言う言葉は、顔を見ては言えなくて、目を瞑り


「それは…侯爵個人の覚悟か…それとも侯爵家の覚悟か…」


息を飲む侯爵の気配を感じた。

子煩悩の侯爵に俺は、息子シリルの命もくれと言っているのだ。


「…騎士の誓いを立てたシリルはすでに、殿下の剣であり、盾でございます。」


侯爵の落ち着いた声に、俺は…


「ならば…90日で終わらせるために…ウィンスレット侯爵家のすべてを貰い受ける。」


「御意。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ